宇宙の軍事化は望まない。 | 日本のお姉さん

宇宙の軍事化は望まない。

2002年6月のことだった。

ジュネーブ軍縮会議(CD,65ヶ国)で、チャイナは、アメリカにブッシュ

政権が進めるミサイル防衛計画を警戒し、宇宙空間での軍拡防止を

提唱した。宇宙空間での兵器の配備を全面的に禁止する多国間

条約案だった。アメリカは反発し、その提案は暗礁に乗り上げたという。

当時のチャイナの軍縮担当官は、「新条約の締結が困難ならば、
中国は宇宙の安全保障を自ら確保しなければならない。」と語って
いたそうだ。宇宙軍拡防止を訴えながら、チャイナは独自に宇宙関連
技術の開発を着々と進めていた。
(以上読売新聞1月21日日曜日の朝刊国際面5ページより引用)
アメリカの航空専門誌アビエーション・ウイーク・アンド・スペース・
テクノロジー(電子版)によると、
実験は米東部時間の2007年1月11日午後5時28分
(日本時間12日午前7時28分)チャイナの宇宙基地がある四川省
西昌付近の上空、高度約850キロにあった99年に打ち上げられて
老朽化した自国の気象衛星「風雲1号C」FY―1Cを、地上から発射した
衛星破壊弾頭を搭載した中距離弾道ミサイルで破壊した。
(以上1月20日8時0分配信 産経新聞より引用)
ミサイルに搭載された「運動エネルギー迎撃体(KKV)」と呼ばれる装置が、
衝突し、破壊したと見られる。
(以上 1月19日12時41分配信 毎日新聞より引用)

これはチャイナがアメリカの偵察衛星も、台湾、日本の偵察衛星も
破壊する能力を獲得したことを意味する。
CNNテレビによると、チャイナは今回の成功までに、2006年4月と10月、

11月の最低3回にわたって衛星攻撃兵器(ASAT)実験を実施して失敗して

いる。

また、チャイナはこれまでにも、地上に設置した兵器システムを使って
アメリカの偵察衛星に高密度のレーザー光線を照射し、監視活動の
妨害を試みていた。
いずれの衛星妨害活動や実験についてもチャイナ側は確認を避けている。

(以上1月20日8時0分配信 産経新聞より引用)



アメリカ政府は18日、チャイナが宇宙空間上にある人工衛星を地上から
破壊する実験に成功したことを事実上確認した。スノー米大統領報道官は
同日、「事態を懸念している」と述べ、中国政府に対し米側の立場を
伝えたことを明らかにした。
今回の実験について、米国家安全保障会議(NSC)のジョンドロー報道官は、
「中国がこうした兵器を開発、実験したことは、民生用宇宙航空分野での
両国の協力精神に反する」と非難した。オーストラリア、カナダも中国へ
の懸念を伝えた。
(以上1月20日8時0分配信 産経新聞より引用)


米下院のマーキー議員(民主党)は18日、宇宙空間での軍拡競争が
始まりかねないとの懸念を表明し、対衛星兵器の開発・配備を禁止する
国際条約締結を目指すようブッシュ大統領に求めた。
ブッシュ政権は以前よりチャイナの宇宙技術開発の進歩に神経をとがらせ、
民間分野での交流や情報交換の促進を図っている。
2006年秋にはグリフィン米航空宇宙局(NASA)長官が訪中した。
一方で2006年10月には宇宙空間の軍事面での重要性を強調し、
アメリカの行動の自由の確保を目指す新国家宇宙政策を発表している。

それでも、チャイナはこのような実験で、対衛星兵器を実戦配備する
可能性を見せつけた。
塩崎恭久官房長官は19日午前の記者会見で、中国の対衛星兵器
実験について「米政府から報告を受けている。
宇宙の平和利用、安全保障上の観点から懸念を持っている」と述べ、
北京の日本大使館から中国外務省に事実関係と意図の説明を求めた
ことも明らかにした。
(以上 1月19日12時41分配信 毎日新聞より引用)
麻生太郎外相も同日の会見で「事前通報もなく、

いかがなものか」と不快感を表明した。日本政府は、人工衛星にミサイルを
命中させる技術はそれほど高度な技術だとはみていないが、中国が軍事的
な能力の誇示を狙ったものだとして憂慮している。

(以上 1月20日産経新聞より引用)


ロイター通信が23日、米専門家の話として伝えたところでは、破壊された
衛星の破片は高度約400キロから同約3000キロの範囲に分裂し、
雲状(デブリ)に広がって漂っている。
チャイナの実験で破壊された衛星の破片が散らばる高度約850キロには
通信や全地球測位システム(GPS)などに使われる民間・軍用衛星も多数
周回している。米ハーバード大学の天文学者ジョナサン・マクドゥエル氏によると、
破壊された気象衛星の破片は、各国の衛星だけでなく高度約400キロの
軌道上で建設中の国際宇宙ステーションに衝突する可能性があるという。
チャイナの衛星破壊実験をめぐり、アメリカの団体
「憂慮する科学者連盟」は、衛星に当たると、それだけで破壊力のある
1ミリ以上の破片が200万個発生したという試算を発表した。
空気が薄いため200万個の破片は今後10年間以上、漂い続けるだろう
と言われている。
以上(読売新聞1月21日日曜日の朝刊国際面5ページより引用)
中国外務省の劉建超報道官は1月23日になって、定例記者会見で、
中国が人工衛星を弾道ミサイルで破壊する衛星攻撃兵器実験を実施
したことを公式に確認した。
劉報道官は、「中国は一貫して宇宙の平和利用を主張、宇宙空間
の軍事化と軍備競争に反対するとの立場に変化はない」と白々しくも
強調した。さらに「いかなる国にも脅威にならない」と述べ、23日になって
日米両国などに通報したことを説明。
また、現時点で「2度目の実験実施は聞いていない」と語った。」

以上産経新聞(2007/01/23 23:09)より引用
http://www.sankei.co.jp/kokusai/china/070123/chn070123002.htm


アメリカ国務省ケーシー副報道官は「宇宙の軍事化は望まない。」と語った。
アメリカのテレビ局では、「偵察衛星に、全地球測位システム、通信衛星を
使った電話など、アメリカは衛星に頼り切っている。
それが、敵に簡単に破壊されてしまったら、どう戦うのか。」などの議論が
交わされたそうだ。
(以上読売新聞1月21日日曜日の朝刊国際面5ページより引用)
米元軍備管理軍縮局顧問のトーマス・スニッチ氏は、「米国ほか日本など

同盟国の衛星が中国の攻撃を受ければ、戦争行為に等しい」と指摘。

偵察能力を持つ衛星が少ない日本に対しては、「万一バックアップとし

て、可能な限りすべての商業衛星と契約して衛星画像が常に入手でき

状態を保つべきだ」と提言している。(2007年1月20日の産経新聞)

「 日本は今、米国と一緒にミサイル防衛システムを開発している。

宇宙に偵察衛星を十重二十重に並べて、敵からのミサイル攻撃をいち早く

察知し、そのミサイルの軌道を正しく予測する能力が必要とされる

しかし、事前に偵察衛星が打ち落とされるようなことがあれば、ミサイル防衛

システムそのものが成り立たない。

 宇宙利用については、国連で採択された宇宙条約がある。その第4条では、

宇宙空間の平和利用を規定し、軍事的な実験を禁止している。

中国は今回の実験によって手に入れた技術をいつでも軍事転用できるため、

宇宙条約に違反する可能性がある。核を持つ責任ある大国にふさわしい

行為といえない。

 地球からみて静止状態にある気象衛星を撃ち落とす攻撃能力は、ミサイル

技術的にはそれほど先端的なものといえない。今回の実験成功は、宇宙に

おける米国圧倒的優位の軍事バランスを崩すものではない。

しかし、「宇宙を制するものは将来戦を制する」とする中国は、今後も「宇宙

大国」に向けて、次々と新しい実験を行い、米国に挑戦し続けるだろう。」

(2007年1月20日の産経新聞)

チャイナはロシアの宇宙事業の現場に自国の留学生を送り込み、2001年
からは何千人ものロシア人技術者を招いて宇宙開発に取り組んでいる。
その成果が現れているようだ。しかし23日、ドイツばかりかロシアもチャイナの
今回の実験に対して懸念を表明した。
イラク戦争中のアメリカの衛星使用を分析したチャイナの文書によると、
アメリカはイラク戦争でも95~100%、偵察・監視・通信・位置決定を
衛星に頼っていたという。
アメリカにとって衛星は、強さの元であるが、逆にそこが弱点でもある。
日本政府はアメリカの高性能衛星に日本の防衛を依存していると言っても
よい。
アメリカの核で自国を守ってもらっている日本は、今回のチャイナの行動を
深刻な事件だととらえて、チャイナに強く抗議するべきだ。