未来都市 J の少子化対策
グローバル化が進み、大企業が世界で資源を求めて工場を作る時代になり、
世界は国という規制のワクを超えて、同じ利益や民族という同族意識を持つ者
たちが集まって都市を形作る時代になった。また、同じ利益を持つ同人種の
都市たちは、お互いに連合する集団となっていった。
島国Jは、もともと単一の民族であり、島であると言う条件から、昔の国の形の
まま、J都市と呼ばれるようになった。地球温暖化が進み、作物分布図は一昔
前の時代とは様相が変わっていた。それぞれの街は子供の数でランク付けが
されており、それぞれのランクによって食料が配布されるようになった。
もはや食料は金によってではなく、物々交換の時代になっていた。J都市では
米と養殖の魚が主な食料であった。それらを大豆、小麦、肉など他の都市と
物々交換をするシステムで世界は繋がっていた。
J都市では、近頃老人が多く、若者が子供を産まない傾向にある。昔、無知で
無責任な企業と政府により、食品添加物がふんだんに入った食品や、自然界
に垂れ流された有害物質によってJ都市の大人たちは汚染されており、優秀
な子孫を作り出す能力を失っていた。早急に有害物質に犯されていない新しい
遺伝子を受け入れる必要があった。
J都市は、昔から天然のスパイスや農薬を使わない作物を使用し、化学物質を
多用しない国から多くの研修生を受け付けて、J都市の若者と触れ合わせて
新しい遺伝子を取り込ませるこころみを続けている。
また、若者がなかなか結婚せずに会社と家の往復を繰り返す内に結婚の
時期をのがす傾向を改善すべく、政府が密かに結婚適齢期の若者を指導す
るようになった。全ての若者はデータ化された。
政府は、同じ趣味、同じ宗教、同じ希望を持つ人間を同時に集める研修会を
開き、若者を集団でお見合いさせる作戦に出た。
研修は、世界遺産を回るコース、ボランティアコース、南の島を回るコース、
世界の都市を回るコースなどが用意され、若者は自由に参加コースを選ぶ
ことができた。また、自由にコースを設定することもできた。
若者は必ず政府の研修に参加するという義務が課せられた。政府の研修に
参加しないものは、2年の兵役が義務付けられ、そのまま兵士になった。
子供を作る能力が高い優秀な男女は政府プロジェクトに参加させて、接触の
機会を多くとらせ、ニートや借金まみれの若者、アル中、ギャンブル中、病弱
な若者には特別のケアチームに救済処置を取らせて、正常で健康な生活が
できるように導かせた。結婚して子育てできる状態になるまで個別にカウンセ
リングがついた。25歳で結婚しない若者は、兵士、農民、老人介護士、ベビー
シッターとなって37歳までボランティアとして政府に貢献することが決定して
いた。その間に結婚した場合は、正当な給料が支払われ、大切に扱われた。
企業は優秀な若者を兵士にとられるのがイヤで若者に結婚を奨励し、独自で
お見合いパーティーを設定しだしたので、多くの者が結婚をするようになった。
インターネットのお見合いシステムも効果をあげ、世界中からJ都市に来たい
と願う相手を選ぶこともできた。ただし、相手は政府が認証する都市の人間に
限られた。それでも、スパイではなければ、どこの都市の人間でも結婚して
J都市に住む事は可能だった。
子供を持つ家庭には政府から無料幼稚園券、無料ベビーシッター券などが
配布された。両親が仕事中は地域全体が見守る地域幼稚園、企業幼稚園、
個人の幼稚園などが世話をする仕組みになっていた。ベビーシッターもいく
らでも使うことができた。子供の学校の教育は政府が全部請け負った。
結婚さえしていれば、仕事は自由に選べたし、子供を育てるために家で専業
主婦や専業主夫になるのも自由であった。
都市J 政府の努力は実り、市民の自由を束縛せずに結婚させて子供を産ま
せることができ、ついに都市J は、世界の一級都市に選ばれた。そして優先的
に食料配給が回ってくるようになった。しかし、離婚率や自殺率も他の都市より
も高いのが、もっかの政府の悩みである。
せっかく子供を増やしても、子供同士のイジメや子供を狙う犯罪が止まらない。
政府の新プロジェクトは、市民に「愛」と「生きがい」を持たせることがテーマと
なっているが、こればっかりは、市民に個別に追求してもらう以外にないという
のが、政府の見解である。
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未来都市 J の変な空想話でした。失礼いたしました。
イジメも犯罪も、愛が無いから起こる出来事だと思います。
でも、愛は教えられるモノではなく、親から子に伝わるモノだと
思うのです。大人がしっかりしていないと、子供が愛のある人に
育たないのかも。添加物だらけの食事をしていると、すぐキレる
子供に育つらしい。手作りの食事で落ち着いたいい子供を
育てるのも大事だし、弱い人をイジメるのは格好悪いことだという
昔ながらの道徳を教えるのも大事かも。
道にゴミを捨ててはいけませんとか、払うべき給食費は払うとか、
そういう事は親が子供に教えないといけない。
しっかり愛された子供は、大人になってもちゃんと他人を愛することが
できるのだと思う。愛の連鎖だね。愛されていなくても、他の大人が
可愛がってくれたら、それなりに他人の愛し方が分かる大人に
なると思うんだよ。他人の子供でも愛してあげてね。