格差社会の出現は必然 | 日本のお姉さん

格差社会の出現は必然

日本は一億総中流社会だったのに、最近は貧富の差がどんどん開く「格差
社会」になっている。

それどころか、貧しい人が多い下流社会になっている。

誰が悪いのでしょうか?


ハイ!小泉さんが悪いのですね。(^▽^)(^▽^)(^▽^)


まあ、そうなのですが、もっと長いスパンでみると小泉さんだけを批判するわ
けにもいきません。

なぜなら「格差社会」は日本だけではないからです。



歴史を振り返ってみましょう。

150年前、資本主義はとても残酷なシステムでした。

6歳の子供を15時間働かせていたのです。

資本家のモットーは、「最小限の投資で最大限の利益を」。

当時の資本主義理論はアダムスミスのいわゆる「古典派」。

「市場が自由であればすべてよし」。



こういうひどい状況を見て、マルクスさんは、「共産主義理論」を構築しました。

資本主義と共産主義にはいろいろ違いがありますが、特に国家の役割がこと
なります。


資本主義(古典派)、政府は経済に介入しないのがいい。

共産主義は、全部国がやる計画経済。


1929年、アメリカ発の世界恐慌が起こります。

資本主義の総本山アメリカでは失業率が30%を超え、一向に改善する兆しが

みえない。

それで、世界の人々は、「あ~マルクスのいっているとおりだ」と考えた。


資本主義教危うし!

そんなとき、資本主義の救世主として現れたのがケインズさん。

ケインズは、「有効需要(消費・投資)が増えれば、生産と所得が増える。それ
なら、国が支出を増やして有効需要を増やせばいいじゃん」と提案。


ケインズ理論を採用したのが、アメリカのルーズベルト大統領。

また、ヒトラーも知ってか知らずかケインズ的政策をとり、ドイツを世界2位の

経済大国にしてしまいます。

第2次大戦後、世界は資本主義教分派ケインズと共産主義教の二つにわか

れました。

共産主義教がその後どうなったかは、皆さんご存知ですね。



ところが、ケインズ教にも問題があった。


クセになるんです。(^▽^)(^▽^)(^▽^)


だって、「国が財政支出を増やして公共事業をすれば、GDPが増える」。

こんな簡単な方法はない。

というわけで、2次大戦後ケインズ教にはまった欧米諸国では、ことごとく財

政赤字が深刻化していきます。

そして、80年代になるとレーガンさん・サッチャーさんがケインズ主義を捨て去
り古典派に回帰したのでした。

古典派は自由放任・競争絶対善ですから、必然的に格差社会になってしまい
ます。

世界を見てください。

アメリカ・イギリスばかりでなく、元共産国ロシアも、中国もメチャクチャな格差
社会。

貧富の差が比較的少ないのは、北欧諸国くらいでしょう。


まとめてみましょう。

1、資本主義古典派 対 共産主義 →世界恐慌で古典派ピンチ

2、資本主義ケインズ 対 共産主義 →共産主義経済はのびず崩壊

3、資本主義ケインズ 対 資本主義古典派 →米英で古典派が勝利。


こう見てみると、古典派は金持ちの味方、ケインズと共産主義は貧乏人
の味方。

そして、格差社会の到来は、世界の国々が共産主義とケインズを捨て去
ったことが原因。

なぜ捨て去ったか?

要するに、共産主義国とケインズ国の経済が行き詰まった。

そして、古典派に勝る魅力的な理論が登場していないからでしょう。





ところで日本。

日本は70年代「世界の工場」になり、80年代は「世界経済の中心」になった。

好調だったので、米英が古典派に回帰しているのに、ケインズをつづけていま
した。

90年代初めにバブルが崩壊した後もなかなか夢から覚めず。

10年間ケインズと古典派の間をウロウロウロウロ。

債務は雪だるま式に増えていった。



日本の借金は1970年から25年間で100倍(!!!)化しています。


小泉さんは首相になったとき、悩んだことでしょう。


「ケインズをつづければ国家破産は不可避だ。古典派にシフトすれば格差社

会が生まれる。どうしよう?」

しかし、国家破産は格差社会より悲惨ですから、格差社会を選択したのです。




小泉さんが、お手本にしたのが、レーガンの政策。

レーガノミクスの中身はいろいろあります。

・大減税
・高金利政策
・金融・通信分野の規制緩和 等々。

しかし、当時の政策をひと言で言い表した言葉がこれ。



「脱工業化政策」。



どういうことでしょうか?

社会は、1、農業社会 2、工業社会 3、情報化社会 と進む。

アメリカは、日本やその他の国々より進歩している。

だから、一足先に工業社会を抜け出して、情報社会に進むのだと。

「脱工業化社会」には二つの大きな意味があります。


1、工業社会から情報化社会に進む。
2、「物づくり」は日本やその他の国にやらせよう。


レーガンの時代、アメリカは金融とソフトに特化し、物づくりはやめました。

というか、製造業をつづけたい米国企業は、安い労働力を求めて全世界に散
らばっていった。

この現象を一般的に、「製造業の空洞化」が起こったといいます。

結果はどうか?

アメリカはご存知のとおり、世界一の貿易赤字国・財政赤字国・対外債務国。

(日本の国家債務はGDP比で先進国中最悪だが、90%以上が国内債務)


▼日本でレーガノミクスは亡国


小泉さんはレーガノミクスをマネしました。

ところが、日本でレーガノミクスをそのままやると、必ず破局がおとずれます。

アメリカでは空洞化が進み、結果世界一の財政赤字・貿易赤字国になった。

05年の貿易赤字はなんと80兆円。

それでもアメリカはまわっていますね。

なぜでしょうか?

これは皆さんわかりますね。



そう、ドルが基軸通貨・世界通貨・国際通貨だから。



アメリカはいくら借金してもドルを刷るだけでいいのです。


ところで、円は(^▽^)ローカル通貨(^▽^)ですが、アメリカと同じ政策をとって

いいのでしょうか?


もちろんダメですね。


日本の人口はアメリカの半分以下。

例えば、日本の貿易赤字がアメリカの半分の40兆円になったらどうなるで

しょう?

当然、円は大暴落して、ハイパーインフレが日本を襲います。


こんなこと書くと必ず、「日本は世界一の債権国です」とか「日本は貿易黒字

国です」とか文句をいう人が出てきます。


私は今の話をしているのではありません。


ちなみにアメリカは、80年代のはじめ世界一の債権国だった。

ところが、80年代末には世界一の債務国に転落しています。

貿易赤字もレーガンが就任した81年はたったの280億ドル。

それが87年には1500億ドルで5倍増加。

さらに05年は7257億ドル、81年比で26倍増(!!!)。


今「世界一の債権国だ!」とか「貿易黒字国だ!」と威張っていても、10年で状
況は、全然変わりえるのです。

例えば1990年代半ば、日本の専門家は口をそろえて中国をバカにしていまし

た。
それが今ではGDP世界4位、

軍事費世界2位。




日本がレーガノミクスをやると、ダメな理由がおわかりいただけたでしょう。


▼空洞化を防げ!


「日本は大丈夫だ!」という人がいます。

こういう人たちは「日本企業」と「日本国」のどっちの話をしているのか、明確に

する必要があるでしょう。


企業はいいのです。

人件費20分の1の中国にいって安く生産し、それを日本に逆輸入すれば大儲

け。
ところが、日本国内ではA社の工場が中国に移動したことで


1、失業者増 2、それによる税収減 3、失業手当による支出増 4、消費減


等々、ネガティブな反応がどんどん起こってきます。


結論をいえば、「日本政府は決して空洞化を許してはならない」となります。

とはいえ、20分の1の人件費は捨てがたいですね。

どうすればいいのでしょうか?

いくつか方法があると思います。


1、「中国はバブル崩壊が近い」という情報を大々的に流す。

まあ、あながちウソじゃないし。。。


2、「中国残酷物語」という小冊子をつくり、日本の全企業に配布する。

具体的には、中国進出に失敗した企業の体験談・うらみ節を集める。

これは、親米反中の産経新聞さんなんかに頼めば嬉々として作成してくれ
ることでしょう。


3、「死の大地~環境汚染超大国中国の実態!」という10回特集の番組を
作る。DVD化して、企業に配る。

中国の環境汚染は深刻です。

環境汚染に苦しむ中国人・中国在住日本人を取材して番組を作る。

そして、「A社さん今度、中国に出るそうですが、命と金とどっちが大事?」とた
ずねる。



まあ、これらは全部「情報戦」でせこいやり方ではあります。

もっと根本的に空洞化を阻止する方法は、



「愛」(^▽^)(^▽^)(^▽^)





日本の法人税は現在、法人税・法人住民税・事業税を合わせて40.69%。

これを香港以下の15%まで下げる。

これでかなりの企業がとどまるし、戻ってくる企業も出てくるでしょう。

それどころか、外国企業が洪水のようにやってきます。

税収は一時落ち込むでしょうが、結局は以下のようなプロセスで増加に転じる
ことでしょう。

1、大減税 → 2、企業に金があまるので投資増 3、反対側の生産増→
4、企業利益増→ 5、消費増→ 6、生産増→ 7、所得増→ 8、消費増
以下同じプロセスの繰り返し。


「法人税の引き下げ」については、日本でも議論されていますね。

ところが、「減税分を個人に負担させよう!」という腹黒い陰謀があり、評判が
悪い。


ちょっと待ってください。

所得税や消費税を上げれば、消費が落ち込み→生産減→所得減→消費減
→生産減→所得減→消費減というデフレスパイラルになってしまいます。

レーガノミクスの良い教訓は、「減税すると経済が活性化されて、税収があが
る」というもの。

81年と86年の減税の結果、レーガンの任期中税収は76%増加しています。

(ただし、大軍拡で支出が80%増え、財政赤字問題は深刻化した。)


ですから、法人税も所得税も減税すればいいのです。

ただし、いきなり大減税すると、税収が一時激減しますから、「将来ここまでさ
げますよ」と提示し、段階的に下げていけばよいでしょう。

(目的は空洞化阻止なわけですから。)



さて、質問への回答。

日本はこれからどうなるのでしょうか?

道は二つあります。


1、「円がローカル通貨」なのを自覚せずレーガノミクスをサル真似した場合。

→空洞化が進み、10年後には財政赤字・貿易赤字で円は大暴落・ハイパーイ
ンフレが日本を襲う。


2、あらゆる手段を講じて「空洞化」を防ぎ、世界中から企業・お金が集まる政
策をとった場合。

→格差社会は変わらないが、底上げされ下流社会が中流社会になる。


(おわり)

PS
日本については、書きたいことが山ほどあり、ここでは論じつくせません。

読者さんもいろいろと文句があると思いますが、近々日本の未来に関する考
えを発表する場を持つ予定ですので、しばらくお待ちください。

●『ボロボロになった覇権国家』~次を狙う列強の野望と日本の選択
風雲舎  http://tinyurl.com/dypky  

「アメリカがこれからも戦争を続けるわけ」「ドル対ユーロの勝者は?」
「米中台が戦争の準備をしているこれだけの事実」「日本が火の海になる
のを回避する方法は?」

●あなたが今読んでいるRPEの筆者北野幸伯著 

●詳細・お買い上げは↓
http://tinyurl.com/dypky  

○メールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」
   
発行者 北野 幸伯
メルマガの購読は http://www.mag2.com/m/0000012950.htm