中国に原子炉高度技術を供与するのは日本なのか
中国に原子炉高度技術を供与するのは米国なのか、日本なのか
WH社は東芝が買収したメーカーであり、対中国輸出に問題があるの
では?
中国が原発増設プロジェクトでウエスチングハウス(以下「WH」と省略)から
技術導入を決めた。
これは中国国家発展改革委員会が北京訪問中の米国政府使節団との間で
WH製原力発電所「AP―1000」四基の建設を発表したもので、極めて大き
なニュース。
発展改革委の馬凱主任がボドマン・米エネルギー長官と北京で調印した。
日本のメディアの大半は「米WH、中国進出」というニュアンスで伝えた。
どっこい、WHの親会社は東芝である。
今年九月、米連邦取引委員会(FTC)は東芝のWH買収を承認している。
国家安全保障上、問題はない、というお墨付きをえたのだ。
かつて東芝は1980年代の日米貿易摩擦のおりに攻撃のターゲットとされ
た企業で、議会人がテレビカメラをあつめて、東芝のラジカセをハンマーで
壊したいわくがある。
東芝は米国で外国企業として安全保障上問題があるか、どうかの審査を
堂々とパスし、また対米外国投資委員会(CFIUS)が承認、独占禁止法上
の審査も完了している。
中国の電力不足は深刻で、いまも発電の70%が石炭、2015年までに
原発をあちこちに導入しても全発電の4%に達するか、どうか。
西側の原発メーカーは今後の中国経済の発展性に目を向けて、従来の
ロシア、フランスを越えて大型商談を進めてきた。
東芝は2015年を目処にWHを含める原発事業を二倍近い規模に引き
上げる計画という。
とくに東芝はWHの「加圧水型軽水炉(PWR)の新型(出力百万キロワット
級)を世界的に拡販する計画をもち、総額一千億円の社債を発行し、WH
買収資金(五千億円)のための借入金を借り換える。
▼やっぱり米国の論調は技術の漏洩を懸念している
さて米国の論調を見よう。
「東芝の米国関連企業が中国の原子炉ビジネスに勝利」というのが見出し
だ(ヘラルドトリビューン、12月18日付け一面)。
「東芝」はあるが、WHの名前が見出しにはないのである。
記事を読むと「純粋に米国製GEを中国は巧妙に排除した」とし、しかし
それでも「この契約が成立すれば、契約総額80億ドルの半分は米国の
デザイン、エンジニア、製造過程の仕事になる」と半ば前向きではある。
一方で、資源および安全保障ナショナリズムが強い連邦議会には、
「87年に東芝はココムに違反してソビエトに禁止技術(宮崎注 潜水艦の
スクリュー消音技術)を売り渡した前科がある」と批判の声があり、中国に
対しての技術供与の詳細が透明ではないとして非難が高まっている事実も
伝えている。
<<今月の拙論>>
(1)「台湾の親日派vs反日派」(『サピオ』、12月27日号)
(2)座談会「中国といかにつきあうのか」(西部遭、林健良、
前田雅之氏らと。司会富岡幸一郎氏)(『表現者』、07年月1月号)
(3)「陳水扁総統へのネット会議インタビュー」(『自由』正月号)
(4)「暴発する北朝鮮」(『アクタス』12月号、北国新聞社から発売中!)
(5)「大揺れの台湾政治状況」(『正論』2月号、12月25日発売)
(6)「こういうシナ通がいた(3)」(『月刊日本』、1月号、12月22日発売)
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成18年(2006年) 12月18日(月曜日)
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