ロシア政治経済ジャーナル No.430 | 日本のお姉さん

ロシア政治経済ジャーナル No.430

★ドルのリスクと円のリスク


全世界のRPE読者の皆さまこんにちは!

RPE北野です。

モスクワは12月だというのに雪が降りません。

なんでも平年より10度(!)高く、107年ぶり(!)の暖冬だとか。


仙台の大学生さんからおたよりをいただきました。

「初めまして。仙台に住む大学生のものです。最近見つけまして、バックナンバ
ーを読ませていただいています。読んでみて初めて考えるようなことばかりが
書いてありすごく勉強になります。

質問させていただきたいことがあり、メールさせてもらいました。

日本もアメリカに負けじと赤字大国ですが、ドルより先に円が紙切れとなること
もあるのでしょうか。僕自身は、これまで円の価値がなくなると考えてはいまし
たが、ドルの価値がなくなることは頭にありませんでした。

しかしメルマガを読み円が先かドルが先かと気になっています。こういった見

方ができるといったことを教えてもらえればうれしいです。」


今日はこの辺のところ考えてみましょう。


▼ドルは今のリスク


前号でも書きましたが、アメリカは年間80兆円の貿易赤字(05年)。

それでもサバイバルしているのはドルが基軸通貨だからでした。

ところが、ここ数年間基軸通貨にチャレンジする国がドンドン現れているのです。


1、ユーロの誕生
2、フセイン、ユーロで石油を売り、アメリカに攻撃される
3、イラン、石油取引所の開設を目指す。通貨はユーロ
4、湾岸協力会議(GCC)、2010年の通貨統合を目指す
5、ロシア、06年6月よりルーブルで原油を売り始める
6、ロシア、外貨準備の40%をユーロに


等々。

ドルが基軸通貨でなくなるというのは、要するにアメリカが普通の国になるとい
うことです。

普通の財政赤字・貿易赤字国では、通貨が大暴落してハイパーインフレがおこ
る。

ところが、世界経済は、「世界が作りアメリカが買う」で成り立っていますから、
アメリカの没落は世界恐慌を引き起こす可能性があります。

これが世界のリーダー達の心配ごとなのです。

IMFのラト専務理事は06年3月末以下のように語りました。



「アメリカ人の異常な支出が、貿易・財政赤字を生み出している。

ロシア・サウジアラビア・日本・中国は貿易黒字だが、アメリカだけは膨大な
赤字国である。

この不均衡は、遅かれ早かれ調整されるが、それが急激に起これば


世界経済は危機に直面する。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


不均衡の責任はアメリカにある。

アメリカは、徐々に支出を減らし節約をするべきだ。

不均衡を調整するために、アメリカ経済の成長を鈍化させるべきである。」


最近、グリーンスパンも以下のような発言をしています。

12月11日のロイター。



「ドル安が数年続く見通し=グリーンスパン前FRB議長

[テルアビブ 11日 ロイター] グリーンスパン前連邦準備理事会(FRB)
議長は11日、ドルは今後数年間、弱含む見通しと述べた。

前議長は米国からのビデオ中継された当地での会議で、「ドルの下落傾向
は、米国の国際収支が変化するまで続くと見通している」と述べた。
  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
その上で「石油輸出国機構(OPEC)加盟国が、外貨準備をドルからユーロ
や円に移し始めていることが一部で示されている。すべてをひとつの通貨で
保有するのは無分別だ」とし、ある時点でドルは下落に向かうだろうと指摘。
                         ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「この状態は、今後数年続くだろう」と述べた。

前議長は、市場はかなり洗練されているので、短期的なドルの方向性を予
測するのは非常に困難だと語った。」



というわけで、ドルは今のリスク。

ブッシュは、ユーロで石油を売るイラクを攻撃し、強制的にドルも戻させまし
た。

しかし、核大国のロシアや中国の反逆を止めることはなかなか難しい。

そんなわけで、ここ数年のリスクはドル。

そして、グリーンスパンさんもいうように、長期的な下げは間違いなくても、短
期な予測は非常に難しいのです。


▼円は5年後のリスク


日本政府の借金は1000兆円だそうです。

日本のGDPを約500兆円とすると、対GDPで200%。

これは当然、先進国中最悪。

ただアメリカと違うのは、90%以上が国内債務ということ。

構図は、日本国民が銀行に金を預ける → 銀行は国債を買う

問題は貸す側の日本国民にどのくらい金があるのかという話し。


これは1400兆円。


つまり、日本政府は後マックスで400兆円国民から借金できるということになり
ます。

ちなみに日本の財政状況を一番知っている人は誰でしょうか?

そう、財務省の人ですね。

でも、現役の人は、本音を語れないでしょう。

しかし、元財務官の「ミスター円」榊原英資さんなら、日本の財政状況を完璧
に把握していることでしょう。

榊原さんは日本の財政についてなんといっているか?



「問題は「日本経済は政府の財政赤字を今後も支えていけるか」ではなくて、
「支えきれなくなるときがいつ来るか」ということなのです。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(経済の世界勢力図 榊原英資)



つまり、「日本の国家破産は不可避である」と元財務官がいっている。

榊原さんの予測だと、日本の破産は2012~13年ごろになるそうです。

私は、ソ連崩壊後のルーブル大暴落とハイパーインフレ、98年金融危機時の
大暴落とインフレを直接体験しています。

これはもうホントに悲惨。

92年は、ロシア人の貯金(の価値)が一年で26分の1になっちゃったわけで
すから。


こういう事態(国家破産)をおこさないよう、日本国民は大騒ぎする必要があ
ります。

大騒ぎすると日本は変わりますからね。

テレビ・新聞・雑誌・メルマガ・ブログ等々をとおして、連日「政府は財政赤字
をなんとかしろ!」と大騒ぎしつづける。

そうすると、政治家さんは、自分の懐を痛めないように、「じゃあ増税を」なん
ていってくるはずです。

その場合、「レーガン時代は減税により、消費が伸び、税収も76%増えた!」
という。

減税しろ!減税しろ!と大騒ぎすればいい。

もう一つ、大騒ぎしたらいいなと思うのは、財政赤字は外部の力で解決したら
いいということ。

「人は慣れた生活水準をなかなか下げられない」といいますね。

政府も自分ではどうにもできないのです。

乾いたタオルを絞るトヨタの奥田さんにお願いして、国家財政をカイゼンしてい
ただく。

あるいは、ゴーンさんに支出を半分にしていただく。

これで、日本財政は3年で黒字化するでしょう。(冗談ではありません。)

とにかく、日本の財政は深刻です。

「でもプラス発想で。。。」なんていっても、どうしようもありません。

しかし、アメリカも90年代に危機的状況を克服していますから、国民が大騒ぎ
すれば、なんとかなるかもしれません。

ちょっと熱くなってしまいましたが、とにかく



・ドルは今のリスク
・円は5年後のリスク



と覚えておきましょう。

なんとかならない場合もありますね。

なんといってもミスター円さんが、もうダメだといっている。

ドルが暴落しても円が暴落しても救われる方法は、ユーロを持っておくことで
す。

ちなみに、何度も国に裏切られたロシア人は非常に為替の動向に敏感。

例えば、11月末から12月はじめにドルが下がったとき、モスクワ市民は大量
のドル売りルーブル買いをしました。

それで、両替所や銀行からルーブルがなくなってしまった。

冗談みたいな話ですが、今モスクワでは、一番信頼できる通貨は


1、ユーロ
2、ルーブル
3、ドル


ということになっています。

「え~~~~~~ルーブル???」と思うでしょう。

しかし、ロシアは外貨準備で世界3位、石油・ガスで貿易黒字大国。

対外債務もほとんど残っていませんし、ここ7年間財政黒字の国。

財政で見れば、日米とは正反対で極めて健全なのです。


▼クラッシュを回避する道


少し、世界経済がクラッシュを回避する道について考えます。

今の世界経済の構造は、「世界がつくりアメリカが買う」でした。

そして、アメリカが急速に没落すると世界恐慌になる。

これを回避する方法はあるのでしょうか?

あります。

アメリカの経常収支が均衡するまで、10年くらいかけてドルをゆっくり下げてい
く。

その期間、世界経済を支える大消費地を育てる。

そう、13億人の中国。

既に、中国には2億人の中流・上流階級が存在します。

つまり、「世界が作りアメリカが買う」を「世界が作り中国が買う」に転換していく。







これは当然アメリカの自己否定。

なんといっても覇権を自発的に中国に譲るのですから。

世界史上の大政奉還ですね。

しかし、もちろん幕末のような宣言はでません。

シレ~と大衆にわからないようにやるのではないでしょうか。


米次期大統領の最有力候補は、民主党のヒラリーさん。

ヒラリーが大統領になれば、夫ビル・クリントンの成功を真似するでしょう。

ドル体制維持には、「アメの方法」と「ムチの方法」があります。

「アメの方法」とは、アメリカ市場を魅力的にし、世界から資金を集める。

つまり、「アメリカの株を買えば儲かりますよ。国債も儲かりますよ。不動産も
儲かりますよ」とニンジンをぶら下げ、自発的にドル買いをさせるのです。

クリントンはこの方法で、アメリカを空前の好況に導きました。

しかし、ブッシュが大統領になったとき、ITバブルは終わっていた。

それで、「ムチの方法」に転換せざるを得なかったのです。

「ムチの方法」とはつまり、ドル体制に反逆する国を「直接攻撃する」という意
味。

ヒラリーは偉大な夫にならって「アメの方法」に回帰するでしょう。

そして、世界はクリントン時代のように平和になります。

当時、北朝鮮も中東も、今とは比べ物にならないほど静かでした。

しかし、クリントン時代と現在は状況が違います。

中国とロシアは、アメリカが戦争をしなくても、遠慮なくドル体制攻撃に動くで
しょう。

つまり、ロシアはルーブルやユーロで石油を売る。

中国は、外貨準備をどんどん多角化させていく。

この場合、イニシアチブは中ロにありますから、世界経済と自国経済に大打
撃を与えないよううまくやるはずです。

アメリカは、ゆっくりと没落していきます。

アメリカには二つの道があります。


1、中東を支配し、中国を民主化しドル圏にとどめ、覇権国家にとどまる。

ブッシュが9,11後「今後20年戦争がつづく」といったのは、こういう長期ビジ
ョンがあったからでした。

しかし、多極主義陣営の工作により、ブッシュはピンチに陥っています。


2、世界恐慌を回避するために、自己否定し普通の国になる。

これが世界にとっての幸せ。

しかし、アメリカが没落すると中国が増長しますからね。

日本はこの辺のことも考える時期なのです。

(おわり)
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★編集後記


(前号まで)

自分探しの旅を続ける(ウソ)北野は、イスラム・ユダヤ・キリスト教の重
要地シナイ山に登りました。

この山の山頂で、ユダヤ教の開祖モーセさんは、神様から十戒をもらっ
たのだそうです。




シナイ山を深夜に4時間かけて登ったのですが、本当にしんどい。

最初にこんなしんどいことがわかっていれば、登らなかったかもしれま
せん。

テキトーでイイカゲンですから。


しかし、ドイツ人やギリシャ人の老夫婦もせっせと登っていました。

なんでも、敬虔なキリスト教徒なのだそうです。
(モーセはユダヤ教の開祖だが、キリスト教徒も預言者と認めている)



それでもなんとか山頂付近に到達しました。

山頂の少し下に、小屋のサテンみたいな場所があって、茶とコーヒーが
飲めます。

べトウィンが運営しているのですが。

3人べトウィンがいたのですが、日の出前に、一人が手と顔を洗いだしま
した。

顔がなんとなく、○ン・ラデ○ンに似ていたのですが。

見間違いですよね~~~~。(^▽^)


サテンの中ですよ。

一室しかなくて、広さは10畳くらいでしょう。

それで、3方の壁に日本人・ドイツ人・ギリシャ人・イタリア人・韓国人・
ロシア人等々の登山者が座っている。

彼はそのド真ん中で、お祈りを始めたのでした。

残り二人のべトウィンもイスラム教徒のはずなのに、祈りません。

それどころか、私にむかって、「この国では4人妻を持てるんだよ、うら
やましいだろ」などとでかい声で話しかけてくる。

祈っている彼を見て、「真面目なイスラム教徒は、となりに爆弾が落ちて
も祈りをやめない」という話を思い出しました。



それにラクダと道端で暮らしているはずのべトウィンは携帯電話をもっ
ていて、「メールアドレス教えてよ」などというのでした。

その他、韓国のおばちゃんたちは、べトウィンからお湯をもらってカップ
ラーメンを食べていました。(自分で持ってきた)

つづく(かも)。


モスクワより
RPEジャーナル
北野幸伯
★筆者
北野幸伯(きたの よしのり)
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◎ロシア政治経済ジャーナルのバックナンバー
http://blog.mag2.com/m/log/0000012950/


世界の外から日本を眺めると、日本や世界が良く見えるらしく、この人の

分析力はすごいと思う。たまに、変な宗教っぽい事も書いているが、

日本人だから仕方がない。なぜかシナイ山を登ったようだ。
荒々しい感じの岩山だと聞いているが、クリスチャンでもないのに、なぜ

登る?意外と変人なのかもしれない。無料メルマガはいつもおもしろい。