反日中国からベトナムへ
越風急浮上 時局心話會 代表 山本 善心
かつて著名な作家・文化人たちは中国文明を日本の源流として賛美。司
馬遼太郎の「中国論」に始まり中華文明に対するイメージは多くの日本人に
夢とロマンを投げかけた。さらに中国の歴史や文化が映画や雑誌で綴られ、
写真グラフや旅行で見聞する遺物、美術品、広大な大自然などが強く印象
づけられたものである。
中国の歴史は古代三王朝から秦の統一、漢、三国、晋、隋、唐、宋、元、
明、清と続く。これら時代の過程に多種多様な民族が混在し、統一と分裂
を繰り返してきた。その間、内陸部の多くの少数民族を漢民族にまとめる手
段が中国の覇権主義だった。
しかしその中にあって日本民族だけは中国に従わず、日本流を押し通し
た。まして戦争中は彼等に日本語を教え「チャンコロ」呼ばわりするなど馬
鹿にしたものである。中国人にとって日本の存在は目の上のたんこぶであ
り、許しがたい存在だった。
中国の覇権主義
中華思想とは中国が世界の中心で
あり周辺諸国を属国にする自己中心
的な考え方である。
中国の世界戦略はアジア全体と協調・共存するのではなく、
周辺諸国を支配下に置くことで平和
と安全を確保するというものだ。
14億の人口と56の民族からなる中国にとって、覇権主義は欠かせない国家
理念であり手段であった。
中国は共産党支配による専制政治を敷き、
非民主的な独裁体制と格差社会を
生んでいる。
中国がこの国内外の体制を安定させ持続するには「日米同盟」は脅威な
のだ。つまり現体制を維持するために米国の政治的軍事
的な影響力をアジアから排除することが最大目標である。
しかし中国は現体制が限界に近付いていることを知っている。ソビエト連
邦が崩壊したのも共産主義体制が時代遅れになったからだ。したがって中
国は変わらなければ生き残れない筈だった。
反日で熱冷める
日本企業は「安い商品と低賃金」に目が眩んで中国工場に殺到した。世
界中が中国の「世界の工場」ブームに注目したからである。しかし中国進出
には大きなリスクが伴い、失敗する日本企業が相次いだ。日本企業は資本
や技術、ノウハウをパートナーたる中国に提供してきたが、中国は官民が共
謀し、法改正や乗っ取り策で日
本企業から富の収奪を図った。
中国の“安い人件費”は最大の魅力であり売り物であった。若い中国人労
働者はタコ部屋に押し込められ、劣悪な生活環境の中で厳しい労働条件
に応えてきた。しかし中国企業はいつまでも同じ条件で労働者を放置するこ
とはできなかった。労働条件の改善によって人件費は年々上昇し、“安い人
件費と安い商品”という神話が崩れ去ろうとしている。
一方、中国は反日デモを行い、日本人や日本企業を恫喝することで優位
な外交を展開するかに見えた。しかし江沢民時代の対日強硬姿勢と胡錦濤
時代の「反日デモ」は簡単には忘れ難い中国への不信と疑問を作り出し
日本企業の中国進出への熱情が冷めるきっかけを作った。
対日切り捨て策
中国の経済発展にとって最も大きな力となったのは、日本企業の持つ知
的資産であった。しかし米国との貿易黒字、台湾との経済関係拡大など、
「世界の工場」が順調に滑り出すことで中国は日本を過小評価し、江沢民
時代は経済シンクタンクが日本を切り捨てる政策を提案、敢行した。
江沢民氏は日本憎しを露わに、日本円を切り捨てる政策を取った。1998
年頃、日本円は1ドル80円前後と記憶するが、30億ドル近くの円を一気に
放出。一時は下落
したものの、その後の上昇で中国は数百億円の損失を被ることもあった。
2005年4月、中国で「反日デモ」が行われ、日本企業の排斥、不買運動
を行った。かつての義和団事件と同じ排日運動である。義和団事件とは西
洋の文化を排斥し、鉄道、駅、教会、学校などのインフラ施設を暴力で破壊
する反文明運動であった。当時、この事件で日本の大使館、領事館、店舗、
家屋が立て続けに破壊された。
21世紀という文明と進歩、国際協調の時代は世界が一つのルールで競
い合う社会である。中国のおごりと法制度の乱用は進出企業の生産停止
を招き、中国リスクを嫌う日本企業の撤退が加速した。
有望な投資先
中国投資のリスクを避ける有望な投資先としてベトナム、インドへの関心
が一層の高まりを見せている。両国の経済は市場主義経済体制に向かっ
ている。
政治体制や経済規模は異なるものの、ベトナムは79年、インドは62年に
中国との国境紛争があった。しかしベトナムは91年に中国と国交正常化。
米国ともベトナム戦争を戦ったが95年に対米国交正常化を果たした。今で
はベトナムの貿易相手国のトップは中国であり、最大の輸出相手国は米
国となっている。同じくインドも対米、対中関係が良好で、急拡大していると
ころだ。
一方我が国もベトナム・インドに注目し、「チャイナ・プラス1」の有望な投
資先としてベトナム進出が始まる。ハノイの工業団地でブラザー工業がモ
ノクロ機の生産を2007年から始めた。キヤノンも既に2002年にハノイ郊外
でインクジェットプリンターを作っている。彼等はベトナム進出の先導役とし
て“越風”ブームを加速
させた。
ベトナム急浮上
最近、話題の中心はベトナム、タイへのビジネス展開、ソフト作りの情報
だ。特に今年はアジア太平洋経済協力会議(APEC)がベトナムで開催さ
れ、このベトナムブームに日本企業の熱い視線が注がれている。経団連は
御手洗会長はじめ134人の経済界のトップを派遣。これら大代表団はハノイ
市内で開かれたセミナーや投資交渉に積極的な姿勢と期待を明らかにした。
一方、ブッシュ米大統領は11月17日ベトナムを訪れ、グェン・ミン・チェッ
ト国家主席らと会談。世界貿易機関(WTO)加盟を目指すベトナムは米国
との二国間交渉を成立させ、年間加盟実現に向けて大きく前進した。
ベトナム側はブッシュ大統領に最大の敬意を払い、米国が懸念する人
権・民主化問題などで譲歩を示した。ベトナムは米国市場参入を果たすた
め「恒久的通商関係正常化」法案を米議会で通過させるのが最大の狙いだ
。ベトナムは中国リスク分散の受け皿として有望な投資先であり、世界経済
の成長株として台頭しつつある。
若さ、勤勉、低賃金
特に中国から移管した企業のうち25%がベトナム進出との調査結果(日
本貿易振興機構06.1)が発表されている。ベトナムは年7%以上の経済成
長率と、昨年(05年)は過去最高の新規投資件数を記録した。
ベトナムの労働賃金は中国の半分以下と言われている。一人当たりの平
均国民総所得は中国は1500ドルであるが、ベトナムは600ドル前後でインド
と同じだ。ベトナム投資の利点は「労働賃金が安い」「労働力の質が高い」
「労働問題のトラブルが少ない」「中国と東南アジア諸国の中間にある地の
利」「法制度やインフラ整備など、投資環境の改善」などが挙げられる。
しかし急激な進出ブームに伴い、現地での部品調達や発電量の確保な
ど、問題がないわけでもない。しかし今後日本企業側も大企業・大メーカー
を支える中小部品メーカーの現地入り、すそ野産業の育成に本腰を入れる
構えだ。
越風を狙え
ベトナムに進出している日本企業の知人から現場の声を聞く機会があっ
た。彼等は「ベトナム人はまじめで几帳面なので、与えられた仕事を正確
にこなす」「彼等は素直で繊細な手先の器用さを持つ民族であり、日本人と
似通っている」と言う。製造業は出来上がり商品の善し悪しが決め手となり、
無駄のない出来上がり、ロスのない仕事が製造コストに影響する。
進出する日本企業は13年の歴史を持つ中国工場の経験とノウハウを活用
しながらベトナム工場に全精力をつぎ込む構えだ。「世界の工場」中国の変
調でベトナムは日本製造業の最重要拠点の一つになりつつある。
日中関係者は「政冷経熱」と浮かれていたが、
経済は「人民による人民のため」の
ものであることを忘れてはならない。
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