戦争の評価ーウィキペディアより
戦争の評価(日本)
太平洋戦争の評価については、戦後ずっと歴史家だけでなく知識人、作家、
一般市民などを巻き込んだ議論の的となっており、さまざまである。
加害者としての見方
加害者としての見方は、日本がアジアの諸外国に対して行った侵略や植民地
化などの行為について誤った政策とし、日本が行った太平洋戦争を否定的に
とらえるものである。またこの見地にたつ人々の一部は、従来の戦争理解に
ついて、戦争の被害者の立場(空襲 や原子爆弾 による被害、各地の地上戦
など)を侵略者=加害者としての立場からの反省が足りないと、主張している。
これに関連して、中華人民共和国 、韓国を中心とした日本に対する戦争責任
の追及については、単なる反日教育によるアジテーションというよりも、アジア
諸国に見られた閉鎖的で抑圧的な独裁体制の下にあって権利を主張すること
ができなかった当事国の民衆が権利意識の高まりによって戦争の当事国であ
る日本に国家、権力者の過ちによる戦争での被害の権利回復を求める運動の
一環と主張する当事者も少なくない。近年になって日本の加害責任の追及の
声が大きくなっていることについては、こうした点が背景にあるとの意見が
加害責任を追及する人々を中心に主張されている。
解放者・自衛戦としての見方
解放者としての見方は、アジア諸国が戦後独立を果たせたのは、アメリカや
イギリスなどのアジア諸国を植民地化においていた国々との間で戦争を
行っていたことが要因の一つであるとし、太平洋戦争を肯定的に評価するもの
である。この見地にたてば、日本は加害者であるという戦争理解やアジア諸国
に対する謝罪が頻繁に行われる事が、自虐的過ぎるということになる。
また、自衛戦としての見方は、ABCD包囲網 によって日本が圧迫され、これを
打開するために対英米蘭戦に踏み切ったとするものである。
また、アメリカが日本の大陸利権を否定することで圧力を加え、併せて人種的
偏見による移民規制や、日系アメリカ人に対して人種差別的な政策を行った
ことが、日本人の反米感情を刺激し、対米戦へと踏み切らせたとの考えもある。
両方の面があるとする見方
この戦争には「2つの側面」があるという研究者がいる。
1つ目は中華民国 への侵略及び、侵略を継続するために必要な油田 と防衛
拠点確保のために行った東南アジアの占領。
2つ目は、1つ目の目的遂行のために行われたアメリカ、イギリス、オランダな
どの連合国 との戦争である。
アジアに対しては「侵略」、欧米に対しては「帝国主義国家間の覇権をめぐる
戦争」であり、先の大戦は二つの側面があるのであってこれらを無視すると、
この戦争は見えてこないとしている。
戦争の評価(アジア)
実際に日本が侵略した中国(当時は中華民国 、現在は中華人民共和国 )や、
日本の植民地支配を受けていた朝鮮半島(現韓国 ・北朝鮮 )においては日本
の責任を厳しく問う意見が強い。しかし、かつて植民地・占領地でありながらも
日本から直接被害を受けていない中華人民共和国・南北朝鮮以外のアジア
諸国からは、日本を加害者とする評価だけではなく、それ以外の評価を見るこ
とができる。
加害者とする以外の評価があるのは、アジアには多民族国家が多く各集団に
よって世界観が大きく異なるためであるとも言われている。
そのうち、直接に被害を受けていない地域では日本を評価する声があるとも、
実際のところは少数派であるとも言われている。
これには、当地の人々にしてみれば独立は主として自分たちの力で達成した
ものという意識が反映していることに加えて、すでにそれぞれが以前に比べ
て国民国家化していることも関係する。
一部のアジア諸国で日本の責任を厳しく問う意見が弱い理由については、
純粋に日本の侵攻が独立に貢献したと評価されているケース、建国の
功労者に、日本の後押しで権力の座に就いた者がいるケース、また単純に
反米 的なイデオロギーを持っていたケース、あるいは軍事政権の雛形とし
て評価せざるを得ないケースなど様々であり、その理由を一概にまとめる
ことは難しい。
日本の責任を厳しく問う意見が弱い理由として、日本の支配が強圧的であれ
ども旧宗主国のそれに比べれば相対的にマシなものであったからという説も
ある。
これとは逆に、日本の支配ののちに侵入してきた支配者への反感から日本へ
の責任を問う声が比較的厳しくないという地域もある。
「占領地の多くで日本が近代化を推し進めたことに起因する」という説もある
が、ヨーロッパ諸国の統治下でもかなり近代化されていたとの指摘がある。
また、日本による近代化は“何のため・誰のための近代化だったのか”と
恩恵とは言えなかったとする意見もある。これに対しては日本の自衛も含めた
「アジアの近代化」の為であるとする反論がある。
また、日本に協力する人々がいた一方、宗主国 に協力して日本と敵対する
人々もいた。この場合は、戦争が終わったのち、親日派も宗主国 協力派も
独立のために戦ったケースが多い。
台湾における評価が相対的に高い理由
台湾 では戦時中、アメリカ合衆国軍による空襲 等はあったが、地上戦 は
行われなかった。また、台湾 自体が兵站 基地であったため、食糧など物資
の欠乏もそれほど深刻ではなかった。
強権政治を行った過去のある中国
国民党 に対する批判により、相対的に日本の植民地
政策を評価する人もいる。(「犬(煩いかわりに役には立つ)の代わりに豚
(食べるばかりで役たたず)が来た」と言われている。)
また、それらの大日本帝国 を評価する勢力の一部には太平洋戦争につい
ても解放戦争であったと位置付けている人もいる。
台湾 地域は中華民国 ないし中華人民共和国 の一部であると主張する勢力
の中には、日本の支配を中華民国 への侵略 行為に過ぎないと評し、太平洋
戦争も侵略 であったと評する意見がある。
太平洋戦争時には台湾 でも徴兵制や志願兵制度などによる動員が行われ、
多くの台湾人 が戦地へと赴いた。これについての評価も分かれている。
当時は日本国民であったのだから
当然とする人もいれば、不当な強制
連行であったと批判する人々もいる。
当時は日本国民 であったのに死後靖国神社 に祀られないのは差別である
と批判をする人もいれば、その反対に靖国神社への合祀は宗教的人格権の
侵害であるとして日本政府を提訴している人々もいる。
また、戦後、軍人恩給の支給などについて日本人の軍人軍属と差別的な取り
扱いがなされたことに対する批判もある。
また、中華民国 にも大韓民国 、フィリピン共和国 、オランダ王国 などと同様
従軍慰安婦 になることを強いられた女性達がいるとして、日本国 政府を相手
に損害賠償を求める動きも出ている。なお従軍慰安婦という言葉自体、議論の
対象になっている。
つまり自発的にそれになったもしくは
怪しげな業者にだまされたりしたもの。
一例として当時のいわゆる従軍慰安婦は軍票 の簿価の総計だけのみで換算
して「当時の日本の総理大臣をはるか
に上回る収入を得ていた」とする試算もある。
現在台湾 では、太平洋戦争・その前段階の日本統治時代についてどう評価
するかについては政治的な論点のひとつとなっている。日本の支配に対する
評価についての詳細は、日本統治時代 (台湾) にある戦後の評価の項を
参照。
(なお、台湾 での戦争 観を語る際に、台湾 本省人 が親日 であり日本支配
肯定論、外省人 が反日 抗日 的であるとの見方があるが、実際はそれほど
単純ではない。省籍矛盾 については特定の政治家 が選挙 運動で煽ること
によって起こる面も否定できず、そうした背景を理解しないで台湾 の戦争 観
を論じると誤解が生じるおそれがある。
こと、また台湾人 を語る際には台湾先住民 の問題が欠けている
傾向が見られること、省籍 については近年外省人 、福建 系をはじめとした
本省人 の垣根が解消される傾向にあること、外省人 はエリートと低所得層
との格差が激しく多様であること、低所得層の外省人 と台湾先住民 との
婚姻のケースが多いなど単純ではない。)