ブッシュ敗北のあと、誰が一番得をしたか?by宮崎正弘 | 日本のお姉さん

ブッシュ敗北のあと、誰が一番得をしたか?by宮崎正弘

 イラク攻撃の緒戦の華々しさが暗転し、泥沼に陥って不人気に立ち往生

した米国。
11月初旬の中間選挙によって、ブッシュ率いる共和党は史上まれな惨敗を

喫した。08年大統領選挙は民主党が掌握する可能性が高まり、しかも

ヒラリー・クリントンがNY州選出上院議員再任の勢いを駆って、次期大統領

候補の最右翼に躍進した。

 連邦下院議会は、かのリベラル過激派の旗手ペロシ女史が掌握する

ことになった。
 対照的にネオコンが消え、鷹派のラムズフェルド国防長官は去り、

ブッシュ政権第二期後半は、事実上のレイムダック入り。

 こうなると、08年共和党大統領候補はマケイン上院議員か、ライス国務

長官ということになる。この二人ていどであれば、ヒラリーに勝てる可能性は、

極めて低い。おそらくゼロに近い。

 この結果に、誰が一番嗤っているのか。
金正日。胡錦濤?ヒラリー?
 
私見によれば、一番得をしたのは、イランである。
アーマドネジャッドが露骨に反米を獅子吼して進めてきたイランの核武装は

秒読みに入って、しかし米国は手も足も出せない。
北朝鮮の核武装を容認し、北京の横暴を黙認し、プーチンの帝国主義的

反米政策にも、なにも出来ないでいる米国は、かろうじてレバノンに治安維持

名目の国連軍をNATOと、中国に依存することによって、名目を保った。

 アフガニスタンは、米国の報復の対象ではあっても、復興はNATOにまか

せざるを得ず、鵺的なムシャラフを梃子入れしてのパキスタン支援も、

背後の中国が間接的に裨益し、タリバンはアフガニスタン各地に復活し、

地球的規模ではアルカィーダの脅威が消えていない。

 目をイランに転ずれば、じつはイランの東の脅威が半減した。
 アフガニスタン空爆により、イラン系住民の避難はあったものの、

タリバンはイランの脅威でもあったのだ。

 イランにとって西の脅威はサダム・フセインだった。19080年から八年間

闘われた「イラン・イラク戦争」は、ミサイルを飛ばしあっての消耗戦。

イラク・スンニ派独裁政権を牛耳ったサダムは、イランの敵だった。

 米国のイラク戦争によって、サダムは引きずり下ろされて死刑判決。
従来、イランが密かに背後から支援してきたイラク国内のシーア派が

勃興し、あまつさえ新政権を内部から揺さぶる政治勢力となりえた。
いや、そればかりか、米国の撤退が射程にはいれば、つぎのイラクは

シーア派の天下、くわえて、イランは核武装が秒読みである。

 イスラエルは核攻撃の脅威に晒される事になるが、すでに周辺は

シリア、レバノンがイランの影響下にあるばかりか、パレスチナは

イラン系ハマスが政権を掌握している!

 気が付けば、中東にはペルシア帝国が再現されていた!
   ◎
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    ♪
(読者の声1)非核三原則(核を製造せず、核を持たない、持ち込みを

許さない)議論が盛んになっているが、冷静に世界情勢を考察してみる

必要がある。そこで、特亜三国と関係各国の今日までの経過を辿り

未来を予測してみたい。
1.1945年 米国は、核を持たざる国・日本の広島(プルトニウム型)、

長崎(ウラン濃縮型) へ原爆を投下した。クリントン政権時代、

モンデール駐日大使は「尖閣列島の帰属に 関しての実力行使を伴う

国際紛争の場合には日米安保の発動はこれを対象としな い」と表明した。

進行中の在日米軍再編では、第5空軍、沖縄に駐留する海兵隊も 

グアム島へ移転する。これは明らかに在日米軍の縮小であり、軍事同盟

強化されていないどころか空洞化しつつある。
また、人命尊重の米国は、日本と中国との緊張が 高まったとき、米国は

引き、日本は孤立しかねないのではないだろうか。


2.中国の侵略


 1949年:ウイグル侵略。

1949年:東トルキスタン占領 

1950年:朝鮮戦争参戦。
 1951年:チベット侵略。

1959年:中印戦争。

1969年:中ソ国境で武力衝突
 1979年:ベトナム侵略。

1992年:南沙諸島と西沙諸島を

軍事侵略。

1995年:フィリピン領ミスチーフ環礁

を軍事侵略。

2005年:日本EEZ内のガス資源を盗掘
 (参考)1992年:日本の尖閣列島を

「領海法」で自国領土に組み入れた。


3.中国発の脅威(米国防報告書「中国の軍事力」2005より)
 準中距離弾道ミサイル「東風21」(1770キロ以上):19~21発

 ディーゼル潜水艦:51隻 原子力潜水艦:6隻
 2008年 空母を実戦配備の計画(戦闘機38機を搭載して

 時速 32ノットで航行)
 2010年までに100個の衛星を周回軌道に乗せ、宇宙戦に

  備える。(引用終了)
 毛沢東とポンピドーの会話:「あなたはアメリカとの全面戦争を

 本気で考えているのか」。 「場合によってはやるかも知れない」。

 「この国は人間が多すぎるので、2,3000万人の人間が死んでも

 一向にかまわない」。
4.北朝鮮発の脅威
 1998年「テポドン」発射(日本列島飛び越し)
 2006年7月、7発の弾道ミサイル発射
 2006年10月、地下核実験実施。
 中距離弾道ミサイル「ノドン1号」(1000キロ以上)、弾頭は

 広島型タイプ(1995年前後 完成?):3~6発。旧ソ連から

 入手した「スカッド改B型」(約500キロ):20発5.韓国発の脅威
 韓国軍当局は射程距離1,000-1,500キロの韓国製長距離巡航

 ミサイルをすでに実戦 配備または開発しているという。

 このミサイルは、北朝鮮全域、東京、北京などの周辺国主要地域が

 射程に入る。南北関係の現状から推察されることは、「統一政策に

 秘めた核戦略をもった隣国」となり、朝鮮半島の脅威は倍加する。
6.台湾をめぐる問題と日本の生命線
 1996年、台湾初の民選選挙

(台湾人・李登輝氏が当選)のとき、

 中国は威嚇にために台湾海峡に

地対地ミサイルを数発撃ち込んだ。
 2005年3月、中国は台湾の独立を

認めないとした「反国家分裂法」を

 制定し、台湾への侵略を表明した。
 日台関係は共通の価値観をもつ関係であるが、2008年の総統選挙に

よって馬英九氏(国民党主席)が総統となれば、台湾は中国による

平和的統一がなされ、中国領土となる。
このことにより南シナ海(バシー海峡、太平洋、マラッカ海峡に繋がる)

は東アジア、中東を結ぶシーレーンが中国の支配する海となり、

東アジアを制することができる。
 中東の石油にたよる日本は中国の影響下に入り、属国に等しい存在

に変わり、「日本 は存亡危機に瀕する」ことになる。
 また、民進党から総統が誕生しても、中国は北京オリンピックと上海

万博が終わった 2010年代になると、台湾の軍事統一を断行する

可能性が高い。
 以上のように特亜三国の脅威を東アジア全体の脅威として眺めると、

北朝鮮の脅威の議論だけでは、日本の防衛・外交の進路は決まらない。

よって、台湾の正名運動(中華民国の「台湾」化)を支援し、2008年

(北京オリンピックの年)までに主権国家「台湾」の確立、そして、国連

加盟が実現できれば、中国といえども台湾を侵略することは出来ない。
その上で、日・米・台安保条約を締結できれば、日本のシーレーンの

維持と東アジアの平和と安全が維持できると思う。
更に、日米関係については、非核3原則から「核を持ち込まず」を削除し、

集団的自衛権を日米安保条約にうたいあげることによって、より堅密な

日米関係が実現でき、特亜三国からの威嚇に対する抑止力となる

のではないだろうか。
   (TKS、愛知)
(宮崎正弘のコメント)基本戦略としては、おっしゃるような態勢ができれば、 

理想的でしょうね。しかし現状は?
 加藤紘一は中川政務調査会長が「核武装の選択肢の論議を」と呼びかけ

ただけでも「北朝鮮の核実験より悪い」と発言しました。
それを金科玉条のように、国内の核武装論者を批判したばかりか、自衛力の

拡大に釘を刺す、どこかの国の指令をうけたごとき、外国買弁政治家、

メディアの暗躍が続いています。

<<今月から来月にかけての拙論>>

(1)「中国報道を疑え」(ムック『反日マスコミの真実』、オークラ出版)
(2)激突対談(相手は趙宏偉氏)「沈む中国、昇る日本になるか」(仮題、『サピオ』次号、11月下旬発売予定)
(3)「大揺れの台湾政治状況」(『共同ウィークリー』、11月下旬号)
(4)座談会「中国といかにつきあうのか」(参加者 西部遭遇、林健良、前田雅之、司会富岡幸一郎)(『表現者』、12月中旬発売)
(5)「胡錦濤の滞日和解は本物か」(『正論』12月号、発売中)
(6)「長野朗再考(2)」(『月刊日本』12月号。11月22日発売)
(7)「林房雄論」(拓殖大学日本文化研究所季刊誌『新日本学』秋号、発売中)
(8)「陳水扁総統へ独占インタビュー」(『自由』正月号、12月10日発売)
<宮崎正弘の中国関係著作>
 『中国から日本企業は撤退せよ!』(阪急コミュニケーションズ刊)
 『中国人を黙らせる50の方法』(徳間書店)
 『出身地でわかる中国人』(PHP新書)
 『中国よ、反日ありがとう』(清流出版)
 『中国瓦解』(阪急コミュニケーションズ)
 『風紀紊乱たる中国』(清流出版)
 『本当は中国で何が起きているか』(徳間書店)
 『人民元大崩壊』(徳間書店)
 『中国のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房)
 『円 vs 人民元』(かんき出版)
 『中国財閥の正体』(扶桑社)
 『瀕死の中国』(阪急コミュニケーションズ)
 『米中対決時代が来た』(角川書店)
 『迷走中国の天国と地獄』(清流出版)
 『いま中国はこうなっている』(徳間書店)

<宮崎正弘のロングセラーズ>
 『朝鮮半島、台湾海峡のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房)
 『拉致』(徳間文庫、旧題『金正日の核弾頭』を改題、文庫化)。
 『謀略投機』(徳間書店)  
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成18年(2006年)11月13日(月曜日) 貳  
通巻第1615号  
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