支那の在住外国人への徴税がさらに強化される。
年収12万元超は申告、新個人所得税弁法
国家税務総局は8日、個人所得税の新しい自己申告の手続きを定めた「個人所得税自行納税申報弁法(試行)」を公布した。今年1月施行の改正個人所得税法とその実施条例に基づき、年収が12万元を超えた場合などに、納税者に税務当局への自己申告を義務付けている。金額からみて、日本人駐在員も大部分が自己申告対象になるのは確実。新弁法は代理人申告を認めるなど実務上柔軟な規定も盛り込んでいるが、申告に絡んで本人または企業の総務担当者の事務負担が増える可能性もある。税務当局からの通達などには今後、注意が必要といえそうだ。
弁法は、個人の年収が12万元を超えた場合は、通常の所得であるか否か、勤務先の企業など源泉徴収義務者が税額を徴収済みか否かを問わず、会計年度終了後3カ月以内つまり1月1日~3月31日の間に、管轄の税務当局への自己申告を義務付けた。新弁法に基づく最初の申告期間は、2007年1月1日~3月31日となる。
年収が12万元以下の時点で既に自己申告済みであっても、その後年度内に12万元を超えれば、年度終了後3カ月以内に再度、自己申告が必要と規定した。期間中に申告しないなど規定に違反した場合は、罰金や追徴課税などが科される。
申告が必要な所得は給与(賃金)、個人事業を経営している場合その所得、業務請負による所得、利子所得、配当、賃貸料収入、一時所得など11項目。改正個人所得税法や改正個人所得税法実施条例が非課税に指定している所得は対象外となっている。
申告方式としては直接、税務当局の窓口に出向く方法のほか、郵送、インターネット上での申告など各種の方法を認めた。
■実際は代理人利用可
ただ自己申告となってはいるが、必ずしも納税者本人が全て手続きをしなければならないわけではない。弁法は、条件を満たした税務代理仲介機関または代理人による申告も認めた。
所得が12万元を超える個人納税者に、仮に全て原則本人による申告を義務付ければ、納税者側に混乱を引き起こすばかりでなく、税務当局も事務処理面で対応できない可能性が高い。代理人利用の容認は、国家税務総局が実務面を考慮し、現実的な対応を選んだ結果とみてよさそうだ。
■海外所得なども対象
改正個人所得税法実施条例は、年収が12万元を超える場合のほか、【1】中国本土内の複数の事業所から給与所得を得た場合【2】本土外からの所得があった場合【3】課税所得がありながら源泉徴収義務者がいない場合(例えば自営業)【4】国務院(中央政府)が別途定める条件に該当する場合――も自己申告義務を定めている。
今回公布の弁法は【1】~【3】については、課税所得を得た際に、同弁法の規定に基づき期限までに申告するよう義務付けた。【4】は国務院の「別途定める条件」制定待ちとなっている。
つまり年収が仮に12万元以下であっても、例えば給与の一部を日本の本社から受け取っていたり、日本や海外で例えば不動産賃貸収入や株式の配当収入などがあれば、自己申告を行わなければならないことになる。
■負担減と一体で徴税強化
弁法の根拠となっている今年1月施行の改正個人所得税法は、従来は
月800元だった個人所得税の基礎控除額を1,600元に引き上げ、併せて
高所得者層に対する自己申告制度の拡大を規定したのが特徴。
給与所得者のうち1993年は月収800元以上はわずか1%前後に過ぎな
かったが、2002年には52%前後に達していた。
低所得者の負担軽減が目的の基礎控除を、給与所得者全体の所得が
向上した実態に合わせた形だ。
一方、自己申告の対象義務化により、従来は違法かどうか必ずしも明確で
なかった未申告や申告漏れが、明確に違法行為として処罰可能となった。
高所得者に対する実質的な徴税強化策といえる。
国家税務総局は昨年来、個人の徴税強化対象として高所得者層などと
ともに、外資系企業とその幹部・従業員や在住外国人、外国人の長期出張
者などを挙げてきた。
今回の弁法自体が在住外国人への徴税強化の側面がある上、今後さらに
新たな動きが始まる可能性もある。
税務当局の動きには注意を払う必要がありそうだ。