とび職のお仕事
とび職のお兄さんに仕事の話を聞いた。
とび職のお仕事は毎日、死と隣り合わせなのだそうだ。
腰のベルトにフックのついた安全ベルトをしていても、あまり使うことは
ないそうだ。なまじフックを近くの鉄筋につなげていると、そこが崩れた
場合、安全な場所に飛び移れないからよけい危険なのだそうだ。
8階建てのビルを作っている時に台風が近くなると足場が揺れて仕事に
ならないのだが、納期が迫っていると台風でも無理をして仕事をする時
もあるそうだ。また夜中に働く事もあり、夜勤明けにぶっつづけに仕事を
させられる時もあるそうだ。親方に好かれると「ごめんな。悪いな。」と
言われながらこき使われるのだが、ごめんなと言われると断るわけにも
いかない。納期が迫ってきたら休暇も無しだ。
夜勤明けなのに、働くとふらふらして足場から落ちそうになる。
落ちたらこの世とお別れだ。残された家族は親方が従業員にかけた保険
金をたっぷり受け取ることになっているので、家族は問題無いそうだ。
いつ死ぬか分からない仕事なので給料はいい。20代の後半で一ヶ月
50万円以上はもらえる。だけど休みが不定期で、女の子を探す時間も
無いそうだ。忙しくない時は毎週決まった曜日に休みをもらえるが、
忙しい時は先輩が休むと、休みの日でも親方に電話で呼び出された
り、先輩の都合で適当にシフトを決められて休める日が決められ
るので、ガールフレンドができても休みの日が合わず、デートができない。
そのためか直ぐ振られるそうだ。給料が一ヶ月50万円以上もあるし、
貯金をしていてもいつ死ぬか分からないという気持ちもあって、家に
入れている金以外は常に一ヶ月で使い果たす気で使っているそうだ。
毎朝、朝礼の時に、昨日はどこどこの県のどこどこの現場で、飛び
職人が死んだとかケガをしたという話を聞くと、次は自分でもおかしく
ないと思うのだそうだ。
湯水のように金を使っているようなので、ちょっとは貯金した方がいい
かも、それと気に入った女の子には、自分がお金持ちだと言わない方が
いいよ。愛はお金で買えないからねと言うと、かなり煙たがられた。