ユーチューブの力はすごいと思った。
中国の人権蹂躙映像、世界へ チベット亡命少年僧ら銃殺
【北京=福島香織】9月末に中国チベット自治区とネパールの国境近く
で亡命を試みたチベット尼僧(25)や少年僧(15)らが、中国の国境警
備隊の銃撃を受け少なくとも2人が死亡した事件の映像が世界中で
放映され、国際社会を騒然とさせている。
北京五輪を控え、「和諧(わかい)(調和のとれた)社会」構築という
胡錦濤政権が提唱する“理想”の陰で行われている中国の人権蹂躙
(じゅうりん)に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)も調査を開始、
米国などが非難の声を上げ始めている。
映像はルーマニアの登山家、セルゲイ氏が偶然撮影したものを
ルーマニア民放局が14日に放映。その後、日本を含む各国でも放映され、
米国の動画投稿サイト「ユーチューブ」などインターネットの映像配信で
世界中を駆け巡っている。
現場はエベレストに近いチョオーユー峰のベースキャンプから
見渡せる氷河。映像は9月30日早朝、氷河の上を1列に並んで
ネパール国境のナンパラ峠に向かって歩いている約30人の行列を
見下ろすように撮影されている。警告発砲音が響いた後、次の発砲音で
先頭の尼僧が倒れた。
カメラは銃を構える中国兵士の姿、続く発砲で行列の最後尾の少年僧
が倒れる様子、倒れた人を抱き上げる兵士の姿をとらえ、目撃した
登山家の「犬のように撃ち殺された」というコメントが流れる。
セルゲイ氏がテレビのインタビューに答えたところによると、一行は
チベット仏教徒でダライ・ラマ14世に会うために亡命を敢行した。
セルゲイ氏は兵士の襲撃を逃れた亡命者を助け、食料や衣類を
分け与えたという。
この事件について12日に中国当局は、兵士が違法越境者に対し
引き返すように説得したものの、「(抵抗したため)発砲した。正当防衛だ」
との公式見解を発表。1人が死亡、2人が負傷したとしている。
しかし、映像が公開されたことで、亡命者の約半分が6~10歳の
子供で、無防備な状態を背後から銃撃されたことが判明。
チベットの難民組織など複数の人権団体の情報を総合すると、
亡命者は全部で73人で、ネパールにたどりついたのは43人。
そのほかは子供を中心に相当数が当局に拘束されているという。