北朝鮮暴発への対処
Japan On the Globe(467)■ 国際派日本人養成講座 ■■■■
The Globe Now: 北朝鮮暴発への対処
日米同盟には金正日政権による「専制と隷従、
圧迫と偏狭」を「永遠に除去」しうる力がある。
■転送歓迎■ H18.10.15 ■ 35,193 Copies ■ 2,254,191 Views■
無料購読申込・取消: http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/
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中国の「赤い小林よしのり」が書いた、「ゴーマニズム宣言」への逆襲!
激烈反日マンガエッセイ、遂に翻訳!読んだらきっと「なんじゃこりゃ!」
『論日本』 => http://mooo.jp/z9aj
中国人の「本意」と「誤解」と「真実」がまるごとわかる漫画エッセイです。
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■1.暴発の瀬戸際に立つ北朝鮮■
10月9日、ついに北朝鮮が核実験を行った。北朝鮮を六カ
国協議に引き出す役割を担っていた中国は完全にメンツを潰さ
れ、異例の強い非難を行った。
太陽政策をとってきた韓国もさすがに核実験まではついて行
けず、訪問中だった安倍首相と「断固とした姿勢で対処すべき
だ」という見解で一致した。
米国ブッシュ大統領は、日中韓露4か国の首脳と相次いで電
話会談し、国連安全保障理事会の強制行動を定めた国連憲章7
章に基づく制裁決議の早期採択をめざすことで一致した。
今まで国連安保理で北朝鮮への制裁決議に反対していたロシ
アも、北朝鮮を非難し、今後は制裁反対を続けるのは難しいと
の見方が強い。
今後、国際社会の北朝鮮への制裁、締め付けが一層厳しくな
り、金正日体制が崩壊の瀬戸際で、暴発する恐れも十分ある。
それにはどのようなシナリオが考えられるのか、我が国はどう
対処するべきか、考えてみよう。
■2.核爆発「装置」では脅威ではない■
まず、今回の核兵器であるが、重さ数トンの核爆発「装置」
であれば脅威にならない。運搬手段がないからである。ミサ
イルに搭載できるほどに小型化されて、初めて脅威となる。
現時点では北朝鮮はミサイルに積めるほどの核弾頭の小型化
には成功していない、と見られている。
しかし、今後も北朝鮮に核弾頭開発を続けさせたら、真の危
機がやってくる。日本の大都市に一発の核ミサイルを打ち込ま
れたら数十万、数百万人の死傷者が出ることは避けられない。
だからこそ、弾道ミサイル防衛システムの整備を早急に進め
つつ、今のうちに北朝鮮の核開発をなんとしても、止めさせな
ければならないのである。
■3.39発の弾道ミサイルを撃ち込まれても死者は2人だけ■
それでは、通常弾頭を搭載したノドン・ミサイルは脅威では
ないのか? 射程距離1300キロでほぼ日本全土に届くノド
ンが100~200基が配備されている、と言われている。
これについては、湾岸戦争時の教訓から学ぶべきだ。この時、
イスラエルはサダム・フセインのイラクから39発の通常弾頭
を搭載した弾道ミサイル「アル・フセイン」を撃ち込まれた。
サダム・フセインのイスラエル攻撃は、「多国籍軍対イラク」
という構図を「イスラエル対アラブ諸国」にすり替える事を狙っ
たものだったが、イスラエルはその挑発に乗らなかった。「イ
ラクに反撃せよ」と沸騰する国内世論を抑えて、反撃を行わな
かった。
その時、イスラエル政府はこう国民に説いた。「飛んでくる
のは通常弾頭型のアル・フセイン」「ミサイルの破片効果は限
定的」「ミサイル警報が出たらシェルターに入れ。運悪く直撃
された場合をのぞき必ず助かる。」 実際に39発の弾道ミサ
イルを撃ち込まれて、死者は2人だけだった。
ノドンの場合は、どうだろう。弾頭の重さが推定900キロ
グラムで、詰まっているTNT火薬の量は500から700キ
ロと推定されている。これが落ちると、半径数百メートルに破
片がばらまかれる。
日本の住宅密集地では数十軒の家屋が破壊されたり、炎上す
るという事になるだろう。数百人レベルの死傷者は出るだろう
が、阪神大震災で神戸市長田区一帯が炎に包まれたような事態
ではない。地下街か、堅固なビルやマンションに退避していれ
ば、被害はもっと食い止められる。
北朝鮮が核弾頭ミサイルを持ったら、これでは済まなくなる。
通常弾道ミサイルしか持っていない今のうちに、核ミサイル開
発を止めさせなければならないのである。
■4.600発のトマホーク・ミサイルが北朝鮮を狙う■
それでも、ノドンを100発から200発も東京都心部に撃
ち込まれたら、大変な被害を被るだろうが、そうはならない。
1発でもノドンが撃ち込まれたら、在日米軍の出番となる。
日本を拠点とする米海軍は「トマホーク」を艦船に搭載して
いる。通常弾頭型で搭載する爆薬は450キロ、射程距離は
1300キロから1700キロと、北朝鮮全域をカバーするこ
とができる。これがGPS(グローバル・ポジショニング・シ
ステム、衛星からの電波を受けて自分の位置を測定する)と地
形照合装置を搭載し、地形を判別しながら地上数十メートルの
高度を飛んで、ピンポイントで目標を爆破する。ノドンよりも
はるかに進化したミサイルである。
このトマホークが在日米海軍の7隻の巡洋艦・駆逐艦に標準
装備されており、その数は定数で200発。これだけのミサイ
ルが、北朝鮮の軍事基地や金正日の隠れ家などをピンポイント
で襲う。2発目、3発目も日本の弾薬庫に常備されているので、
その気になれば600発を撃ち込めるのである。
さらに米軍は、射程距離2500キロの核弾頭型トマホーク
をグアム島に数十発配備している。1発で長崎型の原爆の10
倍の威力があるが、これを使う必要まではないだろう。
アメリカはイラク戦争で、トマホークなど精密誘導兵器によ
る空爆、情報機関と特殊部隊の活用、必要最小限の地上部隊に
よる電撃作戦によって、きわめて短期間にイラクの軍隊を撃滅
し、首都バグダッドを制圧して、フセイン政権を崩壊させた。
ラムズフェルド国防長官の「新しい戦争」を実験してみせたの
だ。
この威力を見たリビアの指導者カダフィ大佐は、大量破壊兵
器を放棄して「北朝鮮、イラン、シリアもリビアを見習い、続
くべきだ」と演説した。カダフィほど賢くもなく、また国内権
力基盤も堅固でない金正日は、核兵器開発で突っ張り続けるほ
かない、と思っているようだ。
■5.北朝鮮軍が南侵してきたら■
北朝鮮が通常兵力で南侵してくる際の脅威はどうか。94~95
年の南北朝鮮の外交交渉で、北朝鮮側が「1万門の大砲と多連
装ロケットで、ソウルは火の海」と脅した。しかし、それほど
多数の大砲が射撃準備のために動き出したら、その様子はすぐ
に情報衛星によってアメリカに掴まれてしまう。北朝鮮が射撃
を始めた途端に、アメリカは上述のトマホーク・ミサイルのピ
ン・ポイント攻撃で、一挙に撃滅してしまうだろう。
北朝鮮の戦車数は韓国軍2330両に対して、3500両と
数だけは多いが、その「最新型」は旧ソ連が1962年に配備した
T62戦車で、残りは1950年代の「博物館」ものである。湾岸
戦争時にイラク軍が大量に保有していたT72ですら、多国籍
軍にはまったく歯が立たなかった。それより古いT62では言
わずもがな、である。
北朝鮮が航空機で韓国や日本を襲う恐れはあるだろうか。北
朝鮮空軍は作戦用航空機を590機持っているが、4世代前、
すなわち40年前に旧ソ連で開発された代物で、旧式な上に整
備も悪く、また燃料不足でパイロットの飛行訓練が十分できて
いない。この北朝鮮空軍が米韓空軍と正面衝突をすれば、ひと
たまりもない。
■6.南侵の能力なし■
海軍はフリゲート艦3隻、潜水艦22隻、高速ミサイル艇な
どの沿岸用艦艇387隻、魚雷艇173隻、哨戒艇166隻と、
これまた数だけは多いが、大半は老朽化した小型艦艇で、平時
の沿岸警備や、せいぜい工作員を送り込むのが、やっとという
レベルである。
1996年6月に、黄海で、韓国側と北朝鮮艦艇との軍事衝突が
起きたが、この時は韓国海軍によって、魚雷艇1隻が撃沈、警
備艇3隻が大破という損害を被った。
陸海空のいずれにおいても、通常兵力による正規戦では、北
朝鮮軍に南侵の能力はない。しかも、南侵を始めた途端に、ト
マホーク・ミサイルの一斉攻撃により、主要な軍事基地や政府
施設は壊滅的な打撃を受け、金正日政権は滅びるだろう。それ
を知っている金正日は、理性を失わない限りは正規戦争などは
挑めないのである。
■7.テロ攻撃■
正規戦では勝ち目のない北朝鮮だが、「非正規戦」なら韓国
や日本に大きな打撃を与えうる可能性がある。
一つは10万から15万人の規模を持つ特殊部隊によるテロ
攻撃である。弊誌238号[a]では、この特殊部隊が日本に潜入し
た場合のシミュレーションを紹介した。
現実にも、1996年9月、韓国の日本海側、南北の軍事境界線
から100キロも離れていない海岸で座礁した北朝鮮の小型潜
水艦から、北朝鮮特殊部隊兵士25名が韓国内に潜入した事件
があった。韓国の軍隊と警察がのべ26万人も投入して、2ヶ
月半捜索し、ようやく24名を射殺し、1名を捕虜とした。韓
国側の死者は15人だった。わずか25名の特殊部隊で26万
人もの軍隊・警察をキリキリ舞いさせたわけで、こういう特殊
部隊があちこちに侵入したら、国内は大混乱に陥る。
潜水艦による侵入なら、日本の海上自衛隊が持つ世界第2位
の対潜水艦戦能力で、早期の発見と撃滅が可能だろう。しかし
すでに国内に侵入している秘密工作員や、たとえば韓国人を装っ
て入国してくる工作員が、新幹線や送電線網、原発などにテロ
攻撃を仕掛ける恐れもある。
もう一つの可能性は、「貧者の核兵器」と呼ばれる生物・化
学兵器によるテロである。天然痘などの菌を人の集まる所でば
らまくというバイオ・テロについては、弊誌296号[b]で紹介し
た。地下鉄サリン事件を起こしたオウムも、その直前に地下鉄
の駅でボツリヌス菌を撒くテロを実際に行っている。これは幸
いにも失敗したが、オウム程度の民間団体でも実行できること
なのである。
また化学兵器についても、米・国防情報局(DIA)や韓国
・国家安全企画部(KCIA)の報告書によれば、北朝鮮には
10カ所の化学兵器工場があり、20種類の毒ガスを生産し、
約1千トン、4千万人を殺害できる量を備蓄している。[c]
■8.あまりにも遅れている日本のテロ対策■
残念ながら、日本のテロ対策は、国際的水準からはあまりに
も遅れている、と言われている[1,p173]。2005年3月、スペイ
ンの鉄道爆破テロの1年後に、マドリードで「民主主義とテロ、
治安に関する国際サミット」が開かれた。アナン国連事務総長
をはじめ、世界23カ国の国家首脳クラスの要人、400人以
上の専門家が出席し、民主主義社会において、どのようにテロ
を克服していくかを模索する会合だった。
しかし、日本の政府関係者は一人も出席しておらず、サミッ
トの参加者からは「世界で初めてサリンという大量破壊兵器で
テロをやられた日本は、同時多発テロのアメリカ、列車爆破テ
ロのスペインとならんでテロ克服をリードすべき立場なのに、
一人も政治家が出席していないとは信じられない」という批判
が出ていた、という。[1,p173]
イスラム過激派によるテロに関しては、確かに地理的に遠い
世界の出来事であり、日本人にとっては「対岸の火事」だった。
しかし北朝鮮はすぐ隣国であり、また工作員の容貌も日本人と
区別がつかない。しかも現実に北朝鮮工作員は日本に侵入し、
拉致事件まで起こしているのである。「日本への浸透作戦はピ
クニックに行くようなものだ」とは、ある北朝鮮元工作員の証
言である。[d]
テロ対策が日本の最大の弱点である。法制、および、警備体
制の対策を大至急進める必要がある。
■9.「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しよう」■
テロ対策は実質的に進める必要はあるが、同時に忘れてはな
らない事は、テロで一国が滅びる事はない、と言うことである。
テロの語源は、英語で言えば"Terror"(恐怖)で、「相手に
恐怖心を与えることにより、特定の政治的目的を達成しようと
する暴力行為」を指す。言わば国家に対する「脅迫」である。
「恐怖」を利用した心理的手段なので、こちらが怖がるほど、
効果を上げることになる。「北朝鮮を追いつめたら暴発する」、
「そうならないよう食糧支援をしよう」などという論法は、す
なわち、北朝鮮の「脅迫」に屈した事であり、相手をますます
増長させる道である。
北朝鮮は従来からミサイル実験を繰り返し、核兵器開発をち
らつかせては、アメリカ、日本、韓国から食糧・石油の提供、
原発建設をせしめてきた。「脅迫」カードの有効性を金正日に
教えてきたのは、クリントン政権以来の米国、およびそれに追
随してきた日本と韓国の責任である[e]。
もう日米韓は脅迫には屈しない、実際にテロ行為に出たら、
自分が滅びるだけだ、という事を金正日に分からせることが、
最大のテロ対策なのである。そのためには、まず日本人自身が
日米同盟にはそれだけの力があることを、よく知って、金正日
の脅迫をはねのける必要がある。
われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地
上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、
名誉ある地位を占めたいと思う
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高
な理想と目的を達成することを誓う。
この日本国憲法の前文を守ろうとすれば、金正日政権による
「専制と隷従、圧迫と偏狭」を「永遠に除去」するよう我々は
「全力をあげて」務めなければならない。
(文責:伊勢雅臣)
■リンク■
a. JOG(238) 有事シミュレーション
~北朝鮮兵士、敦賀半島に上陸す
座礁した潜水艦から山奥に逃げ込んだ北朝鮮兵士11名は、
有事法制の欠陥を浮き彫りにした。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h14/jog238.html
b. JOG(296) バイオ・テロ ~ 近未来シミュレーション
K国の疑惑の貨客船が入港するN市に、天然痘ウィルスによ
るテロ事件発生。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h15/jog296.html
c. JOG(334) オウム裁判と床屋の怒り
「人権派」の新聞や弁護士によって、国民の人権は危機にさ
らされている。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h16/jog334.html
d. JOG(087) 北朝鮮工作船を逃がした理由
国内法に縛られて手が出せない自衛隊を後目に北朝鮮工作船
はゆうゆうと逃亡した。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h11_1/jog087.html
e. JOG(137) 金正日の共犯者
核武装に突っ走る北朝鮮・金正日政権を育てた責任はアメリ
カと日本にある。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h12/jog137.html
■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
→アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。
(まぐまぐ版では、httpのあとに「:」を補ってください)
1. 小川和久『日本の戦争力』★★★、アスコム、H17
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4776202123/japanontheg01-22%22
■ 編集長・伊勢雅臣より
読者からのご意見をお待ちします。以下の投稿欄または本誌
への返信として、お送り下さい。
掲載分には、薄謝として本誌総集編を差し上げます。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jog/jog_res.htm
============================================================
Mail: nihon@mvh.biglobe.ne.jp または本メールへの返信で
Japan on the Globe 国際派日本人養成講座
姉妹誌「国際派日本人のための情報ファイル」JOG Wing
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogindex.htm
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広告募集: http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jog/jog_pr.htm
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mag2:22736 melma!:3308 kapu:7621 ransta:1528
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10月9日、ついに北朝鮮が核実験を行った。北朝鮮を六カ
国協議に引き出す役割を担っていた中国は完全にメンツを潰さ
れ、異例の強い非難を行った。
太陽政策をとってきた韓国もさすがに核実験まではついて行
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だ」という見解で一致した。
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アも、北朝鮮を非難し、今後は制裁反対を続けるのは難しいと
の見方が強い。
今後、国際社会の北朝鮮への制裁、締め付けが一層厳しくな
り、金正日体制が崩壊の瀬戸際で、暴発する恐れも十分ある。
それにはどのようなシナリオが考えられるのか、我が国はどう
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まず、今回の核兵器であるが、重さ数トンの核爆発「装置」
であれば脅威にならない。運搬手段がないからである。ミサ
イルに搭載できるほどに小型化されて、初めて脅威となる。
現時点では北朝鮮はミサイルに積めるほどの核弾頭の小型化
には成功していない、と見られている。
しかし、今後も北朝鮮に核弾頭開発を続けさせたら、真の危
機がやってくる。日本の大都市に一発の核ミサイルを打ち込ま
れたら数十万、数百万人の死傷者が出ることは避けられない。
だからこそ、弾道ミサイル防衛システムの整備を早急に進め
つつ、今のうちに北朝鮮の核開発をなんとしても、止めさせな
ければならないのである。
■3.39発の弾道ミサイルを撃ち込まれても死者は2人だけ■
それでは、通常弾頭を搭載したノドン・ミサイルは脅威では
ないのか? 射程距離1300キロでほぼ日本全土に届くノド
ンが100~200基が配備されている、と言われている。
これについては、湾岸戦争時の教訓から学ぶべきだ。この時、
イスラエルはサダム・フセインのイラクから39発の通常弾頭
を搭載した弾道ミサイル「アル・フセイン」を撃ち込まれた。
サダム・フセインのイスラエル攻撃は、「多国籍軍対イラク」
という構図を「イスラエル対アラブ諸国」にすり替える事を狙っ
たものだったが、イスラエルはその挑発に乗らなかった。「イ
ラクに反撃せよ」と沸騰する国内世論を抑えて、反撃を行わな
かった。
その時、イスラエル政府はこう国民に説いた。「飛んでくる
のは通常弾頭型のアル・フセイン」「ミサイルの破片効果は限
定的」「ミサイル警報が出たらシェルターに入れ。運悪く直撃
された場合をのぞき必ず助かる。」 実際に39発の弾道ミサ
イルを撃ち込まれて、死者は2人だけだった。
ノドンの場合は、どうだろう。弾頭の重さが推定900キロ
グラムで、詰まっているTNT火薬の量は500から700キ
ロと推定されている。これが落ちると、半径数百メートルに破
片がばらまかれる。
日本の住宅密集地では数十軒の家屋が破壊されたり、炎上す
るという事になるだろう。数百人レベルの死傷者は出るだろう
が、阪神大震災で神戸市長田区一帯が炎に包まれたような事態
ではない。地下街か、堅固なビルやマンションに退避していれ
ば、被害はもっと食い止められる。
北朝鮮が核弾頭ミサイルを持ったら、これでは済まなくなる。
通常弾道ミサイルしか持っていない今のうちに、核ミサイル開
発を止めさせなければならないのである。
■4.600発のトマホーク・ミサイルが北朝鮮を狙う■
それでも、ノドンを100発から200発も東京都心部に撃
ち込まれたら、大変な被害を被るだろうが、そうはならない。
1発でもノドンが撃ち込まれたら、在日米軍の出番となる。
日本を拠点とする米海軍は「トマホーク」を艦船に搭載して
いる。通常弾頭型で搭載する爆薬は450キロ、射程距離は
1300キロから1700キロと、北朝鮮全域をカバーするこ
とができる。これがGPS(グローバル・ポジショニング・シ
ステム、衛星からの電波を受けて自分の位置を測定する)と地
形照合装置を搭載し、地形を判別しながら地上数十メートルの
高度を飛んで、ピンポイントで目標を爆破する。ノドンよりも
はるかに進化したミサイルである。
このトマホークが在日米海軍の7隻の巡洋艦・駆逐艦に標準
装備されており、その数は定数で200発。これだけのミサイ
ルが、北朝鮮の軍事基地や金正日の隠れ家などをピンポイント
で襲う。2発目、3発目も日本の弾薬庫に常備されているので、
その気になれば600発を撃ち込めるのである。
さらに米軍は、射程距離2500キロの核弾頭型トマホーク
をグアム島に数十発配備している。1発で長崎型の原爆の10
倍の威力があるが、これを使う必要まではないだろう。
アメリカはイラク戦争で、トマホークなど精密誘導兵器によ
る空爆、情報機関と特殊部隊の活用、必要最小限の地上部隊に
よる電撃作戦によって、きわめて短期間にイラクの軍隊を撃滅
し、首都バグダッドを制圧して、フセイン政権を崩壊させた。
ラムズフェルド国防長官の「新しい戦争」を実験してみせたの
だ。
この威力を見たリビアの指導者カダフィ大佐は、大量破壊兵
器を放棄して「北朝鮮、イラン、シリアもリビアを見習い、続
くべきだ」と演説した。カダフィほど賢くもなく、また国内権
力基盤も堅固でない金正日は、核兵器開発で突っ張り続けるほ
かない、と思っているようだ。
■5.北朝鮮軍が南侵してきたら■
北朝鮮が通常兵力で南侵してくる際の脅威はどうか。94~95
年の南北朝鮮の外交交渉で、北朝鮮側が「1万門の大砲と多連
装ロケットで、ソウルは火の海」と脅した。しかし、それほど
多数の大砲が射撃準備のために動き出したら、その様子はすぐ
に情報衛星によってアメリカに掴まれてしまう。北朝鮮が射撃
を始めた途端に、アメリカは上述のトマホーク・ミサイルのピ
ン・ポイント攻撃で、一挙に撃滅してしまうだろう。
北朝鮮の戦車数は韓国軍2330両に対して、3500両と
数だけは多いが、その「最新型」は旧ソ連が1962年に配備した
T62戦車で、残りは1950年代の「博物館」ものである。湾岸
戦争時にイラク軍が大量に保有していたT72ですら、多国籍
軍にはまったく歯が立たなかった。それより古いT62では言
わずもがな、である。
北朝鮮が航空機で韓国や日本を襲う恐れはあるだろうか。北
朝鮮空軍は作戦用航空機を590機持っているが、4世代前、
すなわち40年前に旧ソ連で開発された代物で、旧式な上に整
備も悪く、また燃料不足でパイロットの飛行訓練が十分できて
いない。この北朝鮮空軍が米韓空軍と正面衝突をすれば、ひと
たまりもない。
■6.南侵の能力なし■
海軍はフリゲート艦3隻、潜水艦22隻、高速ミサイル艇な
どの沿岸用艦艇387隻、魚雷艇173隻、哨戒艇166隻と、
これまた数だけは多いが、大半は老朽化した小型艦艇で、平時
の沿岸警備や、せいぜい工作員を送り込むのが、やっとという
レベルである。
1996年6月に、黄海で、韓国側と北朝鮮艦艇との軍事衝突が
起きたが、この時は韓国海軍によって、魚雷艇1隻が撃沈、警
備艇3隻が大破という損害を被った。
陸海空のいずれにおいても、通常兵力による正規戦では、北
朝鮮軍に南侵の能力はない。しかも、南侵を始めた途端に、ト
マホーク・ミサイルの一斉攻撃により、主要な軍事基地や政府
施設は壊滅的な打撃を受け、金正日政権は滅びるだろう。それ
を知っている金正日は、理性を失わない限りは正規戦争などは
挑めないのである。
■7.テロ攻撃■
正規戦では勝ち目のない北朝鮮だが、「非正規戦」なら韓国
や日本に大きな打撃を与えうる可能性がある。
一つは10万から15万人の規模を持つ特殊部隊によるテロ
攻撃である。弊誌238号[a]では、この特殊部隊が日本に潜入し
た場合のシミュレーションを紹介した。
現実にも、1996年9月、韓国の日本海側、南北の軍事境界線
から100キロも離れていない海岸で座礁した北朝鮮の小型潜
水艦から、北朝鮮特殊部隊兵士25名が韓国内に潜入した事件
があった。韓国の軍隊と警察がのべ26万人も投入して、2ヶ
月半捜索し、ようやく24名を射殺し、1名を捕虜とした。韓
国側の死者は15人だった。わずか25名の特殊部隊で26万
人もの軍隊・警察をキリキリ舞いさせたわけで、こういう特殊
部隊があちこちに侵入したら、国内は大混乱に陥る。
潜水艦による侵入なら、日本の海上自衛隊が持つ世界第2位
の対潜水艦戦能力で、早期の発見と撃滅が可能だろう。しかし
すでに国内に侵入している秘密工作員や、たとえば韓国人を装っ
て入国してくる工作員が、新幹線や送電線網、原発などにテロ
攻撃を仕掛ける恐れもある。
もう一つの可能性は、「貧者の核兵器」と呼ばれる生物・化
学兵器によるテロである。天然痘などの菌を人の集まる所でば
らまくというバイオ・テロについては、弊誌296号[b]で紹介し
た。地下鉄サリン事件を起こしたオウムも、その直前に地下鉄
の駅でボツリヌス菌を撒くテロを実際に行っている。これは幸
いにも失敗したが、オウム程度の民間団体でも実行できること
なのである。
また化学兵器についても、米・国防情報局(DIA)や韓国
・国家安全企画部(KCIA)の報告書によれば、北朝鮮には
10カ所の化学兵器工場があり、20種類の毒ガスを生産し、
約1千トン、4千万人を殺害できる量を備蓄している。[c]
■8.あまりにも遅れている日本のテロ対策■
残念ながら、日本のテロ対策は、国際的水準からはあまりに
も遅れている、と言われている[1,p173]。2005年3月、スペイ
ンの鉄道爆破テロの1年後に、マドリードで「民主主義とテロ、
治安に関する国際サミット」が開かれた。アナン国連事務総長
をはじめ、世界23カ国の国家首脳クラスの要人、400人以
上の専門家が出席し、民主主義社会において、どのようにテロ
を克服していくかを模索する会合だった。
しかし、日本の政府関係者は一人も出席しておらず、サミッ
トの参加者からは「世界で初めてサリンという大量破壊兵器で
テロをやられた日本は、同時多発テロのアメリカ、列車爆破テ
ロのスペインとならんでテロ克服をリードすべき立場なのに、
一人も政治家が出席していないとは信じられない」という批判
が出ていた、という。[1,p173]
イスラム過激派によるテロに関しては、確かに地理的に遠い
世界の出来事であり、日本人にとっては「対岸の火事」だった。
しかし北朝鮮はすぐ隣国であり、また工作員の容貌も日本人と
区別がつかない。しかも現実に北朝鮮工作員は日本に侵入し、
拉致事件まで起こしているのである。「日本への浸透作戦はピ
クニックに行くようなものだ」とは、ある北朝鮮元工作員の証
言である。[d]
テロ対策が日本の最大の弱点である。法制、および、警備体
制の対策を大至急進める必要がある。
■9.「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しよう」■
テロ対策は実質的に進める必要はあるが、同時に忘れてはな
らない事は、テロで一国が滅びる事はない、と言うことである。
テロの語源は、英語で言えば"Terror"(恐怖)で、「相手に
恐怖心を与えることにより、特定の政治的目的を達成しようと
する暴力行為」を指す。言わば国家に対する「脅迫」である。
「恐怖」を利用した心理的手段なので、こちらが怖がるほど、
効果を上げることになる。「北朝鮮を追いつめたら暴発する」、
「そうならないよう食糧支援をしよう」などという論法は、す
なわち、北朝鮮の「脅迫」に屈した事であり、相手をますます
増長させる道である。
北朝鮮は従来からミサイル実験を繰り返し、核兵器開発をち
らつかせては、アメリカ、日本、韓国から食糧・石油の提供、
原発建設をせしめてきた。「脅迫」カードの有効性を金正日に
教えてきたのは、クリントン政権以来の米国、およびそれに追
随してきた日本と韓国の責任である[e]。
もう日米韓は脅迫には屈しない、実際にテロ行為に出たら、
自分が滅びるだけだ、という事を金正日に分からせることが、
最大のテロ対策なのである。そのためには、まず日本人自身が
日米同盟にはそれだけの力があることを、よく知って、金正日
の脅迫をはねのける必要がある。
われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地
上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、
名誉ある地位を占めたいと思う
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高
な理想と目的を達成することを誓う。
この日本国憲法の前文を守ろうとすれば、金正日政権による
「専制と隷従、圧迫と偏狭」を「永遠に除去」するよう我々は
「全力をあげて」務めなければならない。
(文責:伊勢雅臣)
■リンク■
a. JOG(238) 有事シミュレーション
~北朝鮮兵士、敦賀半島に上陸す
座礁した潜水艦から山奥に逃げ込んだ北朝鮮兵士11名は、
有事法制の欠陥を浮き彫りにした。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h14/jog238.html
b. JOG(296) バイオ・テロ ~ 近未来シミュレーション
K国の疑惑の貨客船が入港するN市に、天然痘ウィルスによ
るテロ事件発生。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h15/jog296.html
c. JOG(334) オウム裁判と床屋の怒り
「人権派」の新聞や弁護士によって、国民の人権は危機にさ
らされている。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h16/jog334.html
d. JOG(087) 北朝鮮工作船を逃がした理由
国内法に縛られて手が出せない自衛隊を後目に北朝鮮工作船
はゆうゆうと逃亡した。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h11_1/jog087.html
e. JOG(137) 金正日の共犯者
核武装に突っ走る北朝鮮・金正日政権を育てた責任はアメリ
カと日本にある。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h12/jog137.html
■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
→アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。
(まぐまぐ版では、httpのあとに「:」を補ってください)
1. 小川和久『日本の戦争力』★★★、アスコム、H17
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4776202123/japanontheg01-22%22
■ 編集長・伊勢雅臣より
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