好業績を誇示することで、投資家の信頼を高める意図? | 日本のお姉さん

好業績を誇示することで、投資家の信頼を高める意図?

中国銀行はこのほど発表した今年上半期(1~6月)の中間決算で、純利益が昨年同期比28.3%増の194億7,700万元だったと明らかにした。同行にとっては今年6月の香港市場、7月の上海市場上場後初の決算発表。手数料など非金利収入が16.9%増の146億8,000万元となったことなど、業績の好調ぶりを前面に打ち出している。同行の業績好調の“演出”には、同じ4大国有商業銀行の中国工商銀行が今年10月に予定している香港上場や、世界貿易機関(WTO)加盟による12月の人民元業務完全開放を控え、中国地場銀行界の健全性をアピールする意図も見え隠れする。

 中国銀の今年度中間決算は、項目別にみても好調だ。146億8,000万元を上げた非金利収入が営業利益に占める比率は21.1%と、国内地場銀行中トップ。代理業務や決済業務、カード業務の手数料を大きく伸ばした結果と強調している。非金利収入の強化は銀行界の国際的な流れで、中国銀はこの点で国内最先端を進んでいることになる。
 
 貸し出しと預金の利ざや収入も12.3%増え、548億2,300万元となった。同時点の不良債権比率も4.2%と、昨年末の4.6%から0.4ポイント改善した。
 
 業界や証券界が懸念していた為替差損も35億米ドル出たものの、外国為替業務全体では結果的には15億米ドルの黒字だったとしている。
 
 ■引き締め影響否定
 
 しかし、30日付の英字紙チャイナ・デイリーによると、証券アナリストからは、政府の引き締め政策により、下半期(7~12月)の中国銀行業界は経営環境が悪化しかねないという懸念が出ている。台湾系宝来証券のアナリストは、「(下半期は)引き締めの影響で、中国銀も他行と同様に業績の伸びは鈍化するだろう」とみる。
 
 こうした指摘に対し、中国銀の李礼輝行長(頭取)は「我々は金融商品を多様化させているし、貸し出しだけに頼って収益を上げているわけではない。また投資過熱業種への融資は多くない」と反論、あくまで強気の姿勢を見せている。
 
 ■誇示は「お家の事情」?
 
 中国銀にとっては、業績の好調ぶりをどうしてもアピールしなければならない事情もあるようだ。まず同行は香港上場に伴い、業績と経営内容を国際金融界や投資家の目にさらさざるを得なくなった。これは国有商銀海外上場の最大の目的であり、経営改革に向けた試練だ。
 
 しかも中国銀の香港上場への道は決して平坦ではなかった。同行は上場前に、元副董事長が死刑判決を受けた4,100万元の横領事件や、この元副董事長が関与したとされる中銀香港(中国銀の香港子会社)による100億HKドル以上の不正融資事件、ハルビン市の拠点を舞台に起きた1億元超の預金横領事件など不祥事が続出。国際的な知名度などから4大国有商銀中1番乗りが妥当だった香港上場を、中国建設銀行に追い越される一因になったとも言われていた。
 
 中国銀はこれら一連の不祥事を、投資家向け上場説明書にリスク要因として列挙せざるを得なかったほど。今回の業績アピールには、こうした負の遺産によるマイナスイメージを早く払拭したいという意図もみえる。
 
 さらに10月には、4大国有商銀の第3弾として、工商銀が香港市場に上場する予定。同じく国を後ろ盾とする国有商銀として、上場を援護せねばならない事情は考えられる。好業績を誇示することで、国有商銀全体に対する投資家の信頼を高める意図は否定できない。
 
 加えてこの12月には、人民元業務の完全開放に伴い、外銀が中国人・中国地場企業向け同業務に参入する。現地法人化義務付けという新たな変数が浮上しているとはいえ、欧米系を中心とする外銀は人材集めなど着々と準備を進めており、開放後は豊富な金融ノウハウを武器に攻勢をかけてくるのは必至だ。間もなく来る外銀との本格的な競争に、同行がどう立ち向かうか。今回の中間決算好調の“演出”は中国の銀行業界の強気の姿勢を象徴するものともいえそうだ。【上海・安部田和宏】
(NNA) - 8月31日