返事のこない手紙を書く。 | 日本のお姉さん

返事のこない手紙を書く。

外国の友達からメールが来て、電話が欲しいというので


かけてみた。そうしたらお姉さんの子供が交通事故で死んでしまって、


毎日嘆き悲しんでいるから、何か手紙を書いてあげてほしいと言うのだ。


小学校2年生の男の子だった。市場の前でバスを降りた子供が道の


向こう側に自分の母親を見つけた。その道は、車の往来の激しい道


だった。市場の前でもその国では車は徐行しない。高速道路でなくても


80キロや90キロを出して走る国だ。


小学2年生の子供は「おかあさ~ん!」と叫びながら母親に向かって


走った。母親が止めようとしても止める事はできなかった。


そこに1台のトラックが猛スピードで走ってきて、子供は飛ばされた。


即死だったそうだ。


母親の見ている前で、子供が死ぬという辛い事件だった。


友達のお姉さんと子供には会ったことがある。恥ずかしがりだけど、元気


いっぱいで、絵を描くのが上手くて可愛い顔をしていた。


友達の頼みなので、頑張って手紙を書くことにした。


あの子が死んでしまったなんて本当に信じられない。でも、現実に


事故は起こってしまったのだ。


友達のお姉さんは毎日泣いているのだ。なんとかできることをしてみよう。


そう思ったわたしは、友達のリクエストに答えて手紙を書き出した。

「大変なことが起こったというメールを受け取りました。日本にいる


わたしには、まだ現実のことだという実感がありません。


でも、U君がいないということは、辛い現実です。そんな辛い現実に


ひとりで耐えていくのは無理です。周りの人があなたを助けてくれるよう


願っています。でも辛いのはあなただけではありません。あなたの


ご主人も辛いと思います。ご家族みんなが辛いのだと思います。


何かすこしでもわたしができることはないかと考えて手紙を書くことに


しましたが、U君を亡くされた悲しみは誰にも消す事はできない悲しみ


です。きっと、これから先ずっと、あなたはU君の年を数えるだろうし、


今、彼は何歳だって、口にするのだと思います。U君のことはあなたは


一生忘れることは無いでしょう。あんなに可愛がっておられた子供が


目の前で死んでしまうなんて辛い事件はめったに起こるものでは


ありません。でも、そんな目に会った人はいます。あなただけではない。


そんな人たちがお互いに励ましあう会があれば、積極的に参加する


必要があると思います。実際に同じ思いをした母親と会うことは、誰も


わたしのこの悲しみを理解できないんだという孤独な思いからの


脱出口にになります。また、あなたは自分を責める思いにかられていると


思いますが、どの母親も子供が死ぬと自分が悪い、自分のせいだ。


自分に責任がある。もっとこうしていれば、ああしていればといろいろ


悩む事になります。でも、それは全ての人が陥るパターンです。


人の命の長さは神さまがそれぞれに決めておられます。


いろんな方法で神さまは、人のいのちを取られます。不摂生をして病気に


なったり、事故にあうのはもちろん避けることが可能ですが、神さまには


それぞれの人の状況を把握しておられます。そういう状況を使われた


というだけなのだと思います。ですから、あの時、道の向こう側にいなけ


ればとか、自分を責めることは止めてください。神さまが人のいのちの


長さを決定されるのだという事実を認めてください。


もちろん、大勢の人が通る市場の前の道を、スピードを下げずに通ると


いう悪い習慣をその町に住む人は止めるべきだし、車がスピードを出さ


ないように道路に段差をもうけることは可能です。それでも、神さまは


人のいのちを管理しておられると信じます。


いのちは神さまに与えられたものであり、わたしたちはそれを管理し、


神さまに喜ばれるように過ごすのが人間の仕事です。


人は生きている間に神さまに出会い、神さまに頼り、神さまに罪を赦され


天国に行く準備をする必要があります。その期間が長いか短いかは


誰にも分かりません。U君は、短いいのちでしたが、神さまはU君を


あなたに預けられました。


短い時間でしたがあなたはU君と共に人生を楽しむ事ができました。


本当は、もっともっと長い時間一緒に過ごしたかった。


U君が大人になって、結婚して孫ができて、、、、あなたは孫を抱いて、、


そんな人生であってほしかった。だけど、神さまの計画は、そうでは


無かった。人間には自分の思いどうりにならないことがたくさんあります。


特に、いのちに関しては。いのちは神さまの管理下にあるのだと思う


時がたくさんあります。時には、なぜ神さまがこんなひどい試練を


あなたに与えるのか、疑問に思います。なぜ?なぜわたしなの?


なぜU君なの?なぜ、他の人ではないの?たくさんの疑問がわいて


きます。わたしも、なぜU君にこんなことが起こるのかと疑問に思い


ます。それは今は分かりません。だけど確実に神さまの計画があるの


だと信じます。あなたは、悲しみのあまり、死んでしまうかもしれない。


でも、あなたは死ぬ事を許されていません。それは神さまが決めて


くださいます。あなたのご主人とあなたの赤ちゃんのことを考えてくだ


さい。彼らには、あなたの愛情が必要なのです。ご主人は男性なので


悲しみがあってもみんなのために働かねばならない。あなたの小さい


赤ちゃんも、あなたから世話をしてもらう必要がある。神さまがされた事


はうらめしい事ですが、あなたにはご主人と赤ちゃんの世話をする


責任があるのです。どうぞ、今の苦しみに負けないで、ご主人と


赤ちゃんのため元気を出して生きようと決意してください。


神さまは耐えられないような試練には会わせないと聖書に書いてあり


ます。あなたに試練が与えられたのは、何か神さまの計画がある


からなのです。


あなたが神さまから与えられ、愛した魂は神さまによって取り上げら


れました。その時期が早すぎるので、わたしたち人間は驚き、悲しみ、


神さまをうらみます。そして自分を責め、他の人を責めます。もちろん


こういう事が起きた交通状況に対しては、町は対策をしなければなり


ません。けれども、いのちに関することでは神さまの計画を認める必要


があると思います。


人間は自分の命がいつまでかすら分からないのです。


他の人の命もいつまでと定められているかなど、想像もすることが


できません。だからこそ、わたしたちは、毎日を大切に、神さまに信頼


しながら過ごす必要があるのです。死後に神さまに出会う準備をする


必要があるのです。与えられた命を感謝し、喜び、日々起こる問題や


苦しみを神さまに申し上げて、助けてもらいながら生きるように創られて


いるのです。U君のいのちが短かったことは残念です。神さまはU君を


あなたに預けられました。短くてもU君は、あなたと過ごせて幸せだった


のではないでしょうか。あなたは、毎日一生懸命U君のお世話をして


おられました。一生懸命愛してあげたことを足りなかったと思っては


いけません。神さまが決めたU君の時間を、わたしのせいで短くなった


などと考えてはいけません。U君と過ごした日々の思い出は、あなたの


生きている限り、あなたの心の中に存在するのです。


「主は与え、主は取られる。主のみ名はほむべきかな。」というのは


聖書の言葉です。人間は神さまをほめたたえながら生きるように創ら


れています。明日何があるかすら分からない弱い人間ですが、神さまが


罪を赦し天国に入れてくださるので、弱くても強く生きることができるの


です。U君の思い出やU君に対するあなたの愛は消えてしまうのでは


ない。これからもずっとあなたとご主人はU君を愛しているのだと思い


ます。そんな風に神さまはわたしたちを愛しているのだと思います。


神さまは人間を救うために、イエス・キリストを天から遣わしてください


ました。神さまの愛はどれほどの強さだったのでしょうか。


わたしたちは想像することしかできません。ただ、神さまのお恵みをあり


がたく受け取るだけなのです。人間の努力ではなく、神さまのお恵みで


人は天国に行けるのです。天国に行く事も神さまのお恵みによるし、


今、あなたが与えられていもの全ても神さまのお恵みなのだと思います。


どうぞ、神さまが与えてくださったご自分の命とご主人と赤ちゃんを


大切になさってください。無理にでもご飯を食べて健康に気を使って


ください。悲しみのあまりあなたが病気になったら、ご主人と赤ちゃんは


どうしたらいいのでしょうか。人生においては何が幸せなのでしょうか。


ある日突然失えば、悲しみと変わるものが幸せなのでしょうか。


自分の創り主である神さまを信頼して生きることが人間の幸せなのだと


思います。人間は神さまのために生き、神さまの許した時に死ぬのです。


そして死後に神さまのおられる天国に行くために生きているのです。


毎日を神さまからのプレゼントだと思って、神さまのために生きてくだ


さいね。失ってしまったプレゼントはあまりにもすばらしいものでした。


悲しみはしっかり悲しみとして受け止めていかねばなりません。でも、


いつまでも悲しみに支配されずに、神さまに信頼して強く生きようと


思ってくださいね。ご主人も赤ちゃんも、家族のみんなも、あなたが


元気になる日を待っていると思います。


この手紙の返事はいりません。あなたのために神さまにお祈りして


います。○○より。」


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返事は来なかったけれど、それは仕方が無い。


子供を亡くした人に返事は書けないと思う。


彼女はわたしに会うと、この手紙とU君を思い出すだろう。


だから、会わないほうがいい。そう思っている。いつか彼女が


会いたいと言ってくれたら、その時は会いに行こうと思う。