ミツトヨは装置の性能を低くみせる偽装ソフトまで開発していた。 | 日本のお姉さん

ミツトヨは装置の性能を低くみせる偽装ソフトまで開発していた。

不正輸出は企業自らが断つ決意を(2006/8/29NIKKEI NET)

 大手精密測定器メーカー、ミツトヨが3次元測定器の不正輸出で摘発された事件は、輸出規制の体制の不備、企業の自覚の欠如という両面の問題を浮き彫りにしている。

 核兵器やその他の大量破壊兵器の製造に利用できたり、そのまま軍事転用が可能な製品に対する規制は、世界的なテロの頻発、北朝鮮、イランなどの核開発問題などを受け、世界的に強化されてきた。日本も経済産業省が規制品目のリストを示し、輸出に事前許可を義務づけるなど厳しい姿勢を打ち出している。日本は規制対象となる精密機器、工作機械などで世界トップクラスのメーカーが多いだけに、十分な監視体制が必要なのは言うまでもない。

 だが、申請を調べる審査官は全国で38人と限られており、対象品目の拡大、輸出先の広がりに十分対応できているとはいえない。迂回(うかい)輸出やダミー会社の利用など不正輸出の手口が巧妙化しており、申請書だけで不正を見抜くのはますます難しくなっている。審査官の増強、IT(情報技術)利用などで水際阻止の体制を強化すべきだ。

 それ以上に重要なのは企業の自覚である。ミツトヨが不正輸出に手を染めるようになったのは、売り上げが低迷し、赤字転落した1992年以降といわれる。生き延びるためには、不正であっても輸出するしかないという切羽詰まった状況だったのかもしれない。だが、いったん不正輸出で売り上げを増やせば、その後は不正抜きには業績を維持できなくなる。同社はイラン、リビア、北朝鮮、中国などに10年近くにわたって延べ1万台前後の測定器を不正輸出していた疑いが強まっている。

 これだけの台数を規制をかいくぐって輸出するために、ミツトヨは装置の性能を低くみせる偽装ソフトまで開発していた。そうした悪質性、継続性が社長、副会長ら会社幹部5人の逮捕という企業犯罪としても異例の厳しい対応となった。最初の1台の不正輸出が企業を存亡の危機に立たせているわけである。

 不正輸出は、今年初めに摘発されたヤマハ発動機の無人ヘリコプターの対中輸出など一向に尽きる気配がない。「うまくやればみつからない」といった甘い考えがあるのだろうが、不正輸出が続き、規制が強化されれば、審査に時間がかかったり、輸出許可が下りにくくなるなどの弊害がいずれ出てくる。不正輸出は企業の経営を危うくするだけでなく、日本の製造業全体の競争力も低下させかねない。企業自らが不正輸出を断ち切るべき時である。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20060828MS3M2800628082006.html