船長他2名は今どこに?
日本漁船銃撃 過剰警備ではなかったか
北方領土の貝殻島付近で16日、北海道・根室のカニかご漁船がロシア国境警備庁の警備艇に銃撃され乗組員1人が死亡した。この海域での銃撃事件で死者が出たのは50年ぶりという。痛ましい出来事だ。ロシアは事件の真相を公正に調べ、事実関係を早急に明らかにしなければならない。
貝殻島は北方四島のうち最も根室に近い歯舞諸島の一つで、納沙布岬からわずか3.7キロの至近距離にある。色丹島、国後島や最も遠い択捉島も含め、北方四島周辺は水産資源が豊富だ。
小型漁船が操業しやすいことから、ソ連時代から無許可操業で拿捕(だほ)される日本漁船が相次いだ。海上保安庁によると、1950年以降40件発生した旧ソ連・ロシア警備艇による日本漁船銃撃のうち北方四島周辺での事件は26件を占め、けが人も14人出ている。
このため、日露両政府は98年、海洋生物資源の操業に関する協定に署名し、その年から四島周辺の指定海域での操業が行われている。この漁船は花咲ガニの操業許可を得ていたが、銃撃現場とみられる貝殻島周辺はカニ漁の許可対象外という。
ロシア側の報道によれば、水晶島近くで漁船を発見した警備艇が停止を命じたが応じなかったため警告発砲した。漁船は逃走中にカニやタコを捨てていたという。また、ロシア国境警備庁から日本漁船の越境について連絡を受けていた道庁は各漁協に注意を促す文書を出していたともいう。
乗組員が連行されているため現時点では事件当時の状況ははっきりしないが、北海道の規則に反した操業の可能性が指摘されている。だが、漁船側に操業上の非があったとしても、無防備の小型船に銃撃を加え人命を奪う事態を招いたことは看過できない。
麻生太郎外相はロシアの駐日臨時代理大使を呼んで厳重抗議し、ロシア側の陳謝、責任者の処罰、乗組員の解放を求めた。当然の対応だ。ロシア側の過剰警備ではなかったのか。停止命令はどのように行ったのか。ロシアは納得のいく説明をしなければならない。
臨時代理大使は「ロシア領海を侵犯したために起きた」と日本側の責任にも言及した。しかし、これは北方四島がロシア領土であることを前提にした発言である。「北方四島は固有の領土」とする日本の立場からすれば認められないものだ。
日露間では近年、漁業の安全操業のための協力が進み、北方四島周辺海域のトラブルは減少傾向にあった。しかし、漁業資源が枯渇することへの警戒からか、国境警備隊の取り締まりが強化されているとの指摘がある。今年6月には、納沙布岬の東方沖で6人乗り組みの流し網漁船がロシアに拿捕されサハリン州に連行されるトラブルがあった。
北方四島周辺海域での漁船の悲劇を繰り返してはならない。日露間の漁業分野での協力関係の積み重ねを無にしないためにも、ロシアは日本と十分協議し再発防止を徹底しなければならない。
毎日新聞 2006年8月17日
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20060817k0000m070126000c.html
【モスクワ=金子亨】北方領土・貝殻島付近で北海道根室市のカニ
かご漁船「第31吉進(きっしん)丸」がロシア国境警備隊に拿捕(だほ)
された事件で、乗組員3人が拘束されている国後島・ユジノクリリスク
=古釜布(ふるかまっぷ)=の検察当局は17日、3人が密漁と密輸、
国境侵犯の罪で訴追されるとの見通しを示した。
タス通信が伝えた。
また、同島の軍事検察官はインターファクス通信に対し、船長を含む
乗組員3人が「何をしていたかを供述している」と述べ、密漁目的で
ロシア領海を侵犯した容疑を認めつつあることを示唆した。
同通信によると、ロシア・サハリン州の検察当局者は17日、乗組員
3人に対する捜査結果が19日以降に明らかになるとの見通しを語った。
法律で定められた3日間の審理期間を最大限に利用するためという。 (読売新聞) - 8月17日