宮崎正弘のメルマガのコメントが面白い。 | 日本のお姉さん

宮崎正弘のメルマガのコメントが面白い。

貴誌1525号(7月27日付け)の回答部分に「共産党王朝の崩壊は向こう半世紀を射程にすれば、大いに起こりうるシナリオです。切っ掛けは非常に簡単です。人民解放軍と武装警察合計350万人の暴力装置が、三食くえなくなったとき、王朝は衰退から内訌、革命に至りやすいからです。清も明も元も、宋も、基本的にはそうやって滅びたのですから」
とあります。

宮崎先生の「現代中国観」を伺い知るのに、非常に重要な発言だと思いました。
すでに、中共政府は成立してすでに57年、この共産党政権が「あと(最大)50年くらいは続くかも知れない」という先生の認識であるとすれば、現状の(2006年時点での)「中共政権は、非常に強固・安定」ということであると思います。
また350万人の軍+警察が「三食食えなくなったとき」というのは、私には想像がつきません。 
12億の人口の超大国で350万人の軍・警察が食えなくなることは、(3500万人の一般人民が食えなくなることはあっても)ないだろうと思うからです。
ひょっとすると、「共産党王朝=共産党という血族王朝でない貴族団による支那全土の支配という方式」は、支那人が数千年の歴史の葛藤の末についにたどり着いた、「歴代で最も優れた統治方式」なのかも知れません。
私は中国の崩壊を望みません。 
それは日本に「大混乱+大迷惑」をもたらすことが必至だからです。12億の超大国の隣国が、これ以上は領土を拡大せずに、「自存自衛」してくれることを切望します。したがって中国にエネルギーを供給してやることは、アジアの安全保障上、最大のファクターだと考えます。
(KI生、尼崎市)


(宮崎正弘のコメント)「毎日牛乳を飲むからという理由で牛を飼うだろうか?」
でも、飼うのですね。中国は。
 供給先に不信感を抱き、鉱区を直接統括したい。だからたとえばスーダンの鉱区をまもるために人民解放軍を送り込む。
 崩壊を望むか、望まないかという次元ではなく、歴史というのは時折逆流したり、還流したり、予想と逆になったりします。日本が望まなくとも、中国は隣国への迷惑なんぞ関係のないことですから、もしそうなった場合、難民輸出も食料のおねだりも、なんでもありでしょうね。


   ♪
(読者の声4)東アジアの70年といふことで以下、御うかがひ致します。
現在のシナ経済の繁栄は、トウ小平の現代化(1978)以降の対外開放政策の結果と考へられます。(即ち、共産主義的経済の放棄、市場経済の導入)
 そもそもこの経済政策は1930年代の国民党の経済政策と基本的に同じださうです。
北村稔=京大教授と櫻井よしこ女史の対談(『諸君!』2005.12月号,p.80,下段)に、以下の対話があります。
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櫻井:歴史上のifになりますが、アメリカがもっと蒋介石の国民党を支援していれば、国民党が戦後の中国を統治していてもおかしくなかった。その方がむしろ中国人は幸せだったのかも知れない。少なくとも大躍進や文化大革命ほどの民衆虐殺は起こらなかったでしょうし、経済の自由化にせよ、民主化にせよ、今より達成されていたのではないでしょうか。

北村:現在、中国が取っている市場開放政策は、実は1930年代に国民党政権が行っていた国家主導の経済政策と基本的には変わりありません。土地改革にしても、この時期、国民党はさまざまな実験的な試みを行っています。
 むしろ国民党政権のほうが、その指導層に日本や欧米への留学生出身者が多く法治主義や民主主義を受け入れる基盤がありました。
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すると思考の筋道として「共産党は間違つてゐた」「共産革命は不要だつた」「西安事件から文化大革命終了までの歴史は無駄・徒労だつた」といふ結論になる筈です。
当然、この意見がシナ知識人の間に澎湃として沸き上がつて良いと思ふのですが、ど
うもさうはなつてゐないやうです。これは何故なのでせうか?
(大つぴらに言へないから、表面に出て来ないだけなのでせうか?)
 かういふ見解は昔からあつた見解で… 記憶によれば文化大革命の頃、京大の会田雄次=教授が毛沢東の「自力更生」を批判して「劉少奇、トウ小平の路線が正しい。外資導入で国内産業を興す韓国(朴大統領)と同じ事をやれば良いのだ」と新聞に書いてゐたと記憶いたします。
またシナ共産党の失敗は単に産業政策に留まらず、周辺諸国にも途方もない迷惑をかけてをります。
シナ知識人の間ではこの種の議論はなされてゐるのでせうか?
  (showa78)


(宮崎正弘のコメント)最後の節のほうから。中国人の世代間による認識の差は凄い開きがあり、文革世代、文革以前、改革開放以後とおおまかに三つの差異が認められます。
 国民党の記憶があるのは、文革世代まで。
このなかの知識人で早くに諸外国にでた人達はご指摘のような世界観があります。それ以後も中国に残った人達には、ながい間の洗脳教育と情報操作とによって、客観的に世界をみて、判断することは難しい。
 アメリカが「もし」、あのときに国民党を本気で支援していたら、共産党が天下をとれる可能性はきわめて少なかった。
けれどもルーズベルト大統領の周辺を取り囲み政策決定をした連中が、殆ど共産主義者だった事実が、ようやく白日の下に曝されました。
 謀略にまけて日本も国民党も破れたようなものです。
 前節の日本留学組ですが、蒋介石も周恩来も譚祠堂も康有為も魯迅も、これら悉くが日本経験があり、孫文をもっとも協力に支援したのが日本です。このことが中国の歴史学において等閑視されている、その中国人の事大主義が最悪のネックでしょうね。


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