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ディズニーのキャラクター商品の下請け工場で暴動
   最低賃金と奴隷のような労働条件に立ち上がる?


 広東省東莞市の香港資本玩具メーカー「マッテル・アジア・パシフィック」の工場(従業員11000人)で、06年7月23日から3日間、大規模なストライキ、暴力沙汰が起きた。

 とくに「賃金が安すぎる」、残業時間が七十時間などという「出鱈目な労働条件は不当だ」と従業員数千人が工場施設を破壊、ガードマンと衝突を繰り返し、あげくに近くの道路を封鎖したため警官が出動する騒ぎが起きた。
 負傷者がでたほか、十数人が警察に拘束された。

 香港の『明報』(7月29日付け)に依れば、従業員側は残業代の不払いや工場の食事のまずさを不満として立ち上がったという。

日本のマスコミは、この事件を小さく扱うか、無視した。
対照的に米国『ヘラルド・トリビューン』は大書して報道した。見出しは「ディズニー、マクドナルドが中国玩具工場の騒動を調査へ」(7月29日付け)となっている。

 なぜならこのマッテル・アジア・パシフィックの玩具工場はバビー・ドールやディズニーのキャラクター商品、ハスブロやワーナー、マックの人形の下請けとして知られ、同時に過酷な労働条件と残業時間の長さ、労務管理の悪さでも知られた。
 一日十一時間、土曜休みなしで月給574元というのは広東省政府が規定した最低賃金額とぴたり符丁。

 米国ではこうした商品が米国市場に流れ込むと「労働工場でつくられたモノ」と不買運動や訴訟がおきるため、たいへんに神経質にならざるを得ず、はやくも人権擁護団体が訴訟準備の構え。
ただちに香港にあるディズニー、マックのキャラクター商品担当者は現場に飛んで聞き取り調査に入ったという。


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環境破壊が進み、石油暴騰を産む
   中国の資源外交がアメリカの不信感をうんでいる


 米中関係がよそよそしい。
 対比的に小泉首相は訪米のたびに国賓待遇を受けてご満悦、その替わりグアムへ引き上げる米軍の移転費用までむしり取られてもニコニコ顔なほど骨抜きにされた。
 そこへいくと原則に関しては頑迷で、最後まで頑強に国際的合意に抵抗する中国の外交は分かりやすく、ナショナリスティックだから、中国のほうが国益重視型ということには間違いがないだろう。

 四月の胡錦濤訪米を欧米の殆どのメディアが「失敗」と分析した。国際的な水準から見れば我を通すばかりの中国は世界の調和を攪乱すると捉えられているのだ。
 公害無策による黄砂、ヘドロ、河川の汚染は近隣諸国に悪影響を与え、石油、ガスの「爆食」ぶりは国際商品相場を攪乱した。

 しかしブッシュ大統領の人気はイラクの泥沼で陰りどころか歴代最低ラインに近く、米国の世界戦略は各地で頓挫。その間隙を突いて、たとえばソマリアはイスラム過激派が首都を軍事占拠、スーダンでは武断政治を進める政府が中国の援助を受けて、少数民族の虐殺を繰り返す。

 胡錦濤訪米の成果があがらなかった理由は明白である。
 要するに米国の国益を甚だしく損壊し始めた中国の遣り方(たとえば中南米の反米国家に梃子入れし、油田鉱区漁り)、その一方で著しい対中貿易赤字の拡大、アジアにおける軍拡への脅威、台湾への恫喝、そして人民元切り上げ要求を無視し続けた中国の驕慢への沸々とした怒りである。

 米国の癪のタネの筆頭は北朝鮮問題より、おそらくイランの核だろう。
 濃縮ウランによる核開発をあきらめないイランは、中国とロシアに国連での庇護を求め、とくに中国はイランと1000億ドルもの長期契約を結んでガス、石油鉱区開発の正式契約をした。「イランの核」を外交カード化して中国は国連決議に反対もしくは棄権したりして西側への挑戦をしている。


 ▼イラン大統領をめぐって米中の対決姿勢、鮮明に

六月中旬には米国が敵視するイランのアハメデネジャッド大統領を北京は招待、これまた米国を刺激し、怒りを倍加する。
 単細胞なところのある米国は中国とロシアを手玉にとってイランを動かすことが出来ず、ついには「イラン制裁」を獅子吼して、日本にアザデガン油田開発の中断という政治圧力をかけてきた。

 この時期を選ぶかのようにイランは「夏までにイランは『上海協力機構』(SCO)の正式メンバーとなりたい」と表明した。
穿って考えれば、これは近未来に中央アジア版NATOを中国軍人を最高司令官として結成しようという動きと言えなくもない。

 ジャン・フィリッペ・ビジャ(パリ国際研究センター<CERI>主任研究員)は「あきらかな西側秩序への挑戦だ」とした。

 グレン・バークレー豪国立大学教授も「西欧と中央アジアのあらゆる意味での地殻構造上のシフト(Tectonic Shift)であり、西側はもっと関心を持つべきだろう」(INSニュース、5月126日付け)と注意を喚起したが日本のマスコミは無視した。
 焦眉の急は資源の宝庫、アフリカに移った。

 毛沢東時代の中国の対アフリカ政策は非常にわかりやすかった。
 タンザニアには鉄道を敷設し、工事のために人民解放軍を数万人も送った。
 毛沢東はアフリカ諸国との「第三世界の連帯」を標榜し、エンジニア、医者、教師をアフリカの奥地にも派遣し、密かに武器援助を与えた。イデオロギーに染まった外交の一環として身分不相応の援助を続行し、アフリカ諸国の信頼を勝ち得ようとした。
 この政策は71年の国連復帰まで継続した。その後、79年までイデオロギー的混乱があったものの、エンジニア、医者、教師の派遣は続けられた。

 もともとアフリカ諸国はヨーロッパ植民地の残映を色濃く引きずっておりモザンビーク、エチオピアはイタリアの、旧南西アフリカ(ボツアナ)はドイツの、そしてナイジェリアなどはイギリスの、コンゴ、アンゴラ周辺はフランスやベルギーの植民地政策の残滓が行政機構や言語教育に明確に残り、植民地から独立後も石油、ガス、レアメタルの鉱区開発利権は当該政権と繋がる旧宗主国が握った。


 ▼石油輸入国への転落とアフリカ外交

 ナイジェリア、アンゴラなどの油田は欧米メジャーが抑えた(たとえばアンゴラ沖合の海底油田から米国は単独で一日32万バーレルの石油を輸入している)。
 「中国の対アフリカ政策が明確に変わったのは93年である。この年、中国は石油輸入国に転落し、それが最大の政治的動機となってアフリカ外交の転換をもたらしたのだ」(クリストファー・オーデン、ロンドン大学上級講師)。

 胡錦濤はアフリカ諸国を歴訪(06年四月)、ナイジェリアでは40億ドルの投資を決めた。CNOOC(中国海洋石油)は22億ドルを投じナイジェリア石油会社の株式45%を取得した。この会社はナイジェリア鉱区ばかり近隣の赤道ギニア、チャド、ガボン、アンゴラの石油鉱区を運営している。

 スーダンでは血なまぐさい悲劇が繰り返されている。
世界周知のダルフールにおける虐殺はすでに18万人の犠牲者がでているが、中国は国連安保理事会で拒否権を発動し、ロシアとアルジェリアが棄権にまわった。
 ダルフールの虐殺の原因は中国ではないが、問題がこれほどこじれてしまった遠因は明らかに中国にある。欧米のスーダン政策(人権、民主化要求)に真っ向から反対しているのである。
 それというのも中国の対スーダン投資はついに80億ドルに達し、そのスーダンからの輸入石油は中国全輸入の7%から8%を占めるまでに至った。駐在するエンジニア(軍人)は一万人に達している事実がある。

 またムガベ独裁のジンバブエを、先頃、呉邦国・全人代委員長が訪問し、二億ドルの援助を約束した。
 アフリカ諸国は「人権」や「民主化」を叫ぶ欧米の蠅のようなうるささより、武断政治を認め、武器を供与してくれ、石油を買ってくれる中国に向いている。しかも中国は独裁政治の老師、情報独占の老師、呼吸もピタリと合うというわけだ。
 こうした中国の外交が”洗練された一流の”外交などと、とても評価できないのではないのか。

〔注 この文章は『リベラルタイム』八月号からの再録です〕

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