中国の経済について。
■需給ギャップ進行/バブルの兆候
改革開放路線への転換以来、計画経済から市場経済への移行など中国経済研究の理論を支えてきた重鎮として知られるエコノミストの呉敬●(ごけいれん)氏は、中国の経済成長が依然として投資主導であることに深い憂慮を表明。成長モデルを転換できなければ中国経済はバランスを崩し、失速すると警告している。(上原隆)
▼輸出主導は限界
新華社電によると、呉氏はマクロ経済動向をテーマにした会議で発言。
「中国が投資主導型の経済成長モデルを改めなければ、マクロ経済は短期間に均衡を失い、経済の失速は免れない」と苦言を呈した。
呉氏は、先行して経済発展した日本などの経験をふまえ、一国の国内総生産(GDP)に占める投資の比重が増加し続ければ、総資本は拡大するが、消費需要は減少し続けることになり、需給ギャップが広がるとの懸念を指摘した。
また日本など輸出主導型の経済成長をとげた国々が、輸出によって需給ギャップを緩和し、海外需要で国内需要を補う発展パターンを歩んだことを紹介。
このパターンによって一定の期間の高度成長を維持できたが、輸出主導型の成長には限界があり、外貨保有高の増加や通貨への切り上げ圧力の増大、中央銀行の市場介入の拡大による過剰流動性の発生の結果、不動産や先物商品、株式など資産インフレ、ひいてはバブル経済を引き起こすというマイナス側面が大きかったことを強調した。
呉氏は現在の中国経済の状況について冷静に分析する必要性を説き、「みんなが(バブルの発生について)『狼が来た』という声におびえて動けなくなっているときが最も警戒すべき時だ」と、自らの見解を述べた。
さらに、ここ数年、マクロ経済調整に関する政策的措置は明確な効果をまったくみせていないと断じ、今こそ調整を徹底的に行う時機だと訴えた。
中国政府も上期(1~6月)のGDP成長率が前年同期比10・9%となり、前年年間の9・9%、今年1~3月の10・3%を再び上回ったことに強い警戒感を示している。
特に上期の固定資産投資(公共投資と企業設備投資)が、政府の抑制策にもかかわらず、前年同期比29・8%と高水準を続け、GDP成長率を押し上げる要因となった。投資規模の拡大が継続していることは今後の経済運営の大きな不安材料となっている。
国務院発展研究センターの分析では、投資規模は社会全体の需要を大幅に上回っており、飽和状態にある。需給ギャップの進行は必至な情勢だ。
このため、生産能力の過剰や企業向け融資の増加による金融リスクの上昇など、マクロ経済をめぐる問題は一段と厳しい状況に向かっている。
中国人民銀行(中央銀行)は今月21日、金融機関が人民銀に預け入れる預金準備率を0・5%引き上げ、8・5%とし、来月15日から実施すると発表した。預金準備率は今月5日に現行水準に引き上げられたばかりだ。
今年4月にほぼ1年半ぶりに貸出金利を引き上げたのに続き、相次ぐ積極的な金融政策は企業向け融資のスピードを減速させ、信用の膨張や通貨供給量の拡大を抑制しようという金融当局の焦りがにじみでている。 このまま投資の過熱傾向が収束方向に転換しなければ、需給ギャップから景気が腰折れする可能性も否定できない。
▼特効薬ないまま
物価上昇率は上期の消費者物価指数が1・3%の伸びにとどまり、一応落ち着いているが、不動産市場でのバブルの兆候が表面化しており、インフレに転じる恐れもある。
中国の今年の経済政策は安定成長への移行が最大の課題だが、半年を過ぎたところで、軟着陸に向かう気配はみえない。
政府は過熱した経済、産業の温度を引き下げる有効な方法を模索しているが、特効薬がみつからないまま、時間だけが過ぎ去っているのが現状だ。
●=王へんに連
http://www.business-i.jp/news/china-page/news/200607270003a.nwc
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