日本の存在はアジアでは薄れているのでは? | 日本のお姉さん

日本の存在はアジアでは薄れているのでは?

北京五輪前に占う 今までの中国とこれからの中国
第9回 石川幸一教授に聞く - FTAは2015年に向けて着実に進展

 中国とASEAN(東南アジア諸国連合)の関係が急速に緊密化している

1999年に270億ドル程度だった中国の対ASEAN貿易総額は2005年に

1300億ドルを超え、この7年間で実に5倍に膨れ上がった。

 この両者の蜜月は日本とも無関係ではない。

日本とASEANの関係は一貫して良好で、それは今でも基本的には

変らないが、ASEANにおける中国の存在感が、日本のASEANに対する

影響力を相対的にせよ確実に低減させている。

 興味深いデータがある。ASEANの貿易シェアにおいて、80年に

25.9%あった対日本の数値が03年には14.1%にまで落ち込んでいる。

ほとんど半減に近い。

一方の対中国の数値は、80年はわずか1.8%だったが、03年には

7.6%にまで伸びてきている。

 ASEAN経済におけるシェアだけで考えれば日中間の格差は確実に

縮まりつつある。更に韓国の台頭も軽視できない。

そうした情勢の中で、ASEAN研究の専門家である亜細亜大学アジア研究所

の石川幸一教授に中国との関係という視点を中心に話を聞いた。

(聞き手/構成:有田直矢・サーチナ総合研究所所長)


■ASEANと中国の関係

――今注目されている地域統合のひとつとして中国-ASEANがあるが。

 中国とASEANの関係は2000年頃から緊密になり始めています。

それまではかなり複雑な過程があり、特に1960年代から70年代にかけては

対立関係ともいえました。

 インドネシアの9月30日事件(65年)とその後の国交断絶などが典型的な

例ですね。ベトナムとは社会主義の兄弟ともされましたが、カンボジア侵攻と

中越戦争(79年)によりやはり国交は断絶。

東南アジアには華人や華僑も多く、問題をより複雑にした感もあります。


――それがいい方向に転換した経緯は。

 90年代以降からは関係が徐々に改善していきます。89年の中国の

天安門事件で先進国が対中経済制裁を行う中で、ASEANはそれに

足並みをそろえなかった。「中国の国内問題だ」と考えたからですね。

シンガポールなどは日本に対中経済制裁の中止を求めたほどです。

 また、95年に中国はASEANの対話国となり、会議にも出席しました。

97年からのアジア金融危機の際、中国は通貨の切り下げを見送り、タイへの

支援を行いました。

その際の対応には今でもASEANは中国に感謝しています。

 00年は転換点です。それまでの基盤を踏まえて関係や絆がより太く

結ばれるようになりました。当時の朱鎔基・首相がASEANとの首脳会議で、

FTA(自由貿易協定)締結に向けた研究を進めることを提案、合意しました。

両者のトップレベルでの合意だったので、この研究は非常にスピーディに

進展して、翌01年には10年以内にFTAを実現させるとの取り決めが

まとまったわけです。

 03年に中国は日本よりも早くTAC(東南アジア友好協力条約)に調印

しています。


■急速な歩み寄りがなぜ実現したか

――日本と比べて中国とASEANのFTAを含む関係緊密化の進展は速いが。

 まず、日本が縦割り行政で、外務、財務、農林水産、経済産業など各省庁

にまたがって交渉を進めなければならないのに対して、中国は権力が

一極集中していますからね。話が早いわけです。

 交渉の進め方では既存のAFTA(ASEAN自由貿易地域)の枠組を

ベースとしてこれを有効活用して進めています。

ASEANに対する中国側の配慮がうかがえます。


――中国とASEANといえば南シナ海の問題もあるが。

 73年のオイルショックがひとつのきっかけとなって、埋蔵油田の確保など

が目的で、かなり大規模な軍事衝突にまで発展したことがありますね。

ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイなどと係争関係にありましたが、

特にベトナム(当時は南ベトナム)やフィリピンとは交戦しています。

90年代になると、中国が実効支配しようとする動きを活性化させたことも

係争を複雑化させた要因です。

 92年には「領海法」を定めましたね。中国はこれで法的に領海を固めようと

したわけです。

ただやはり関係が緊密化する中で、02年になってASEANと中国の間で

「南シナ海行動宣言」が調印されました。

武力行使せず、話し合いを進めようというのがその趣旨です。

最近は資源の共同開発も進められています。


――なぜこうまで中国とASEANの関係は急速に深まったか。

 ASEAN側からみれば、90年代頃から中国脅威論が高まりました。

産業や経済、軍事などの方面で現実的に圧倒される可能性が強く認識され

ました。世界的にみても中国の台頭が避けられない中で、ASEANとしては

中国と対立・対抗するのか、むしろ関係を発展させるか、大きく分けて二者

択一を迫られたわけです。

 地政学的にもなかなか突き放すというわけにはいきませんので、

対立・対抗は現実的ではないと判断されました。

そこで講じられたのがいわゆる「関与政策」ですね。話し合いを通して

関わりを持ち続けて、言い方は悪いかもしれませんが、「昇竜を

手なずける」という方策に打って出たといえます。

 あとは、中国のマーケットとしての魅力。やはりこれが大きいですね。

貿易額はここ数年年率30%を超える勢いで増加してますし、今では中国と

ASEANの間で工業製品の相互依存・水平分業が確立しています。

ただし、ベトナムなど新規加盟国は中国側に資源を輸出し、中国から

オートバイや肥料など工業製品を輸入するという形態です。


――中国側にとってはどうか。

 中国の狙いとしては国家戦略、そこから発展してくる外交戦略と関わって

くると思うのですが、78年の改革開放以降、中国は経済成長を主軸に

据えたので、必然的に国内外の安定的な環境が求められたわけです

以前までは「革命の輸出」とまでいわれていましたが、そうした状況で

はなくなってきた。

 米ソとの関係が悪化したこともASEANとの接近を促した間接的な要因に

挙げられます。特に99年の在ユーゴ中国大使館の米国空軍による誤爆

事件は、米国依存から脱却を強く意識するきっかけになったようです。

ただ、結局米国依存は今も実質的に変わりはないですが。

 中国としてもASEANのマーケットは軽視できないものでした。

また、ASEAN諸国との近隣外交は中国のエネルギー政策や安全保障に

非常に重要なファクターとなってきます。

特にメコン河流域の安定は中国にとって重要で、この地域の輸送インフラの

整備はマラッカ海峡を介さずにルートを構築できるという意味では

画期的です。

西部大開発の展開にあたってもそれは大きなメリットになっていることは

間違いありません。

 メコン河流域との兼ね合いでいえば、ミャンマーとの関係緊密化が

大きいですね。

インドネシアも世界的な産油国ですが、ミャンマーも資源が豊富な国です。

中国-ミャンマー間の石油パイプライン計画は中国にとっても大きな戦略的

意義があります。

中国企業もインドネシアはもちろん、ミャンマーでの資源権益に着目、

オフショアの油田や天然ガス田の構築を進めています。

そこで産出したものを中国-ミャンマー間のパイプラインで輸送することを

計画しています。


■FTAの進展と今後予想される諸状況

――中国とASEANのFTA進展について。

 01年の合意を経て、05年からは段階的に関税引き下げが行われており、

すでにFTAは始動しています。

2010年にはインドネシア、タイ、マレーシア、シンガポールらと、2015年には

ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマーらとの自由貿易地域が実現する

予定です。

 現状から考えて、このスケジュールどおり進む可能性が大きいでしょうね。

ただし注意しなければならないのは、例外品目が非常に多いことです。

センシティブ・トラックは2018年までに関税率5%以下、高度センシティブ

・トラックは2015年までに50%以下など、比較的緩めに設定されており、

抜け穴が多い。

 例外品目の主要なところを挙げれば、自動車やテレビ、冷蔵庫、米、鉄鋼

などがあります。かなり重要な製品が含まれています

。だからどこまでFTAの成果が上がるかは若干不透明ではあります。

ただ、08年にこうした例外品目の見直しを進める予定になっています。

AFTAでも徐々に自由化を拡大させていったという経緯がありますので、

中国-ASEAN間のFTA、つまりACFTAもその経験が生かされるかも

しれません。


――FTAが本格的に実施されれば、具体的にどのような状況が想定できるか。

 中国が輸出したがっている自動車やオートバイなどで、もしFTAが実施されて

も高い関税率が維持されるようであれば、中国企業による現地での工場設立の

動きが加速することが考えられます。今でも一部そうした傾向はみられます。

 あるいは完成車の関税は部品より高いので、中国国内で完成車をばらして、

部品として登録して輸出するような形態が増えるかもしれません。

それを現地で再び組み立てるという形です。

 東南アジアにおいて、自動車はまだまだ日系や韓国が強く、中国の自動車

というのはほとんど認知されていませんが、オートバイは一時期、ベトナムや

インドネシアなどで中国製が席巻しました。価格競争力の高さですね。

 オートバイの例でいえば、中国の低価格製品がマーケットを拡大させたという

実績があります。

まだまだ強い日系や韓国の自動車ですが、日系車と比べて価格を半分

程度に引き下げることができれば、中国車の強みが発揮されるかもしれません。

それがマーケットを拡大させることも十分考えられます。


■東アジアの統合と韓国の台頭

――日本とASEAN、あるいは東アジアという枠組での統合とFTAに

ついて。

 日本とのFTAは中国に遅れること2年(2012年と2017年)で実現するという

スケジュールで進んでいます。

東アジア全体のFTAも今は首脳間の合意がなされています。

個別にみていくと、日本とシンガポール、タイなどすでに進んでいるものも

あるので、ASEAN+3(日中韓)という枠組でのFTAは意外と早く、

08年頃から交渉が開始されるかもしれません。

2015-2017年には実現するとの観測もあります。

 中国と韓国も既に研究中です。日本と韓国も現在は中断していますが

交渉は始まっています。唯一、オフィシャルな形で何も進展がないのが

日中間です。

現在は白紙の状態で、東アジアにおけるFTAでは最大の懸念事項に

なっています。

 こうした動きは今後もますます加速していくでしょう。企業レベルやモノの

動きなどはより活性化し、台湾やASEANで作られた部品が日本や韓国の

デザイン・設計のもと、中国で組み立てられ、日本などに輸出されるなどの

水平分業がより進展します。その一方で、中国が存在感を増し、韓国が

台頭していることにより、ASEANにおける日本の影響力は低減するかも

しれません。


――韓国のASEANにおける影響力は。

 中国はともかく、現地の日系企業は韓国を強力なライバルとして非常に

意識しています。

ASEANにおける日本全般の評価は悪くありません。日本製品はその品質の

よさが高く評価されています。

ただ、農産品輸出で譲歩しなかったり、フィリピンから日本への看護士や

介護士の派遣を認めたものの人数で厳しい姿勢を示したり、経済大国で

あるにもかかわらず度量が狭いなどの面で非難される場合があります。

 そうした中で韓国の評価が急上昇しています。韓国製品は品質が以前と

比べてよくなっており、現地でも歓迎されています。あとは大規模な広告

戦略などが奏功しているようです。

マレーシアでは「国民車」というものがあります。国民車の次に乗り換える

のは以前までは日系車が主流でしたが、今では現代(ヒュンダイ)が

人気です。


■中国-ASEANの連携強化による経済効果と弊害

――中国-ASEANのFTAによる経済効果は。

 事前のモデルでは貿易額が約50%増、GDPも増えることは間違いない

でしょう。野菜や果実類などでは04年から自由化しています。

いわゆるアーリー・ハーベストですね。タイなどから熱帯果実が中国に

輸出され、中国からはにんにくなどの野菜が輸入されています。

 ただ、先にも触れたとおり、ACFTAは例外品目が非常に多い。

産業別の見極めが大事になってくるでしょうね。例えば、半導体や

PC部品などはすでにゼロ関税が実現しています。FTAが実施されたとして

も、中国輸出の主力製品としてのこれら電子部品の影響は限定的だと

いえるでしょう。

 中国-ASEANのFTAで20億人のマーケットが誕生する、と喧伝される

こともありますが、実情としてはそんな単純なものではないです。

少なくともそうした巨大マーケットがすぐにできるわけではないとみています。


――逆に弊害は。

 中国からは繊維や衣類、靴類がどんどんASEANに入ってきています。

FTAの本格実施にあわせて加速する可能性もあります。当然地場産業は

壊滅的な打撃を受けているようで、フィリピンではかなりひどい状態だと

いいます。

 ASEANと一括りで説明されますが、中国や日本とのFTAが5年の猶予

期間をそれぞれ設けていることからも分かるとおり、加盟10カ国はそれぞれ

状況が大きく異なっています。

シンガポールやタイ、マレーシア、インドネシアは日米韓の企業もかなり

進出していますし、先進国への輸出も盛んです。経済発展がある程度

進んでいます。

 それに比べるとベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマーなどは完全な

発展途上国です。1人当たり所得でみてみると、シンガポールは別格

(最下位のミャンマーとの格差は100倍)としても、ミャンマーとタイや

マレーシアの格差は10倍以上です。そうした中に競争力の高い中国製品が

入ってくると、対応できる国と対応できない国が明確に分かれ、現在でも

ひどい格差がより拡大する危険があります。


――今後の展望について。

 中国もそうですが、ASEANもやはり経済発展が政治的安定につながり

ます。そうした中で注目したいのはメコン河流域開発(GMS)ですね。

アジア開発銀行が力を入れていますが、この地域の経済発展や安全

保障を考える上では重要なプロジェクトになります。

日本も積極的に協力・支援していくことが大切ですね。

 この地域への支援は経済的に遅れているベトナム、ラオス、ミャンマー、

カンボジアの開発を促すことになります。

(サーチナ・中国情報局) - 7月31日

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060731-00000000-scn-cn


メコン河流域開発(GMS)で、経済的な開発をうながすのは

いいかもしれないが、中国主導で行うなら開発区には中国人が

中国の工場を建てるということだ。

ヘタに開発すると公害でメコン河流の魚も河イルカも全滅すると思う。

上流で中国がダムを作ったり重化学工場を建てて汚染された工業用水を

流すと、下流の国はもろに影響を受ける。

今でも原因不明の病気でミャンマーやラオスで河イルカが死んでいるのだ。

ラオスの漁師は「上流に何かあるんだ。」と、言っている。

中国も公害問題をきちんとしないといけないとはわかっていると思うが、

中国人個人個人の性格や行動を考えると、監視がゆるいと平気で

汚染物質やゴミを垂れ流すだろう。

ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアの自然界は

メコン河流域開発(GMS)で中国にボロボロにされるんじゃないかと思う。

もしも日本が積極的に協力・支援していくことができれば、

公害問題も解決させながら経済も発展させることができるかもしれないが

中国と日本が組むなら、きっとややこしいことが起きるのだろうな。

本当はメコン河流域開発(GMS)は日本が昔から考えてきたアイデア

なのだが、今ではいつのまにか中国が積極的にベトナム、ラオス、

ミャンマー、カンボジアに開発を働きかけている。

どこの国と組むにしても、メコン河開発をするなら自然界は壊される。

日本と中国が組むなら、いつのまにか公害問題の責任は日本が

かぶることになりそう。最近中国はインドネシアで多国籍の会社で

大きなプロジェクトを請け負っていた。公害の問題もクリアーしていた。

メコン河の開発もちゃんと公害問題で相手国に迷惑をかけないように

するつもりだろう。

アフリカの話だが、エジプト政府は昔からスーダン政府に

「ナイル河の水の量をスーダンが変化させてエジプトに水が

来なくなるような事態になったら、エジプトは躊躇(ちゅうちょ)することなく

軍隊を送って報復する。」とくぎをさしているそうだ。


ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアも金にめがくらんで

中国企業にメコン河を開発させる時がくるなら、エジプトぐらい強気で

中国にメコン河を汚させないようにくぎをさしておくほうがいい。


メコン河を開発するなら必ず生態系には悪い影響が出るだろうから、

経済的に豊かになっても、自然界は貧しくなる。

実質、人間の生活の質は貧しくなると思う。

それよりも、今の状態をキープし、すばらしい自然を世界中に売り込んで

観光で儲けるという手もあると思う。

中国人の観光客を呼び込んで、中国人の性格をよく見てから

メコン河開発を考えるといいと思う。メコン河開発のメリットとデメリットを

比較してみてよく考えてから決めてほしいと思う。

日本はもっとエコロジーな観点からベトナム、ラオス、ミャンマー、

カンボジアに協力を申し込んでいけば、それらの国はずっと日本に

協力的でいてくれるだろうと思う。

今の日本の技術を使えば、豊かな自然を残しつつ経済も発展させる

ことは可能かもしれない。日本はすでに自国を公害で壊した経験がある

ので、その経験を生かし、同じ失敗を他国で行わないようにできると思う。