青蔵鉄道は、チベットの中国化促進とインドへの軍事兵站拠点として使うため。 | 日本のお姉さん

青蔵鉄道は、チベットの中国化促進とインドへの軍事兵站拠点として使うため。

「青蔵鉄道」はチベットの伝統・文化破壊、漢族との同化戦略が基本
 インドへの軍事兵站拠点として一ヶ月に12万の軍派遣が可能になる


 北京とチベットのラサを結ぶ「青蔵鉄道」が繋がった。
来年から本格的な運行に入る。
 日本のマスコミは観光の話題にしか焦点を当てていないが、ツーリズムは表面の現象でしかない。

朱首相以来の「西部開発プロジェクト」の目玉としてチベットおよび青海省の経済発展に寄与するというのは中国共産党一流の政治プロパガンダ。日本のマスコミは、「地球の歩き方」的な報道姿勢を改める必要があるだろう。

 いったい高度5000メートルを超える難所を含め、およそ一千キロが高度4000メートルの凍土を走る難工事を敢行した理由は何か?

第一にチベット族の同化政策が目的である。
 チベット族を漢化して「中華民族はひとつ」とする洗脳教育は最近とくに激しくなった。

 すでに中国がチベットを侵略し、数十万のチベット民族を殺戮してから半世紀以上。仏教寺院の破壊と僧侶への弾圧によって、まともな宗教指導者は稀少となった。ポタラ宮は中国人観光客に溢れているが、宮殿の随所に公安が眼を光らせている。
 ラサの街を歩けば洒落た土産屋、ショッピングモール、レストラン、いやタクシーさえも殆どが漢族の経営、チベット族はと言えば人力車、レストランの前で民族楽器を弾く、或いはポタラ宮前の広場で物乞い。
つまり漢族の植民地化しているのである。

 チベット族は、現在の行政区分であるチベット自治区のみならず、昔の大帝国、「吐蕃」の版図全域に分散して住み、北京語では「蔵族」(ツァン)を充てる。チベットは西蔵、じつに勝手な命名である。

青海省西寧郊外にひろがる塔爾寺など、ラサのポタラ宮に迫るほどのダイナミックな建物だが、ここに象徴される多くのチベット仏教寺院にはダライラマ猊下の写真がない。あるのは「偽パンチェンラマ」の写真。
それも大きく飾られるようになり、若いチベット世代はダライラマの存在をその意義さえ理解できなくなった。


▲消えてゆく運命なのか、チベット語

 もっとも小学三年生の段階から教室でチベット語をつかうのは御法度、くわえて試験問題、クルマの免許、国家公務員試験、大学入学試験は、これすべて北京語。
したがって若いチベット族は、ついにチベット語が満足に喋れなくなった(ウィグルも同じ)。

 言語の消滅、文字の消滅は、かつても満州文字、モンゴル文字、トンパ文字、西夏文字が消滅したように(学術研究がつづき、博物館にのみ文字は残るが)、チベット文字さえも、消滅の危機に晒され始めた。
 つぎは伝統と文化の完全な破壊である。

 青蔵鉄道の第二の狙いは軍の輸送能力の向上である。
 それはチベット恒久支配の現実を見せつける政治効果と同時に、対外的にはインドと軍事的緊張が高まれば、中国人民解放軍は一ヶ月以内で、十二万の軍をチベットへ派遣できるというロジェスティックが完成したことを示威する目的があるのだ。

 インドと中国が表面的な緊張緩和に動いているとする分析が多いが、これは表面的にすぎるのではないか。
 インドは長距離ミサイルの発射実験を繰り返し、その射程に北京、上海、広州が含まれる。
インド人の多くは「中国脅威論」を信じており、米国の協力を得る原発の開発にしても、さらなる保有原爆の質的向上を目指すという深謀遠慮がある。


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