中国の知的財産権に対する意識の差が原因 | 日本のお姉さん

中国の知的財産権に対する意識の差が原因

中国国内で登録された自動車部品の特許など産業財産権(工業所有権)のうち、多国籍企業が登録したものが78%に上ることが国家知識産権局の調べで分かった。比率は今後さらに上昇する可能性もあり、外資系企業が知的財産権の面から中国の自動車部品市場を“制圧”しつつあることが浮き彫りになった。研究開発費の面で国内地場部品メーカーが外資系メーカーに比べ大きく劣ることも判明しており、地場メーカーなどの間では警戒感が高まっている。日系メーカーの進出も続く中、当局側が知的財産権で国内地場メーカー保護に乗り出すかが注目されそうだ。

 中国経営報によると、国家知識産権局はこのほど、自動車業界の産業財産権(商標権を除く。以下同じ)出願状況を発表した。昨年6月~10月に機械工業の団体と共同で行った調査結果として、国内で登録されている自動車部品の産業財産権のうち地場メーカーによるものは22%に過ぎず、残り78%は多国籍企業(外資系メーカー)によるものと明らかにした。中国で登録されている件数は世界各国で登録されている件数の2%程度という。
 
 ■ボッシュは8,400件取得
 
 メーカー別の具体的な数字も判明している。外資系メーカーは独ボッシュが8,394件でデンソーは7,194件。仏ヴァレオは3,927件で米デルファイは1,255件となっている。しかも国家知識産権局は2000年以降、外資系自動車関連メーカーが中国での産業財産権出願を加速させていると明らかにしている。
 
 対する地場メーカーは、経営危機のデルファイ買収で名が挙がったこともある大手の万向集団でも246件。ボッシュの34分の1の取得規模となっている。万豊奥特は50件、中国万安集団はわずか21件にとどまっており、地場メーカーの劣勢が明らかになっている。
 
 ■際立つ意識の差
 
 中国汽車工業協会の陳炳炎・産業政策研究会副主任は産業財産権の登録に表れた地場系部品メーカーと外資系メーカーの差を、知的財産権に対する意識の差が原因と指摘する。地場メーカーは知財保護に熱心でないため、産業財産権の出願自体が少ないいうわけだ。
 
 研究開発(R&D)への取り組みの差を指摘する声もある。国家知識産権局は地場メーカーの売上高に対する研究開発費の比率が1.4%程度にとどまっており、しかも低下傾向にあると指摘。多国籍企業の平均5%とは大きな開きがあるとした。デルファイの研究開発費は、同社中国法人によれば毎年20億米ドル規模。同社1社で中国の地場メーカーの研究開発費の合計を上回っている状態だ。
 
 デルファイは、同社製のある部品を中国の中小メーカーが真似て生産し安く売るケースがあったものの、この模倣品は故障しやすかったため、エンジンメーカーは結局同社製の純正部品に戻ってきたと説明。中国地場メーカーは品質面で恐るるに足らないとの姿勢を示した。
 
 江蘇省無錫にある第一汽車集団の研究所によると、同社は約10年をかけて独自にディーゼルエンジン用の部品開発に成功。ただし産業化までにはまだ長い道のりが必要という。「最大の問題はエンジンメーカーが協力してくれないこと。われわれの製品が外資系メーカー製より安価で優れているにもかかわらずだ」と話す。エンジンメーカー側の地場部品メーカーに対する信用の低さがうかがえる
 
 ■発展戦略策定へ
 
 陳副主任によると、中国政府の関係当局は現在、地場部品メーカーの知財発展戦略を策定中という。地場自動車メーカーが比較的優位性を持つ商用車とエコノミーセダンの分野から手がけ、部品メーカーとエンジンメーカーによる共同開発から着手していく模様だ。
 
 具体的な内容は現段階では不明だが、地場保護の形になるのは確実で、日系を含む外資系部品メーカーの中国戦略に影響する可能性は否定できない。今後の情報には十分注意する必要がありそうだ。

(NNA) - 7月28日

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060728-00000002-nna-int