大人のお悩み教室 | 日本のお姉さん

大人のお悩み教室

 ◎● プ ロ ロ ー グ
 
 人生には、さまざまな悩みが付きもの。そして悩みに
 は、さまざまな回答が存在します。仕事にまつわる定
 番の悩みに、作家、タレント、スポーツ選手などは、
 どんな解決策を示してくれているのか。見比べながら、
 自分なりの乗り越え方を探ってみましょう。


 □■ 第7回

 ~ 転職に踏み切るべきか ~

 「自分は、このまま今の会社にいていいのだろうか…
 …」「もっと自分を生かせる仕事があるはず……」―
 ―。今日も多くのサラリーマンが、仕事に取り組む頭
 の片隅で、そんな思いをチラつかせています。転職す
 べきかどうかと聞かれたときに、いろんなジャンルの
 回答者たちは、どう答えているのでしょう。

  電気関係の会社に勤めて5ヶ月たったけど、車の修
 理工になりたいという小さい頃からの夢が捨てきれな
 いと悩む青年。作家の北方謙三さんは、「俺の自慢の
 マセラッティ」のエンジンを見事に調整してくれた年
 寄りの修理工の話をしたあとで、こう背中を押します。

      …………………………………………………………………
     〈君が本当に車の修理が好きなら、そういう修理工になっ
      て欲しいね。車を生き物として扱える修理工になってく
      れたら、俺は君に車を見てもらうよ。人間は好きな道で
      商売を選べたら、それがいちばん幸福なのだ。悩むこと
      はない。転職しなさい〉(講談社『試みの地平線』より)


  もちろん、この彼が「そういう修理工」になれる保
 障はありません。しかし、そんなことは関係なく、夢
 があるなら、追わないより追ったほうがいいと言って
 います。

  作家つながりで、続いては村上春樹さん。ハウスメ
 ーカーに勤める27歳の男性から寄せられた「フランチ
 ャイザーで修行し、5年後ぐらいに(できれば明日にで
 も)喫茶店・バー・レストランを経営したいと考えて
 います」という相談に、こう答えています。

      …………………………………………………………………
     〈いささか表現が漠然としすぎているような気がします。
      (中略)5年も修行することはありません。濃密にやれば
      一年で十分です。ですから、自分がほんとうは何をやり
      たいのかというところを、もう一回考え直してみるとい
      いと思います。もしそういうのが本気で出てこないのな
      ら、今のまま会社に勤めていたほうがいいのではないで
      しょうか〉(朝日新聞社『これだけは、村上さんに言っ
      ておこう』より)


  要約すると「そんな甘い了見でうまくいくわけない」
 ってことですね。でも実際は、何をやりたいかが「本
 気で出てこない」まま、新天地に飛び込む人も多そう
 です。

  中堅商社に勤める45歳の課長。海産物担当の経験を
 買われて、新興商社から「待遇は取締役部長。給料は
 いまの一.五倍」で誘われているが……という悩み。
 梅宮辰夫さんは「『安定』か『冒険』かの選択だね」
 と前置きしつつ、こうアドバイスします。

      …………………………………………………………………
     〈おまえさんには申し訳ないけど、このテの悩みは自分で
      決めるしかないんだね。(中略)誘われてワクワクして
      いるなら迷わず転職。もし躊躇する気持ちが少しでもあ
      るなら、いまの会社に踏みとどまったほうがいいと思う。
      人間、迷いながら船出することが、もっとも危険だと俺
      は思うね〉(双葉社『俺は人生料理人』より)


  突き放しつつもあたたかいお言葉。この本は15年ぐ
 らい前の出版ですが、この課長さんは、その後どうな
 さったんでしょうか。その新興商社は、今はどうなっ
 ているんでしょうか。……いや、大きなお世話ですね。

  最後は、転職して自分の力を試したいが、妻子のこ
 とを思うと踏み切れないという32歳の男性の悩み。プ
 ロレスラーの安生洋二さんは、こんな言葉をおくって
 います。

      …………………………………………………………………
     〈子供とかできちゃうと、動きにくくなるのは確か。(中
      略)動くには、それ相応の実力があるってことが必要な
      んだ。力さえあれば、どこでもやっていけるんだからね。
      オレたちだって、実力が認められて初めて他の団体のリ
      ングに上がることができるんだから。力があって初めて、
      他の会社に行く権利を持てる、と考えたほうがいいな。
      (中略)今の会社で、やりたいことができないって言うけ
      ど、どこ行っても、そうそう好きなことばっかりやらせ
      てもらえるわけじゃないんだしな〉(マガジンハウス
      『ターザン』1996年11月20日号「人生相談タッグマ
      ッチ」より)


  転職して力を試したいはけっこうだけど、そもそも
 試すだけの力はあるのか? と聞いているわけですね。
 試したいなら、まずは今いる「リング」で戦え、と言
 っているようにも聞こえます。それはそれで、転職す
 るのと同じぐらい勇気がいること。「いつか転職した
 いと思っている自分」であり続けるのが、いちばん楽
 チンではあります。


 □■ 石原の結論!

 「転職」という言葉は、とくに今の会社や仕事に満足
 していない人にとって、とても甘美な響きを持ってい
 ます。「転職すれば、もっと居心地がいいはず」「転
 職すれば、もっと自分の力を発揮できるはず」という
 夢をふくらませることは、一筋の希望の光であり、一
 服の清涼剤でもあると言えるでしょう。

 もちろん、どう客観的に見ても転職したほうがいい場
 合や、環境を変えることで見違えるように活躍できる
 ようになるケースも山ほどあります。ただ、難しいの
 が、単なる現実逃避や地に足が着いていない無謀な賭
 けになりがちなところ。甘美な響きに惑わされて、つ
 い細かいことに目をつむりがちです。

 それこそ、最後に決めるのは自分であり、たとえ失敗
 しても夢を追うほうが幸せという考え方もあるでしょ
 う。まあでも、「転職欲」がムクムクとふくらんでき
 たら、ひとまず、置かれている状況や自分の実力を冷
 静に見つめ直すチャンスだと思ってしまうのが得策か
 も。見つめ直そうという気が起きてこないとしたら、
 甘美な響きを味わうだけにしておくのが、「転職」と
 の上手な付き合い方かもしれません。


 □■ 石原壮一郎プロフィール

  1963年三重県生まれ。コラムニスト。雑誌編集者を経て、1993年に

『大人養成講座』(扶桑社サブカルPBで3月10日に復刊!)でデビュー。
  以来、大人モノの元祖&本家として日本の大人シーンを牽引している。
  『大人力検定』『大人力検定DX』(文藝春秋)は各メディアで話題沸騰。
  5~6年前から人生相談本や記事の収集&分類に没頭している。
  個人サイト「大人マガジン」でも大人ワールドを展開中!!

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わたしの女友達の話だが、転職した会社でも同じような悩みに

つきあたり、こんなことなら最初の職場で我慢すれば良

かったなどと言っている人が多かった。給料も年をくっても

やる仕事は大卒と同じだからと言われ、安くなった。

日本の会社は転職したら給料は下がる。

給料が下がらないなら中国人みたいに転職したらいいと思うし、

体調を崩すほど嫌な職場なら、体が大事だから転職したらいいと

思う。命の方が仕事より大事だから。

得意な仕事で楽に働けたら、いいかな。なかなか趣味と仕事が

一致している人はいない。「これが得意!」というものがある人

意外は、割りきりが必要だと思う。どんな仕事でもいいのではないか?