タジキスタンは、中央アジアでただひとつ、ペルシア系である。 | 日本のお姉さん

タジキスタンは、中央アジアでただひとつ、ペルシア系である。

イラン大統領、こんどはドシャンベを訪問、カイザル大統領も集合
 タジキスタンは西に転んだが、またまたロシアへ接近し、イランとは経済協力


 タジキスタンは、中央アジアでただひとつ、ペルシア系である。
この地域は戦乱による王朝の交代とアレキサンダー、ブハラ、モンゴルそしてソ連帝国に併呑された時代が長い。原住民は不明で、西暦7世紀頃からチュルクが流れ込み、ソグド人も入り込んで、独特のダリ語を話すようになる。ダリ語はペルシア系で、アフガニスタンの一部でも通用するが、ほかの中央アジア一帯では通用しない。

 ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、そしてトルクメニスタンは、チュルク系民族でトルコ語が基本である。
むろん、中国の新彊ウィグル自治区もチュルク系。したがって東トルキスタン独立運動の基地は殆どがトルコのイスタンブールにある。

 過激派の頭目とされるイランのアハマディネジャッド大統領は7月24日にトルクメニスタンの首都アガシバードでニヤーゾフ大統領と面談した。考えてみれば同大統領は7月15日に上海を訪問し「上海シックス」のオブザーバーとなったばかりである。

アガシバードに於けるニヤーゾフ大統領との会談のなかみは連想の域をでないが、トルクメニスタンのガスである。
 すでに同国はロシア経由のパイプラインの他に、インドへ向かうパイプラインと、アフガニスタン経由パキスタンへ向かい、西側へ輸出するプロジェクトに合意し、さらに中国とはトルクメニスタンからカザフスタンを繋ぎ、新彊ウィグルへと長大なパイプラインを計画中だ。

 ここへ割ってはいるかのようにイランが介入したのは、直接トルクメニスタンからガスのパイプラインを南下させ、イランへと繋げば、運搬距離が劇的に縮小されるからである。
 欧米メジャーばかりか、ロシアにとってもこれは商売敵となる。

 ニヤーゾフとの会談を終えたアハメディネジャッド大統領は、その足でタジキスタンの首都、ドシャンベへ向かった。
ここにアフガニスタンからカイザル大統領も集合し、三カ国の首脳会議が急遽、開催された(7月25日、26日)。
 表向き、インフラ建設、エネルギー、文化交流、麻薬対策のほかに「テロリズム対策」などが議題、とくにイランはタジキスタンとの間に十の合意文書を取り交わす予定(イタル・タス、7月20日付け)。
 イランは同じペルシア系という親しみからも特別の思い入れがあり、二億二千万ドルの水力発電所建設の援助を行う。
 この一連の中央アジア外交はイラン核武装の了解をえる布石とも考えられる。

 この動きに神経を尖らせたのは米英である。
 「テロリズムの輸出国であるイランが、テロリスト対策とは、これいかに?」とラムズフェルド米国防長官は批判した。
 アフガニスタン空爆以来、米国はタジキスタンに軍事訓練基地を一時期、租借しており、情報の拠点ともしてきた。
またロシアからの影響の脱出を試みる動きを支援してきた。

 だから英米はタジキスタンへ経済援助も約束し、いくつかのプロジェクトが稼働しかけていた。
 7月初旬にはアンドリュー王子もドシャンベを訪問した。

しかし「9・11テロ」以来、はやくも五年の歳月が流れ、あれほどロシアを嫌ったタジキスタンでさえ、背に腹は代えられない。
遅々として動かぬ西側の経済支援よりも、目先にカネをぶら下げてやってくる中国とロシア。そしてこんどはイランからの賓客である。

中央アジアイスラム国家への中国の経済支援は九億ドル、ロシアは五億ドル、ここにイランが二億ドル強というわけだから、援助合戦の様相を呈している。

ソ連帝国の崩壊後、タジキスタンの内戦は五万人の犠牲を出した。
あのころ、タジキスタンから逃げ出すロシア人が飛行場に殺到し、定員の倍を積み込んでのアエロフロート機が墜落するという悲劇もあった。
その後、ロシアの絶妙かつ巧妙な介入によって内戦を終わらせ、ソ連共産党寄りだったラフモノフが94年に大統領に選出され(99年に再選)、今日に至る。タジキスタンには数千のロシア軍が駐屯している。

 日本もそこそこの援助をしてきたものの、ロシア専門家だった秋野豊氏がタジキスタンでテロリストの犠牲になって以来、殆ど積極的な経済支援をなしていない。遠くて縁の薄い国である。
        
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一度どこかの国の

属国になったら

クセがつくのかな。