レバノン情勢 欧州軍で収拾への一歩に
イスラエル軍によるレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラへの軍事行動は、今日で開始から2週間が経過するが、事態は収拾に向かうどころか、悪化の様相すら見せている。
そうした中で、事態収拾のため、欧米26カ国でつくる軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)軍、中でも欧州軍を中心とした国際部隊をレバノンに派遣する案が浮上してきた。欧州の主要各国が強く推し、米、イスラエルも容認する姿勢を見せ始めた。
レバノン情勢はこのままでは、イスラエル軍によるシリアへの侵攻から新たな中東紛争へと拡大する懸念すらあるだけに、事態の早期収拾を目指す欧州軍の派遣構想を支持したい。
レバノンへの国際部隊の派遣は、当初、アナン国連事務総長が提案した。1978年からレバノン南部に駐留する国連レバノン暫定軍(UNIFIL)が今月末に期限を迎えることもあり、それに代わる強力な国際部隊の派遣を提案したものだ。
しかし、約2000人規模のUNIFILはこの間、レバノンのテロ組織の武装解除や停戦監視にはほとんど無力で、逆にヒズボラの勢力立て直しを助けただけだった、と米、イスラエルは批判、アナン提案には強い拒否反応を示していた。
それに今回の衝突は、そもそもヒズボラがイスラエル領内に侵入し、イスラエル兵8人を殺害、2人を拉致したことに始まる。イスラエル側は2人の無条件返還とヒズボラの武装解除と外国軍の撤退などを求めた2004年9月の国連安保理決議1559の履行こそが先決だと主張してきた。ブッシュ米大統領も、イスラエルの軍事行動を「自衛権の行使」と擁護した。
しかし、自衛権の行使は最大限の自制を伴わなければならない。同時にヒズボラを支援しているシリア、イランにも自制を求める必要がある。
米、イスラエルが欧州軍派遣の容認に傾いたのは、イスラエルも事態の泥沼化を望まず、欧州軍の実効性に期待したためだろう。今後、派遣軍の条件をめぐって安保理で激しい議論が交わされようが、合意を期待したい。
日本としても、レバノン情勢をただ傍観するのでなく、何ができるのかを考える契機としたい。