「ヒズボラの罠に引っかかった」 | 日本のお姉さん

「ヒズボラの罠に引っかかった」

レバノンは再び瓦礫の山、内戦に突入の様相だが、これは「ヒズボラの罠」?
 ヒズボラを尖兵につかうシリアとイランが背後の司令塔

 中東のパリ、美しきベイルートが灰燼に帰すのは悪夢だが、日々の現実でもある。わずか岐阜県ほどの面積に五百万の「レバノン国民」がひしめきあうが、くわえてキリスト教(カソリック、ギリシア正教、プロテスタント)にドルーズ、イスラムと。十八もの宗派が混在、これでは収拾がつくはずがなく、国土は無政府状態と言って良いだろう。

 イスラエルの空と地上からの攻撃は12日目に入る。
「あと一週間は続くだろう」と欧米軍事筋は絶望的な予想を展開している。というのも米国がイスラエルの攻撃を暫し容認し、時間稼ぎをさせているからだ。

 以前のベイルートを復興させ、美しい街に再現してみせたのがレバノンのハリリ前首相だった。辣腕家、日本にもやってきた。

 2005年に、このハリリ首相を爆弾テロで暗殺したのが、中東のテロリストたち、背後にはシリアがあり、その暗躍は地下にもぐって公然と続いていた。「ヒズボラ」というのは表向きの看板は「福祉団体」。だが実態はテロリストの軍事組織を混在させている、反イスラエル団体で、かつてのPLOの代替でもある。

 2000年にイスラエルが撤退した後、南レバノンの各地にはヒズボラなどによって地下要塞が掘られていた。このためイスラエルは空爆ではヒズボラを殲滅できないとして、地上軍を送った。

 もともとイスラエル兵二人が拉致された事件に端を発した偶発戦争の側面が強く、英紙『エコノミスト』は偶然から起きた戦争という特集を掲げた。

 フランスは折角投資したベイルートの町並みもビルも無駄になってはいけない、市場経済的にと必死である。
だからフランスは外務大臣を、急遽現場に飛ばした。
 レバノンはフランスの植民地でもないが、投資累積が違う。ハリリ前首相暗殺の葬儀にシラク大統領自らが駆けつけたのだ。

 EUの反応は生ぬるいうえ、国連も「即時停戦、話し合い」を空虚な呼びかけに終始している。
 国連軍の増強案には英国とイタリアが賛成、ドイツは外務省が反対の姿勢、メルケル首相は別案があるようだ。
イタリアもブロディ左翼政権はホンネの部分で反対、かれは反米派である。

 ドイツは意外にも「仲介役」の機能を果たせる。過去にも実績があるからでフランス外相訪問を横目にイスラエルへ急派、地下で外交的に動き出した。独仏両国の外相の訪問はいずれも、ライス米国国務長官の訪問以前である。

 しかし米国は「ヒズボラはテロリストであり、その背後にいるのはイランとシリア。問題は表層だけでは片づかない」とイスラエル寄りの立場を堅持し、イスラエルの連日の空爆に批判めいたことを言わなかった。

 かくしてイスラエル危機の対応をめぐって欧米は亀裂、言ってみれば「ヒズボラの罠に引っかかった」(前掲エコノミスト誌)
 国連は緊急展開軍をもたないため、一、二週間の趨勢を見極めて、NATO軍の派遣が国政政治の課題に浮上している。
 米国はNATO派遣を容認の方向にある。

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