【警鐘】「ショーダウン」の衝撃
丸山公紀
6月27日の産経紙で、古森義久記者名入りで、「2009年に
中国のミサイル攻撃で、新たな日中戦争が始まる」という仮想
の軍事シナリオを描いた本が、元国防総省高官2人の共著とし
て刊行された記事が掲載されていた。近未来のフィクションと
いって一笑に付してしまえばそれまではあるが、取り扱ってい
る内容が内容だけに、実際のシュミレーションをした場合には
あながち空想とはいえない真実味がある。著者の2人が国際安
全保障や中国の軍事動向を専門に研究した実績があることも説
得力がある。
この本は、「ショーダウン」(対決)と題され、6月上旬に
米国の大手出版社レグネリー社から刊行され、中国の対外戦略
と人民解放軍の実態を分析し、副題には「なぜ、中国は米国と
の戦争を求めているのか」と掲げ、中国が現在のような大規模
な軍拡を続けるのは、将来的にアジアからグローバルな覇権を
追求し、米国と対決する意図であるとしており、明確に米国の
「仮想敵国」と位置づけていることが目をひく。実際に翻訳が
出るなどして、わが国で出版されるにはかなり時間がかかるだ
ろうし、果たして当の中国では発禁処分になる可能性もあるが、
どんな内容のものか是非、拝見したいものである。
それにしても「中国と日本の戦争」の章のシナリオはかなり
刺激的であるが、一方で現在、日中間の問題がそのまま解決す
ることなく、対決のカード、分岐点となっている点は大いに考
えさせる。
記事の概要を紹介する。
(中国と日本の戦争の端緒は)
米国で大統領選挙が、中国では北京五輪が終わった2009
年の1月から始まる。米国では初の女性大統領が誕生し、
その民主党リベラルの親中志向から、中国がロシアと合同
で尖閣諸島近くで示威的な軍事大演習をして、日本の首相
が抗議を要請しても、「対中関係は重要だから、中国を刺
激してはならない」とかえって日本を抑える。
中国では北京五輪後、貧富の差が拡大、失業が急増し、
共産党政権は国内でナショナリズムをあおり、対外的には
日本への糾弾を強めて、人民の不満を抑えようとする。
「日本の首相の靖國参拝は、中国への戦争行為とみなす」
とまで宣言する。
(中国全土で反日デモを組織、日本人の技師らをスパイ容
疑として裁判にかけて)
中国はさらに、日本の首相が靖國に参拝したことをたて
に天皇の謝罪を求める一方、尖閣諸島の放棄を迫る。
2009年8月、中国は巡航ミサイルを靖國神社に撃ち込み、
破壊する。尖閣への攻撃も開始する。日本側も自衛隊が応
じ、日中間の開戦が始まる。だが、米国の女性大統領は
「米国は中国と戦争をしたくない」として日本への支援を
拒み、日本の首相に国連の調停を要請せよと説く。
結局、日本は大被害を受け、中国に降伏するという破局的な
結末に終わるというのだが、ここには日米安保が実際のところ、
米国がアフガン、イラン、イラクなど手がかかっているために、
極東の防衛ができないという、二正面作戦が機能しないという
現実を予想している。このことは以外にわが国政府、日本国民
ともに、日本が危機に陥ったときに、日米安保は機能しないの
ではないかという今日の課題を鋭く衝いている。実際、今日、
米国の新たなトランスフォーションは行われつつあるが、それ
が万全のものとは言えない。
さらにこの記事からは、中国が常に日本の首相の靖國参拝を
カードにして、中国への戦争行為と見なす、天皇に謝罪を求め
るというシナリオは、参拝をやめれば中国は日本に対して圧力
を加えないという楽観的な見方は中国にはおよそ通じるもので
はなく、常に衝突の火種にしようとする魂胆があることを見事
なまでに示唆している。
確かに中国はそれまで採用してきた「外敵は内陸に引きずり
込んでゲリラ戦で叩く」という人民戦術路線を変更し、海軍力
と空軍力を飛躍的に伸ばすことにより、新型潜水艦などは米国
の情報網をもっても追い付かないほどになっていることも事実
である。
この本は、そういった事態を起こさないためにも、米国は警
戒を怠ることなく、軍事面での対立抑止策を保持すべきだと結
んでいるということだが、一度、米国の視点からでなく、日本
の視点からどう考えるのかを国民的議論を巻き起こす上で、大
いに日本国民に読まれなければならない本となろう。
メルマガ( 国際派日本人の情報ファイル)より転載
転送歓迎
6月27日の産経紙で、古森義久記者名入りで、「2009年に
中国のミサイル攻撃で、新たな日中戦争が始まる」という仮想
の軍事シナリオを描いた本が、元国防総省高官2人の共著とし
て刊行された記事が掲載されていた。近未来のフィクションと
いって一笑に付してしまえばそれまではあるが、取り扱ってい
る内容が内容だけに、実際のシュミレーションをした場合には
あながち空想とはいえない真実味がある。著者の2人が国際安
全保障や中国の軍事動向を専門に研究した実績があることも説
得力がある。
この本は、「ショーダウン」(対決)と題され、6月上旬に
米国の大手出版社レグネリー社から刊行され、中国の対外戦略
と人民解放軍の実態を分析し、副題には「なぜ、中国は米国と
の戦争を求めているのか」と掲げ、中国が現在のような大規模
な軍拡を続けるのは、将来的にアジアからグローバルな覇権を
追求し、米国と対決する意図であるとしており、明確に米国の
「仮想敵国」と位置づけていることが目をひく。実際に翻訳が
出るなどして、わが国で出版されるにはかなり時間がかかるだ
ろうし、果たして当の中国では発禁処分になる可能性もあるが、
どんな内容のものか是非、拝見したいものである。
それにしても「中国と日本の戦争」の章のシナリオはかなり
刺激的であるが、一方で現在、日中間の問題がそのまま解決す
ることなく、対決のカード、分岐点となっている点は大いに考
えさせる。
記事の概要を紹介する。
(中国と日本の戦争の端緒は)
米国で大統領選挙が、中国では北京五輪が終わった2009
年の1月から始まる。米国では初の女性大統領が誕生し、
その民主党リベラルの親中志向から、中国がロシアと合同
で尖閣諸島近くで示威的な軍事大演習をして、日本の首相
が抗議を要請しても、「対中関係は重要だから、中国を刺
激してはならない」とかえって日本を抑える。
中国では北京五輪後、貧富の差が拡大、失業が急増し、
共産党政権は国内でナショナリズムをあおり、対外的には
日本への糾弾を強めて、人民の不満を抑えようとする。
「日本の首相の靖國参拝は、中国への戦争行為とみなす」
とまで宣言する。
(中国全土で反日デモを組織、日本人の技師らをスパイ容
疑として裁判にかけて)
中国はさらに、日本の首相が靖國に参拝したことをたて
に天皇の謝罪を求める一方、尖閣諸島の放棄を迫る。
2009年8月、中国は巡航ミサイルを靖國神社に撃ち込み、
破壊する。尖閣への攻撃も開始する。日本側も自衛隊が応
じ、日中間の開戦が始まる。だが、米国の女性大統領は
「米国は中国と戦争をしたくない」として日本への支援を
拒み、日本の首相に国連の調停を要請せよと説く。
結局、日本は大被害を受け、中国に降伏するという破局的な
結末に終わるというのだが、ここには日米安保が実際のところ、
米国がアフガン、イラン、イラクなど手がかかっているために、
極東の防衛ができないという、二正面作戦が機能しないという
現実を予想している。このことは以外にわが国政府、日本国民
ともに、日本が危機に陥ったときに、日米安保は機能しないの
ではないかという今日の課題を鋭く衝いている。実際、今日、
米国の新たなトランスフォーションは行われつつあるが、それ
が万全のものとは言えない。
さらにこの記事からは、中国が常に日本の首相の靖國参拝を
カードにして、中国への戦争行為と見なす、天皇に謝罪を求め
るというシナリオは、参拝をやめれば中国は日本に対して圧力
を加えないという楽観的な見方は中国にはおよそ通じるもので
はなく、常に衝突の火種にしようとする魂胆があることを見事
なまでに示唆している。
確かに中国はそれまで採用してきた「外敵は内陸に引きずり
込んでゲリラ戦で叩く」という人民戦術路線を変更し、海軍力
と空軍力を飛躍的に伸ばすことにより、新型潜水艦などは米国
の情報網をもっても追い付かないほどになっていることも事実
である。
この本は、そういった事態を起こさないためにも、米国は警
戒を怠ることなく、軍事面での対立抑止策を保持すべきだと結
んでいるということだが、一度、米国の視点からでなく、日本
の視点からどう考えるのかを国民的議論を巻き起こす上で、大
いに日本国民に読まれなければならない本となろう。
メルマガ( 国際派日本人の情報ファイル)より転載
転送歓迎