北朝鮮は今後またテポドンを撃ってくる。
◇体制引き締め図る
国連安保理が15日採択した対北朝鮮非難決議は、それだけで金正日(キムジョンイル)総書記を決定的な窮地に追い込むような制裁条項を含まない。だが、ミサイル発射という「賭け」の失敗を深刻化させる“効果”はありそうだ。ばん回のために、北朝鮮が再びテポドン2号発射など危険な挑発に出る可能性は相当高いと言える。
5日のミサイル発射で仮にテポドン2号が長距離を飛び、ハワイや米本土まで射程を伸ばせるような可能性を示していたら、どうなったか。
北朝鮮の対外戦略に詳しいソウルの消息筋は、米国民が動揺し「核ミサイル攻撃の恐れもある。米朝直接交渉で話をつけるべきだ」という世論が高まっただろうと語る。すると日本社会も動揺し「拉致問題での強硬姿勢を維持すべきかどうか、異論も出ただろう」と同筋は付け加えた。「北朝鮮の思うツボ」という仮想シナリオだ。
だが、実際に起きたことは、テポドン2号の無残な失敗だった。米国と日本は動揺するどころか強硬姿勢を強めた。安保理では中国やロシアのおかげで制裁は免れたが、北朝鮮のミサイル開発や他国への輸出を阻止しようという非難決議が採択された。北朝鮮の体面はひどく傷つき、決議の「実害」も小さくない。
韓国での報道によると金総書記は各国に派遣している大使らを平壌に招集し、5年ぶりの在外公館長会議を近日中に開くという。「賭けの失敗」を受けて、体制引き締めを図るねらいとみられる。
では、今後はどう動くか。北朝鮮の国連大使は「ミサイル発射演習を続ける」と断言した。「単なる強がりではない」という見方が、北朝鮮情報専門家の間では多い。韓国政府の元高官は「米国にも日本にも、前回より危険が明確に伝わる方法で、例えば日本列島を飛び越えるコースで発射するかもしれない」と指摘する。ミサイルとは別に、核兵器開発関連の動きで脅威を示すという観測も一部にある。
いずれにせよ、北朝鮮は賭けの失敗を取り返すため、再び賭けに出るだろうという分析だ。
ブッシュ政権の対北朝鮮政策に関与している人物はかつて、毎日新聞に「北朝鮮は冷戦時代、東欧の友好国から支援を得るためでさえ、脅迫という手段を用いた。それ以外の方法を知らないのだ」と語った。米政府も北朝鮮のミサイル再発射を想定して対策を準備していると見てよい。【ソウル中島哲夫】
◇適切だが第2幕の危機想定を--識者
◇小此木政夫・慶応大教授(国際政治)の話
国連安保理の分裂を回避して、北朝鮮に対して「適度の警告」を発するという意味で、今回の決議は適切だったのではないか。日本が先導した制裁決議案には中国、ロシア、韓国が強く反対したが、これは日露戦争以来の「地政学的な壁」であり、日米同盟だけで破れるものではない。
重要なのはこれからのことだ。安保理が一致した決議を出したからといって、北朝鮮のミサイル、核問題は解決しない。当面、北朝鮮は中国を含めた仲介をすべて拒否し、米国だけとの直接交渉と金融制裁の解除を求めるだろう。しかし、米国は譲歩しそうにない。今後、危機が第2幕に入り、最悪の場合は核実験を行うということまで想定しておかなければいけないのではないか。
◇平岩俊司・静岡県立大教授(現代朝鮮論)の話
国際社会が北朝鮮への非難を打ち出したのは評価できるが、その過程で各国が決して一枚岩でないこともさらけ出してしまった。中国がどこまで踏ん張ってくれるのかが分かったのは、疑心暗鬼だった北朝鮮にとって、収穫だった。
米国は今回、挑発に乗らず冷静だった。その代わり国連が対応し、今は再度ミサイルを発射しても更なる効果は得られないだろう。また、ミサイル問題協議で訪朝した中国側に金正日総書記が託したメッセージを元に今後、水面下で中朝間の協議も行われる可能性がある。当面は、6カ国協議にも復帰せず、このままぐずぐずした状態が続くだろう。ただ、今の段階で北朝鮮がミサイルや核開発をやめることはない。
毎日新聞 2006年7月17日
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/closeup/news/20060717ddn002030015000c.html
北朝鮮は今後またテポドンを撃ってくる。その内、核実験もするだろう。
日本は平時から、その備えをする必要があるということ。
何も終わっていないし、解決もしていない。
国連で皆で北朝鮮をちょっとだけ非難しただけ。