中国は金正日を愛している。
「アメリカがこの国を叩くのは、米中戦争のついでか、その後になるでし
ょう。」
(ボロボロになった覇権国家254p http://tinyurl.com/dypky )
▼金正日の願い
金正日は一体何を望んでいるのでしょうか?
自分の金と権力を守ることです。
独裁者にも比較的いい独裁者と悪い独裁者がいます。
いい独裁者は国内の秩序を維持し、経済を発展させます。
トウ小平、経済成長を成し遂げた東南アジアの指導者たち、今で言えば
プーチンやカザフスタンのナザルバエフなどはいい方の独裁者に属する
でしょう。
金正日はどうかというと、国民が飢えて痩せているのに自分ひとりだけ
ビール腹。
経済もボロボロですから、悪い方の独裁者。
こういう独裁者の目的は自分の金と権力を守ること以外にありません。
▼イラク戦争の教訓1
金正日はどうすれば、自分の金と権力を守ることができるのでしょうか?
「6カ国協議6カ国協議」といいますが、実をいうと、4カ国は問題ありません。
中国とロシアは金正日に「千代に八千代に」北朝鮮を治めて欲しい。
北は韓国懐柔に成功していますし、韓国には核もない。
日本は、平和憲法により北が一発ミサイルをぶち込むまでは動けません。
しかし、アメリカだけは別。
金正日が金と権力を守るイコール「アメリカをなんとかする」なのです。
どうすればいいのでしょうか?
一つ目の方法は、アメリカのいうことを全部素直に聞き、悪いことを全部
やめ承認してもらう。
リビアはこれでうまくいきました。
どうなんでしょうか?
ここでイラクの教訓が登場します。
フセインは、アメリカの要求を全部聞きました。
彼がアルカイダ嫌いであることは研究者の間では常識。
大量破壊兵器を持っていないことを証明するため、国連査察団に調査も
させました。
結果は「シロ」と出た。
ところがアメリカは、「48時間以内に大量破壊兵器を出さなければ攻める
」と最後通牒をつきつけ攻撃を開始しました。
結局ウソをついたのはアメリカでフセインは正直者。
後から「中東を民主化しなければ!」という理由が出てきましたが、じゃあ
サウジ・クウェート・アラブ首長国連邦はどうなんだ?ということになる。
わかったことは。
アメリカは理由があるから攻撃するのではなく、攻撃するために理由をで
っちあげるのだ、ということ。
金正日が得た教訓は「アメリカのいうことを聞いていたらなんやかんやと
イチャモンをつけられ体制を崩壊させられる。そうなったら殺されるかフセ
インのように裁かれることになる」。
ずっと北朝鮮の王子様(^▽^)王様(^▽^)で来た金正日。
いまさらつかまっちゃって、フセインのように囚人服を着せられ、刑務所
で臭い飯を食うなんて冗談じゃありません。
「アメリカのいうことを聞く」という選択肢はなくなりました。
ではどうすればいいか?
もう一つ、アメリカのいうことを無視して、本当の脅威になってしまうとい
う方法もあります。
つまり、核兵器を保有し、アメリカ本土まで届くミサイルを持つこと。
アメリカはイラクを攻めることはできても、核を持つロシアや中国を攻撃す
るのは容易ではありません。
北朝鮮も核兵器、それをアメリカまで届かせるミサイルを持つ。
これが、彼の金と権力を維持する方法なのです。
そして、アメリカに「彼はクレイジーだから、北を攻めたらマジでぶっ放す
かもしれない」と思わせておくことも重要。
金正日の行く道は、
1、アメリカまで届く核ミサイルを開発し、攻撃させない体制をつくる
あるいは
2、アメリカに、金王朝の体制を保証させる条約を結ばさせる。その場合、
大々的に国連の監視団をいれ、全部オープンにし、アメリカが後から
イチャモンをつけられないようにする。
(要は自分の金と権力が守られればいいのですから。。。)
▼イラク戦争の教訓2
それにしてもミサイルを打つのは勇気がいりますね~。
ここでイラク戦争の教訓2が登場します。
それは、「アメリカは儲かる戦争しかしない」。
アメリカがイラクを攻めた理由は、「原油の決済通貨をドルからユーロにした」
こともあります。
しか し、石油という要素もあります。
イラクの石油埋蔵量は、全世界の総埋蔵量の11%。
これはサウジについで世界2位。(BP2000年度)
一方、BPの予測によると、アメリカの石油は11年後に枯渇する。
石油は、エネルギー消費の約40%を占め、交通エネルギーの95%を占める
経済の血液。
イラク攻撃が石油と無関係であると考えるのは、むしろ不自然です。
そして、イラン。
イランは北とは全然違い、核兵器を保有せず、開発する意図があるとは一度
も言っていません。
それをアメリカが、勝手に「アメリカ最大の脅威はイランだ!」と決めている。
このイランなんですが、BP2003年度のデータによると、埋蔵量は1300億バ
レルで世界2位。(03年度のデータでイラクは3位)
金正日は何がわかったか?
「アメリカは北朝鮮と戦争しても儲からないから大丈夫だろう」と。(むしろ今
は戦争をしない方が大儲けできる)
もう一つTMDの問題。
北朝鮮がいなくなれば、アメリカは5兆円もするTMDを日本に売ることがで
きなくなります。
で、TMDというのは、実は発展途上の技術で、あまり役に立たない。
つまり、北が10発テポドンを日本に打てば、5発くらいは日本を直撃すると
いうこと。
こういう役に立たないものを、高額で売りつけようとする。
この手の商売を「エスキモーに氷を売る」といいます。
日本も財政赤字で苦しいですから、今回のような件がないとなかなか政
府も国民も納得してくれない。
金さんのおかげでアメリカはTMDと米軍再編費用で8兆円(^▽^)の儲け。
8兆円って、結構な金ですよ。
東シベリアー極東パイプラインを10本作れる。
要は、アメリカと北はビジネスパートナーの関係ですから、アメリカは動か
ないだろうと。
▼なぜ今ああいう形で???
とはいえ、あんなに大々的にミサイルをぶっ放すというのは、勇気のいるこ
とに違いありません。
まあ、日中ロ韓は動かないと予測はできるでしょうが、問題はアメリカ。
ここまでやっている北を放置すれば、北比で子犬のようにおとなしいイラン
を攻撃することが困難になります。
それでも、金正日は動いた。
相当困っていて、ギリギリまで追い詰められ、一か八かの勝負だったに
違いありません。
なぜ?
皆さんもご存知かもしれませんが。
アメリカの対北朝鮮金融制裁。
アメリカ政府は05年9月、マカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア」(BDA)
が北朝鮮の資金洗浄に使われているとし、米金融機関との取引を禁止
しました。
この発表を受け、BDAでは取り付け騒ぎが起こった。
そして、中国当局は北朝鮮関連の口座を凍結する決定をしました。
実はこの措置が案外効果があったのですね。
北朝鮮はただでさえ貧乏。
独裁国家の金(かね)は、零細企業と同じ。
零細企業って、社長のお金と会社の金の区別がないでしょう。
それと同じで、北朝鮮の金(かね)は金正日の金(かね)。
自分のお金を自由に動かせなくなった金正日。
困ってしまって、中国に泣きついた。
中国経由でアメリカに圧力をかけてもらおうと。
共同通信06年2月11日付は、金正日が1月に中国を訪問した際、胡錦
涛国家主席に、「アメリカの経済制裁が続けば、北朝鮮体制が崩壊す
る恐れがある」(アイゴオ!)と訴えたと報じています。
ところがアメリカは聞かないどころか、金融制裁をますます強めること
にした。
今年1月、アメリカのグレーザー財務副次官補(テロ資金・金融犯罪担当)
は、東京・ソウル・北京・香港・マカオを訪問。
「北朝鮮の違法行為にか関わるなよ!」と強く要請(命令)します。
2月初め、アメリカばかりではなく、今度は日本の大手銀行がBDAとの取
引を中断。
マジで困ってしまった、北朝鮮。
ちょっと疑問がわいてきますね。
「とはいえ、アメリカの制裁はマカオの銀行一行と米金融機関の取引を禁
止しただけでしょう?それが、本当に効果があるのですか?」
こういう質問は当然出てきます。
いったいBDAに入っていて動かせないお金はいくらなのでしょういか?
香港の英字新聞サウス・チャイナ・モーニングポスト06年7月9日付は、24
万ドル(2700万円)と報じています。
まあ、個人の年収レベルでみても中の上くらいでしょう。
国家レベルでみたら屁のような金です。
じゃあなんで困ってるの?
これに対する回答が、06年2月14日付ウォールストリートジャーナル(WSJ)
にでています。
同紙によると、アメリカ政府がBDAに金融制裁措置をとった後、北朝鮮の
かなり多くの貿易取引が中断されている。
つまり、マネロンに使われているBDAばかりでなく他の合法的な貿易が
止まってしまったと。
WSJによると、北朝鮮の銀行・貿易会社は取引銀行を探しているが、みつ
けるのが困難。
また、「ピョンヤンの某銀行幹部は「BDA事態は、北朝鮮経済に予測よりは
るかに大きな打撃を与えている」「資金がほぼ止まっている状況」。
中国の事業家は「現在、北朝鮮が原料代金をきちんと支払えない状況であ
るため、靴製造のためのゴムを送れない」と語っています。
さらに。
米紙フィラデルフィア・インクワイア5月24日付には、ピョンヤンのイギリス
系銀行大東信用銀行(DCB)頭取のインタビューが掲載されています。
同行のコーウィー頭取によると、DCBではアメリカばかりでなく、他の外国
銀行との取引中断や口座の閉鎖が続発しているとのこと。
どういうことかというと、アメリカはBDAと米金融機関の取引を禁止した。
ところが、他の銀行や貿易会社も、「後々アメリカ政府とのやっかいな問題
にまきこまれたくないな」ということで、北朝鮮ビジネスから手を引いてしま
った。
そして、北朝鮮への資金の流入がとまってしまった。
まあ全然関係ない例ですが、ホリエモンさんがつかまった。
すると、ライブドアのファンダメンタルやインフラは今までと同じなのに、皆
が同社の株を投売りした、って感じのイメージでしょうか。
2月16日。
金正日は、64歳の誕生日を盛大に祝いました。
マンセ~(^▽^)マンセ~(^▽^)マンセ~(^▽^)。
しかし、誕生日を祝う中央報告大会に偉大な首領様の姿は見えません。
そう、貧困は人の心も体も蝕むのです。(涙)
楊亨燮・最高人民会議常任委副委員長は演説で、「アメリカは金融制裁
などによって6カ国協議の共同声明履行を全面的に拒否するという信義
のない行動をとっている」と制裁解除を要求します。
世界一信義のない国が他国に信義を要求する。
アメリカは無視。
アイゴ。
金正日の焦燥は日ごとに募るばかり。(涙)
4月13日。
北朝鮮の金桂冠・外務次官は、アメリカがマカオの銀行に対する金融制
裁を解除すれば「6カ国協議に復帰する」と発言。
いかに北が困っていたのかが非常によくわかる言葉ですね。
アメリカはこれも無視。
困った金正日。
また、中国に泣きつきます。
中国の武大偉外務次官は4月26日、自民党の山崎拓前副総裁と会談。
「アメリカに金融制裁を緩和するよう求める」と語ります。
さらに、山崎さんに「日本も一緒にアメリカを説得してくれ」と要請。
もう十分でしょう。
今回のミサイル発射は、アメリカの金融制裁で破産寸前の北朝鮮のヤ
ケッぱちの行動であった。
目的は何か?
もちろんアメリカに金融制裁を解除してもらうこと。
▼中ロ共通の立場
中国とロシアは制裁案に反対しています。
まず全体像を見てみましょう。
中国は、過去の世界を米ソの2極体制、
現在の世界を1超(アメリカ)4強(日・中・ロ・EU)体制、
そして、将来は多極世界と見ています。
しかも、EU・日本・ロシアは成熟期あるいは衰退期に突入していて、人口
も年々減っている。
日本では、いまだにこれをいうと笑う人がいますが、中国は次の覇権国を
狙える唯一の国です。
GDPで世界4位、軍事費で世界2位。
ゴールドマンサックスの予測では、GDPは2045年にアメリカを抜く。
これは現実的なお話。
「いや、あの国は技術力でまだまだ」とか「外資がたより」とか「一人あたり
のGDPは全然低い」とか「平均月収は一万円」とかいう理由で「中国は覇
権国にならない」という人がいます。
(中国崩壊論者は1980年代初めから25年も同じことをいっていますが、こ
れは単なる中国嫌いの感情論にすぎません。
1960年代から「いや日本はそのうち崩壊するよ」といいつづけ、90年代は
じめのバブル崩壊時に「ほらね!いったとおりでしょ?」というようなもの。)
しかし、私にいわせると上記の理由は「まだまだ成長の余地があるという
ことでしょ?」となる。
中国は、日本より30年遅れているのです。
NDRCマクロ経済研究院の馬暁河さんは、中国の強みをこういいあらわし
ています。
「低賃金が中国輸出業者の大きな強みであり、同国経済の高成長は持
続可能だ」
「2004年の中国の製造業の平均賃金が時給0.87ドルだったのに対し、
アメリカは17ドル、欧州は20ドル以上だった」
「この大差を人民元の切り上げなどですぐに埋めるのは不可能だ」。
おわかりでしょうか?
賃金、中国はアメリカの20分の1。
経営者の立場でいえば、アメリカから逃げ出して中国にいくのが当然とい
うことになります。
しかし、そんなイケイケの中国にも二つの不安がある。
一つは、バブル懸念。
中国経済が過熱気味でバブル崩壊が近いという話がとても多くなってき
ました。
これはとても根拠のあることで、実際数年の間に必ず起こるでしょう。
しかし(アメリカの介入がなければ)1990年代初めの日本バブル崩壊の
ようにはならないはずです。
もう一つは、歴史を見ると覇権国と覇権国候補は大変しばしば戦争をし
ているという事実。
(例、ポルトガル対スペイン スペイン対オランダ・イギリス オランダ対
イギリス イギリス対フランス イギリス対ドイツ アメリカ対ソ連)
中国人は歴史主義者ですから当然「米中戦争」の可能性はあると見て
いるでしょう。
だから、1989年から今に至るまで軍事費を毎年二桁増やしているのです。
(他の理由が考えられますか?)
「中国は、いずれアメリカと覇権を争う日がくるだろう」と思い、準備をし
ている。
さて、ロシア。
ロシアは、もともと反米反中。
しかし、アメリカはロシアの旧植民地グルジア・ウクライナ・キルギスで革命
を起こし、第2次ロシア革命を画策している。
で、プーチンさんとKGB軍団はアメリカを憎んでいる。
中ロはいろいろな問題を抱えながらも「敵の敵は味方」ということで今は一
体化しています。
反米勢力を結集させている組織が上海協力機構(SOC)。
アメリカは、「キリスト教」「民主主義」ですが、SOCでは宗教と政治形態は問
題視されません。
構成は正式メンバーがロシア・中国・中央アジア4国。
オブザーバーはインド・イラン・パキスタン・モンゴル。
政治形態は共産党の一党独裁・独裁・なんちゃって民主主義・民主主義ま
で多様。
宗教は、キリスト教・イスラム教・無神論・仏教・ヒンズー教。
しかし、唯一の共通点は、これらの国々の共通目的が「多極世界の構築」
であるということ。
これを別の言葉でいうと「アメリカの一極世界を崩壊させる」ということ。
さて、こういう中ロ共通の立場を確認した上で北朝鮮を見ると。
この国は中ロから見ると非常に「こまったちゃん」ではある。
しかし、反米という観点で見ると明らかに「味方」。
だから、本音をいっちゃえば、北が核兵器を持ってくれても全然こまりゃあ
しないのです。
だって、その核兵器を誰に使うの?
もちろん、日本かアメリカでしょう。(韓国には、自国(北)の放射能被害も
大きいですから、使えない)
金や武器をめぐんでくれている中ロにぶっ放す可能性はゼロ。
だから両国とも制裁決議案に反対。
▼ロシアの立場
とはいえ、中ロで明らかに温度差があります。
中国は積極的に反対で、ロシアは議論にも加わっていないような状況。
皆さんも北朝鮮問題について、ロシアのリアクションがほとんど報じられて
いないことに気づくでしょう。
モスクワに住んでいても、北朝鮮のニュースは発射したその日以後ほとん
ど出てきません。
これってなんででしょうか?
プーチンさんは7月6日、北朝鮮のミサイル発射について「常識を圧倒する
ような感情的な反応を引き起こしてはならない」と語ります。
もっとわかりやすくいうと、「まあまあ落ち着いて。そんなにさわがないでく
ださい」と。
プーチンさんはまた、北朝鮮もミサイル発射に「失望した」といいましたが、
「ロシアの専門家らは、北朝鮮が長距離ミサイルを発射できるようになる
のはまだ先の話とみている」。
つまり「心配する必要はないですよ」といっている。
「われわれの専門家によれば、北朝鮮が保有するミサイルの射程を10
00キロから3500キロもしくは6000キロに伸ばすためには、それらのミ
サイルを大気圏外に600キロ打ち上げる必要があり、北朝鮮の技術開
発の水準を考慮すれば、少なくとも予見可能な将来にそうしたことは不
可能だ」と説明しました。
日本には、「ミサイルはロシアの近くに落ちた。ロシアも脅威に感じてい
るはずだ!」とトンチンカンな説明をしている専門家がいます。
しかし、北朝鮮は反米の同士であり、ロシアの脅威ではないことがわか
れば、大騒ぎする必要のないことが理解できるでしょう。
では、なぜロシアは中国みたく北を積極的に守らないのか?
これはロシアが一応「民主主義」を目指しているから。
中国は共産党の一党独裁を認めています。
しかし、ロシアは欧米から「独裁だ!」と文句をいわれつつも、「いや!俺
らは民主主義だ」といっている。
そして、努力の真価が問われるのが7月15日からのペテルブルグG8。
世界から、大国の首脳が結集する。
その時に、「ロシアは北朝鮮を守っている。やっぱ独裁じゃないか!」とい
われるのがうざったい。
だから、ノーリアクションをつづけているのです。
▼中国
中国はもっと積極的に北を保護しなければならない立場。
そして事実そうしています。
なぜか?
これは、朝鮮半島がアメリカを中心に統一されるか、中国の植民地と化す
かというお話。
現状を見てみましょう。
金正日は中国のいうことを聞いている?
それともアメリカのいうことを聞いている?
ハイ!中国のいうことをきいていますね。(^▽^)
次。
韓国はアメリカのいうことを聞いている?
それとも北朝鮮のいうことを聞いている?
昔はアメリカのいうことばかり聞いていましたが、最近は中国と北朝鮮のい
うことを聞いていますね。
これを別の言葉でいうと、中国の朝鮮半島植民地化政策は着実に実を結
びつつある。
ところで、金王朝が崩壊したら、統一朝鮮はアメリカの傀儡民主主義国家
になる可能性は高いですか?
これは高いでしょう。
金王朝崩壊後、米中が朝鮮半島を取り合う局面が出てきたとします。
しかし、中国の軍事費はまだアメリカの5分の1。
勝てる見込みはない。
こういうことです。
どうして中国は金さんを保護しなければいけないのか。
ちなみに戦争についてですが。
時は中国の味方。
中国は、外貨保有におけるユーロの割合を増加させるとか、米国債を大
量保有(3100億ドル=34兆円)するとかして、カードを蓄積していく。
そして、たくみに時間をかせぐ。
時は中国の味方。
アメリカはボロボロ、戦争をしないで時間を稼げば勝手に崩壊していきます。
ですから、中国はアメリカと協議しながら、北朝鮮の説得につとめている
のです。
そんな中国のリアクションを振り返ってみましょう。
7月6日。
胡錦濤さんは、ブッシュさんと北朝鮮のミサイル発射問題について電話
協議。
胡さんは「関係各国が連携、話し合いを維持すべきだ」と強調し、6カ国
協議の早期再開を呼びかけました。
同じく6日。
中国王光亜国連大使は、制裁決議ではなく法的拘束力のない議長声
明案を提示、決議案の早期採択を目指す日本、アメリカ、イギリスと対立。
議長声明ってことは、「やるやらないは各国の自由に任せます」ということ。
別の言葉で「どっちでもいい」
7日。
アメリカ・クリストファー・ヒル国務次官補(東アジア・太平洋担当)が、北京
で中国の武大偉外務次官らと会談。
次官補は、「中国は、ミサイル発射が中国の利益に反することだと明確に
理解している」
「核問題をめぐる6か国協議に北朝鮮を早期に復帰させ、協議再開を目指
すことで一致した」と説明。
よくわっかんない。(^▽^)
これって、ミサイルを発射する前と同じ状況、つまり現状維持ってことでしょ?
同じく7日。
日本、国連安全保障理事会非公開協議で、「対北制裁決議案の提出」を表
明。
これに対して中国は「安保理の団結が破壊された!」と日本を強く批判。
北ではなく日本の方が悪いそうです。(涙)
7月9日。
新華社電によると、中国の李肇星外相が、国連安保理理事国15カ国のうち
11カ国外相と個別に電話で協議。
制裁反対の立場を説明する。
10日。
胡錦涛と中国首脳は、「中朝友好協力互助条約」の締結45周年を記念し、
金正日らに祝電を送る。
祝電は両国関係の発展を積極的に評価。
また
「両国の友好を強固なものにするよう今後も努力することは、政府や政
権党の一貫した立場である」
「新しい時代の要求に見合うよう様々な分野で交流や協力を深化させ、
両国の友好・協力関係を前進させていく」
と明言している。
あたかも「何もなかったがごとし」であります。
10日。
国連安保理、北朝鮮制裁決議案の採決延期を決定。
理由は、中国の武大偉外務次官が平壌入りしたこと。
中国が日米両国に、北朝鮮との交渉中は採決しないよう強く要請したこと。
事実は雄弁であります。
中国がいかに金正日を愛しているかが、ご理解いただけたことでしょう。
発行者 北野 幸伯
Copyright (C) RPE Journal All Rights Reserved. 358
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ょう。」
(ボロボロになった覇権国家254p http://tinyurl.com/dypky )
▼金正日の願い
金正日は一体何を望んでいるのでしょうか?
自分の金と権力を守ることです。
独裁者にも比較的いい独裁者と悪い独裁者がいます。
いい独裁者は国内の秩序を維持し、経済を発展させます。
トウ小平、経済成長を成し遂げた東南アジアの指導者たち、今で言えば
プーチンやカザフスタンのナザルバエフなどはいい方の独裁者に属する
でしょう。
金正日はどうかというと、国民が飢えて痩せているのに自分ひとりだけ
ビール腹。
経済もボロボロですから、悪い方の独裁者。
こういう独裁者の目的は自分の金と権力を守ること以外にありません。
▼イラク戦争の教訓1
金正日はどうすれば、自分の金と権力を守ることができるのでしょうか?
「6カ国協議6カ国協議」といいますが、実をいうと、4カ国は問題ありません。
中国とロシアは金正日に「千代に八千代に」北朝鮮を治めて欲しい。
北は韓国懐柔に成功していますし、韓国には核もない。
日本は、平和憲法により北が一発ミサイルをぶち込むまでは動けません。
しかし、アメリカだけは別。
金正日が金と権力を守るイコール「アメリカをなんとかする」なのです。
どうすればいいのでしょうか?
一つ目の方法は、アメリカのいうことを全部素直に聞き、悪いことを全部
やめ承認してもらう。
リビアはこれでうまくいきました。
どうなんでしょうか?
ここでイラクの教訓が登場します。
フセインは、アメリカの要求を全部聞きました。
彼がアルカイダ嫌いであることは研究者の間では常識。
大量破壊兵器を持っていないことを証明するため、国連査察団に調査も
させました。
結果は「シロ」と出た。
ところがアメリカは、「48時間以内に大量破壊兵器を出さなければ攻める
」と最後通牒をつきつけ攻撃を開始しました。
結局ウソをついたのはアメリカでフセインは正直者。
後から「中東を民主化しなければ!」という理由が出てきましたが、じゃあ
サウジ・クウェート・アラブ首長国連邦はどうなんだ?ということになる。
わかったことは。
アメリカは理由があるから攻撃するのではなく、攻撃するために理由をで
っちあげるのだ、ということ。
金正日が得た教訓は「アメリカのいうことを聞いていたらなんやかんやと
イチャモンをつけられ体制を崩壊させられる。そうなったら殺されるかフセ
インのように裁かれることになる」。
ずっと北朝鮮の王子様(^▽^)王様(^▽^)で来た金正日。
いまさらつかまっちゃって、フセインのように囚人服を着せられ、刑務所
で臭い飯を食うなんて冗談じゃありません。
「アメリカのいうことを聞く」という選択肢はなくなりました。
ではどうすればいいか?
もう一つ、アメリカのいうことを無視して、本当の脅威になってしまうとい
う方法もあります。
つまり、核兵器を保有し、アメリカ本土まで届くミサイルを持つこと。
アメリカはイラクを攻めることはできても、核を持つロシアや中国を攻撃す
るのは容易ではありません。
北朝鮮も核兵器、それをアメリカまで届かせるミサイルを持つ。
これが、彼の金と権力を維持する方法なのです。
そして、アメリカに「彼はクレイジーだから、北を攻めたらマジでぶっ放す
かもしれない」と思わせておくことも重要。
金正日の行く道は、
1、アメリカまで届く核ミサイルを開発し、攻撃させない体制をつくる
あるいは
2、アメリカに、金王朝の体制を保証させる条約を結ばさせる。その場合、
大々的に国連の監視団をいれ、全部オープンにし、アメリカが後から
イチャモンをつけられないようにする。
(要は自分の金と権力が守られればいいのですから。。。)
▼イラク戦争の教訓2
それにしてもミサイルを打つのは勇気がいりますね~。
ここでイラク戦争の教訓2が登場します。
それは、「アメリカは儲かる戦争しかしない」。
アメリカがイラクを攻めた理由は、「原油の決済通貨をドルからユーロにした」
こともあります。
しか し、石油という要素もあります。
イラクの石油埋蔵量は、全世界の総埋蔵量の11%。
これはサウジについで世界2位。(BP2000年度)
一方、BPの予測によると、アメリカの石油は11年後に枯渇する。
石油は、エネルギー消費の約40%を占め、交通エネルギーの95%を占める
経済の血液。
イラク攻撃が石油と無関係であると考えるのは、むしろ不自然です。
そして、イラン。
イランは北とは全然違い、核兵器を保有せず、開発する意図があるとは一度
も言っていません。
それをアメリカが、勝手に「アメリカ最大の脅威はイランだ!」と決めている。
このイランなんですが、BP2003年度のデータによると、埋蔵量は1300億バ
レルで世界2位。(03年度のデータでイラクは3位)
金正日は何がわかったか?
「アメリカは北朝鮮と戦争しても儲からないから大丈夫だろう」と。(むしろ今
は戦争をしない方が大儲けできる)
もう一つTMDの問題。
北朝鮮がいなくなれば、アメリカは5兆円もするTMDを日本に売ることがで
きなくなります。
で、TMDというのは、実は発展途上の技術で、あまり役に立たない。
つまり、北が10発テポドンを日本に打てば、5発くらいは日本を直撃すると
いうこと。
こういう役に立たないものを、高額で売りつけようとする。
この手の商売を「エスキモーに氷を売る」といいます。
日本も財政赤字で苦しいですから、今回のような件がないとなかなか政
府も国民も納得してくれない。
金さんのおかげでアメリカはTMDと米軍再編費用で8兆円(^▽^)の儲け。
8兆円って、結構な金ですよ。
東シベリアー極東パイプラインを10本作れる。
要は、アメリカと北はビジネスパートナーの関係ですから、アメリカは動か
ないだろうと。
▼なぜ今ああいう形で???
とはいえ、あんなに大々的にミサイルをぶっ放すというのは、勇気のいるこ
とに違いありません。
まあ、日中ロ韓は動かないと予測はできるでしょうが、問題はアメリカ。
ここまでやっている北を放置すれば、北比で子犬のようにおとなしいイラン
を攻撃することが困難になります。
それでも、金正日は動いた。
相当困っていて、ギリギリまで追い詰められ、一か八かの勝負だったに
違いありません。
なぜ?
皆さんもご存知かもしれませんが。
アメリカの対北朝鮮金融制裁。
アメリカ政府は05年9月、マカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア」(BDA)
が北朝鮮の資金洗浄に使われているとし、米金融機関との取引を禁止
しました。
この発表を受け、BDAでは取り付け騒ぎが起こった。
そして、中国当局は北朝鮮関連の口座を凍結する決定をしました。
実はこの措置が案外効果があったのですね。
北朝鮮はただでさえ貧乏。
独裁国家の金(かね)は、零細企業と同じ。
零細企業って、社長のお金と会社の金の区別がないでしょう。
それと同じで、北朝鮮の金(かね)は金正日の金(かね)。
自分のお金を自由に動かせなくなった金正日。
困ってしまって、中国に泣きついた。
中国経由でアメリカに圧力をかけてもらおうと。
共同通信06年2月11日付は、金正日が1月に中国を訪問した際、胡錦
涛国家主席に、「アメリカの経済制裁が続けば、北朝鮮体制が崩壊す
る恐れがある」(アイゴオ!)と訴えたと報じています。
ところがアメリカは聞かないどころか、金融制裁をますます強めること
にした。
今年1月、アメリカのグレーザー財務副次官補(テロ資金・金融犯罪担当)
は、東京・ソウル・北京・香港・マカオを訪問。
「北朝鮮の違法行為にか関わるなよ!」と強く要請(命令)します。
2月初め、アメリカばかりではなく、今度は日本の大手銀行がBDAとの取
引を中断。
マジで困ってしまった、北朝鮮。
ちょっと疑問がわいてきますね。
「とはいえ、アメリカの制裁はマカオの銀行一行と米金融機関の取引を禁
止しただけでしょう?それが、本当に効果があるのですか?」
こういう質問は当然出てきます。
いったいBDAに入っていて動かせないお金はいくらなのでしょういか?
香港の英字新聞サウス・チャイナ・モーニングポスト06年7月9日付は、24
万ドル(2700万円)と報じています。
まあ、個人の年収レベルでみても中の上くらいでしょう。
国家レベルでみたら屁のような金です。
じゃあなんで困ってるの?
これに対する回答が、06年2月14日付ウォールストリートジャーナル(WSJ)
にでています。
同紙によると、アメリカ政府がBDAに金融制裁措置をとった後、北朝鮮の
かなり多くの貿易取引が中断されている。
つまり、マネロンに使われているBDAばかりでなく他の合法的な貿易が
止まってしまったと。
WSJによると、北朝鮮の銀行・貿易会社は取引銀行を探しているが、みつ
けるのが困難。
また、「ピョンヤンの某銀行幹部は「BDA事態は、北朝鮮経済に予測よりは
るかに大きな打撃を与えている」「資金がほぼ止まっている状況」。
中国の事業家は「現在、北朝鮮が原料代金をきちんと支払えない状況であ
るため、靴製造のためのゴムを送れない」と語っています。
さらに。
米紙フィラデルフィア・インクワイア5月24日付には、ピョンヤンのイギリス
系銀行大東信用銀行(DCB)頭取のインタビューが掲載されています。
同行のコーウィー頭取によると、DCBではアメリカばかりでなく、他の外国
銀行との取引中断や口座の閉鎖が続発しているとのこと。
どういうことかというと、アメリカはBDAと米金融機関の取引を禁止した。
ところが、他の銀行や貿易会社も、「後々アメリカ政府とのやっかいな問題
にまきこまれたくないな」ということで、北朝鮮ビジネスから手を引いてしま
った。
そして、北朝鮮への資金の流入がとまってしまった。
まあ全然関係ない例ですが、ホリエモンさんがつかまった。
すると、ライブドアのファンダメンタルやインフラは今までと同じなのに、皆
が同社の株を投売りした、って感じのイメージでしょうか。
2月16日。
金正日は、64歳の誕生日を盛大に祝いました。
マンセ~(^▽^)マンセ~(^▽^)マンセ~(^▽^)。
しかし、誕生日を祝う中央報告大会に偉大な首領様の姿は見えません。
そう、貧困は人の心も体も蝕むのです。(涙)
楊亨燮・最高人民会議常任委副委員長は演説で、「アメリカは金融制裁
などによって6カ国協議の共同声明履行を全面的に拒否するという信義
のない行動をとっている」と制裁解除を要求します。
世界一信義のない国が他国に信義を要求する。
アメリカは無視。
アイゴ。
金正日の焦燥は日ごとに募るばかり。(涙)
4月13日。
北朝鮮の金桂冠・外務次官は、アメリカがマカオの銀行に対する金融制
裁を解除すれば「6カ国協議に復帰する」と発言。
いかに北が困っていたのかが非常によくわかる言葉ですね。
アメリカはこれも無視。
困った金正日。
また、中国に泣きつきます。
中国の武大偉外務次官は4月26日、自民党の山崎拓前副総裁と会談。
「アメリカに金融制裁を緩和するよう求める」と語ります。
さらに、山崎さんに「日本も一緒にアメリカを説得してくれ」と要請。
もう十分でしょう。
今回のミサイル発射は、アメリカの金融制裁で破産寸前の北朝鮮のヤ
ケッぱちの行動であった。
目的は何か?
もちろんアメリカに金融制裁を解除してもらうこと。
▼中ロ共通の立場
中国とロシアは制裁案に反対しています。
まず全体像を見てみましょう。
中国は、過去の世界を米ソの2極体制、
現在の世界を1超(アメリカ)4強(日・中・ロ・EU)体制、
そして、将来は多極世界と見ています。
しかも、EU・日本・ロシアは成熟期あるいは衰退期に突入していて、人口
も年々減っている。
日本では、いまだにこれをいうと笑う人がいますが、中国は次の覇権国を
狙える唯一の国です。
GDPで世界4位、軍事費で世界2位。
ゴールドマンサックスの予測では、GDPは2045年にアメリカを抜く。
これは現実的なお話。
「いや、あの国は技術力でまだまだ」とか「外資がたより」とか「一人あたり
のGDPは全然低い」とか「平均月収は一万円」とかいう理由で「中国は覇
権国にならない」という人がいます。
(中国崩壊論者は1980年代初めから25年も同じことをいっていますが、こ
れは単なる中国嫌いの感情論にすぎません。
1960年代から「いや日本はそのうち崩壊するよ」といいつづけ、90年代は
じめのバブル崩壊時に「ほらね!いったとおりでしょ?」というようなもの。)
しかし、私にいわせると上記の理由は「まだまだ成長の余地があるという
ことでしょ?」となる。
中国は、日本より30年遅れているのです。
NDRCマクロ経済研究院の馬暁河さんは、中国の強みをこういいあらわし
ています。
「低賃金が中国輸出業者の大きな強みであり、同国経済の高成長は持
続可能だ」
「2004年の中国の製造業の平均賃金が時給0.87ドルだったのに対し、
アメリカは17ドル、欧州は20ドル以上だった」
「この大差を人民元の切り上げなどですぐに埋めるのは不可能だ」。
おわかりでしょうか?
賃金、中国はアメリカの20分の1。
経営者の立場でいえば、アメリカから逃げ出して中国にいくのが当然とい
うことになります。
しかし、そんなイケイケの中国にも二つの不安がある。
一つは、バブル懸念。
中国経済が過熱気味でバブル崩壊が近いという話がとても多くなってき
ました。
これはとても根拠のあることで、実際数年の間に必ず起こるでしょう。
しかし(アメリカの介入がなければ)1990年代初めの日本バブル崩壊の
ようにはならないはずです。
もう一つは、歴史を見ると覇権国と覇権国候補は大変しばしば戦争をし
ているという事実。
(例、ポルトガル対スペイン スペイン対オランダ・イギリス オランダ対
イギリス イギリス対フランス イギリス対ドイツ アメリカ対ソ連)
中国人は歴史主義者ですから当然「米中戦争」の可能性はあると見て
いるでしょう。
だから、1989年から今に至るまで軍事費を毎年二桁増やしているのです。
(他の理由が考えられますか?)
「中国は、いずれアメリカと覇権を争う日がくるだろう」と思い、準備をし
ている。
さて、ロシア。
ロシアは、もともと反米反中。
しかし、アメリカはロシアの旧植民地グルジア・ウクライナ・キルギスで革命
を起こし、第2次ロシア革命を画策している。
で、プーチンさんとKGB軍団はアメリカを憎んでいる。
中ロはいろいろな問題を抱えながらも「敵の敵は味方」ということで今は一
体化しています。
反米勢力を結集させている組織が上海協力機構(SOC)。
アメリカは、「キリスト教」「民主主義」ですが、SOCでは宗教と政治形態は問
題視されません。
構成は正式メンバーがロシア・中国・中央アジア4国。
オブザーバーはインド・イラン・パキスタン・モンゴル。
政治形態は共産党の一党独裁・独裁・なんちゃって民主主義・民主主義ま
で多様。
宗教は、キリスト教・イスラム教・無神論・仏教・ヒンズー教。
しかし、唯一の共通点は、これらの国々の共通目的が「多極世界の構築」
であるということ。
これを別の言葉でいうと「アメリカの一極世界を崩壊させる」ということ。
さて、こういう中ロ共通の立場を確認した上で北朝鮮を見ると。
この国は中ロから見ると非常に「こまったちゃん」ではある。
しかし、反米という観点で見ると明らかに「味方」。
だから、本音をいっちゃえば、北が核兵器を持ってくれても全然こまりゃあ
しないのです。
だって、その核兵器を誰に使うの?
もちろん、日本かアメリカでしょう。(韓国には、自国(北)の放射能被害も
大きいですから、使えない)
金や武器をめぐんでくれている中ロにぶっ放す可能性はゼロ。
だから両国とも制裁決議案に反対。
▼ロシアの立場
とはいえ、中ロで明らかに温度差があります。
中国は積極的に反対で、ロシアは議論にも加わっていないような状況。
皆さんも北朝鮮問題について、ロシアのリアクションがほとんど報じられて
いないことに気づくでしょう。
モスクワに住んでいても、北朝鮮のニュースは発射したその日以後ほとん
ど出てきません。
これってなんででしょうか?
プーチンさんは7月6日、北朝鮮のミサイル発射について「常識を圧倒する
ような感情的な反応を引き起こしてはならない」と語ります。
もっとわかりやすくいうと、「まあまあ落ち着いて。そんなにさわがないでく
ださい」と。
プーチンさんはまた、北朝鮮もミサイル発射に「失望した」といいましたが、
「ロシアの専門家らは、北朝鮮が長距離ミサイルを発射できるようになる
のはまだ先の話とみている」。
つまり「心配する必要はないですよ」といっている。
「われわれの専門家によれば、北朝鮮が保有するミサイルの射程を10
00キロから3500キロもしくは6000キロに伸ばすためには、それらのミ
サイルを大気圏外に600キロ打ち上げる必要があり、北朝鮮の技術開
発の水準を考慮すれば、少なくとも予見可能な将来にそうしたことは不
可能だ」と説明しました。
日本には、「ミサイルはロシアの近くに落ちた。ロシアも脅威に感じてい
るはずだ!」とトンチンカンな説明をしている専門家がいます。
しかし、北朝鮮は反米の同士であり、ロシアの脅威ではないことがわか
れば、大騒ぎする必要のないことが理解できるでしょう。
では、なぜロシアは中国みたく北を積極的に守らないのか?
これはロシアが一応「民主主義」を目指しているから。
中国は共産党の一党独裁を認めています。
しかし、ロシアは欧米から「独裁だ!」と文句をいわれつつも、「いや!俺
らは民主主義だ」といっている。
そして、努力の真価が問われるのが7月15日からのペテルブルグG8。
世界から、大国の首脳が結集する。
その時に、「ロシアは北朝鮮を守っている。やっぱ独裁じゃないか!」とい
われるのがうざったい。
だから、ノーリアクションをつづけているのです。
▼中国
中国はもっと積極的に北を保護しなければならない立場。
そして事実そうしています。
なぜか?
これは、朝鮮半島がアメリカを中心に統一されるか、中国の植民地と化す
かというお話。
現状を見てみましょう。
金正日は中国のいうことを聞いている?
それともアメリカのいうことを聞いている?
ハイ!中国のいうことをきいていますね。(^▽^)
次。
韓国はアメリカのいうことを聞いている?
それとも北朝鮮のいうことを聞いている?
昔はアメリカのいうことばかり聞いていましたが、最近は中国と北朝鮮のい
うことを聞いていますね。
これを別の言葉でいうと、中国の朝鮮半島植民地化政策は着実に実を結
びつつある。
ところで、金王朝が崩壊したら、統一朝鮮はアメリカの傀儡民主主義国家
になる可能性は高いですか?
これは高いでしょう。
金王朝崩壊後、米中が朝鮮半島を取り合う局面が出てきたとします。
しかし、中国の軍事費はまだアメリカの5分の1。
勝てる見込みはない。
こういうことです。
どうして中国は金さんを保護しなければいけないのか。
ちなみに戦争についてですが。
時は中国の味方。
中国は、外貨保有におけるユーロの割合を増加させるとか、米国債を大
量保有(3100億ドル=34兆円)するとかして、カードを蓄積していく。
そして、たくみに時間をかせぐ。
時は中国の味方。
アメリカはボロボロ、戦争をしないで時間を稼げば勝手に崩壊していきます。
ですから、中国はアメリカと協議しながら、北朝鮮の説得につとめている
のです。
そんな中国のリアクションを振り返ってみましょう。
7月6日。
胡錦濤さんは、ブッシュさんと北朝鮮のミサイル発射問題について電話
協議。
胡さんは「関係各国が連携、話し合いを維持すべきだ」と強調し、6カ国
協議の早期再開を呼びかけました。
同じく6日。
中国王光亜国連大使は、制裁決議ではなく法的拘束力のない議長声
明案を提示、決議案の早期採択を目指す日本、アメリカ、イギリスと対立。
議長声明ってことは、「やるやらないは各国の自由に任せます」ということ。
別の言葉で「どっちでもいい」
7日。
アメリカ・クリストファー・ヒル国務次官補(東アジア・太平洋担当)が、北京
で中国の武大偉外務次官らと会談。
次官補は、「中国は、ミサイル発射が中国の利益に反することだと明確に
理解している」
「核問題をめぐる6か国協議に北朝鮮を早期に復帰させ、協議再開を目指
すことで一致した」と説明。
よくわっかんない。(^▽^)
これって、ミサイルを発射する前と同じ状況、つまり現状維持ってことでしょ?
同じく7日。
日本、国連安全保障理事会非公開協議で、「対北制裁決議案の提出」を表
明。
これに対して中国は「安保理の団結が破壊された!」と日本を強く批判。
北ではなく日本の方が悪いそうです。(涙)
7月9日。
新華社電によると、中国の李肇星外相が、国連安保理理事国15カ国のうち
11カ国外相と個別に電話で協議。
制裁反対の立場を説明する。
10日。
胡錦涛と中国首脳は、「中朝友好協力互助条約」の締結45周年を記念し、
金正日らに祝電を送る。
祝電は両国関係の発展を積極的に評価。
また
「両国の友好を強固なものにするよう今後も努力することは、政府や政
権党の一貫した立場である」
「新しい時代の要求に見合うよう様々な分野で交流や協力を深化させ、
両国の友好・協力関係を前進させていく」
と明言している。
あたかも「何もなかったがごとし」であります。
10日。
国連安保理、北朝鮮制裁決議案の採決延期を決定。
理由は、中国の武大偉外務次官が平壌入りしたこと。
中国が日米両国に、北朝鮮との交渉中は採決しないよう強く要請したこと。
事実は雄弁であります。
中国がいかに金正日を愛しているかが、ご理解いただけたことでしょう。
発行者 北野 幸伯
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