中国の銀行の実態。
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成18年(2006年)6月20日(火曜日)
通巻第1489号
中国から”蒸発”した4200名の幹部と500億ドル(6兆円)!
ラスベガスでも大金を賭けて負けた腐敗分子らの罪状が明らかに
賄賂、収賄、不正行為はなにも中国共産党幹部連中ばかりではない。
テクノクラート、外交官、軍人幹部の例外なく、海外へ逃亡したままの中国人が4200名(これは明らかになっている員数のみ)。
予備軍と潜在的犯罪を含めると一万人近いのではないか。
そんなことより中国から「蒸発」した金は米ドル換算で500億ドル(ちなみに05年、外国企業の対中国投資総額が606億ドル)。これは公式数字であって、推定では、1000億ドルをかるく突破している、と言われる。
『インタナショナル・ヘラルド・トリビューン』が中国銀行の元幹部の金融犯罪を、いまごろ暴いている(06年6月19日付け)。
この記事のなかで新事実がわかった。
下記に述べる経済犯罪の主犯格、許超凡は、「01年10月2日、バンクーバーからチャーター機でラスベガス入りし、操縦士にぽんと1200ドルのチップを渡し、博打場で合計236萬8400ドルをすった」(前掲ヘラルド紙)。
中国の戦後史始まって以来の巨額犯罪といわれた、この許らの犯行は2001年10月に広東省で発覚した。
中国銀行の広東省開平支店の支店長だった許超凡と許国俊の兄弟、その妻および支店長歴任者・余振東の五人が米ドルで四億八千五百万ドルを香港に登記させていた架空会社に送金し、巧妙な手口で米国へ資金を移動し、その後逃亡し、史上空前の被害額となった(その後、この額面はあっさりと更新されていますがね。。。。。)。
この逃亡犯一味は米国で根こそぎ逮捕されていた事実をヘラルド紙が報じたのだ。
米司法省はことし一月末になって中国銀行元幹部二人と家族を「資金洗浄」容疑で提訴した。許兄弟らはマネー・ロンダリング容疑のほかに不法入国、米国国籍違法取得などの容疑で米国で起訴された。
▲この程度で驚いては中国経済の本質を見誤るだろう。
金融犯罪は陸続として続く。
中国銀行黒龍江省支部・双鴨山四馬路支店の前支店長・胡偉東は地元の企業経営者らと共謀して過去二年間に架空の手形を濫発し、9億1460萬人民元を横領していた。
2005年にも同行のハルビン河松街支店長・高山が十数億元を横領した事件があった。
胡偉東の偽造した架空取引の手形のうち、三億二千五百万元は、遠く山東省の「中国建設銀行」と「中国農業銀行」で現金化され、それから博打場的な先物商品取引にまわされて、天文学的損失を出した。
中国の四大国商業銀行の支店長ら42人が集団で海外に逃亡する前代未聞の大事件が発覚したのは05年10月だった。
持ち出された被害額は人民元で740億元と米ドルが22億3000萬ドル(邦貨にして合計1兆6000億円強)。
かれらは香港へ視察旅行を目的にバラバラで出国し、そのまま海外へ渡航し姿を消した。
行き先はオーストラリア、ニュージーランド、カナダ、アメリカなど。現地では家族が先に着いて待機していた。
共産党中央はこの事件を極めて深刻に受け止め、国務院は特別チームを組織して捜査を開始した。
93年当時、中央銀行である人民銀行総裁を副首相だった朱鎔基が兼ねていた。
たが朱のような豪腕家が銀行システムの改善と掲げて人事を刷新しても、腐敗は潜行するだけで手口が巧妙になり、まったく止むことはなかった。
銀行界で、今日も生き残っているのは天津市市長の戴相竜(前人民銀行総裁)、中国人民銀行の新総裁の周小川、香港中銀の広北の三人だけとなった。
国家審計署の内部報告書は「全国金融業界の不良債権を審査したものの正確な数字の提示は困難である。各金融機関の会計が非常に不透明で資金の不正流出がやまず、まして政府機関の裏口座の残高が上昇している」と記されていた。
嗚呼、これが経済繁栄の心臓部をにぎる中国のバンカーの生態だとは!
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