アモイ密輸
宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成18年(2006年)6月27日(火曜日)
通巻第1496号
“遠華事件”の主犯・頼昌星。カナダは近く北京へ送還か?
最高軍幹部、政治局常務委員会幹部を巻き込んだスキャンダルが新展開の様相
通称「アモイ密輸」という事件があった。
福建省党幹部、軍、警察、税関を巻き込んでの一大密輸スキャンダルで、福建省書記だった賈慶林とその妻・林幼芳(当時、福建省外国貿易局党書記)が黒幕と言われた。
高官がグルとなって大がかりな密輸を黙認し(一説に軍艦が密輸船を擁護した)、その中心にいた頼昌星の企業「遠華集団」が大儲け、一説に当時の輸入石油の25%は、このルートを通じていたとまで噂された。
なにしろアモイを巣窟にした頼昌星は、言ってみればチンピラ。よほどの権力者の後ろ盾がなければ、これほど大胆な犯罪を展開できないだろう。頼は多くの高官、軍人に「賄賂」を贈り、愛人宅を斡旋し、最後には妾らも斡旋したと逃亡先のカナダで語った。
多くの暴露本が直後から香港などで出版された。
また香港から多くのジャーナリストがカナダへ押しかけ、逃亡先やら監獄にまで頼を追いかけての独占インタビューを掲載した。頼はカナダで起訴され、七年間に亘って、その身柄を拘束されていた。
当時から「黒幕」といわれた賈慶林は、しかしながらその後も大出世を遂げて、いまの胡錦濤政権のナンバー4(政治局常務委員序列四位。政治協商会議主席)である。
このアモイ密輸事件は、主犯とされた頼昌星がカナダへ逃亡し、カナダ政府はながらく、「人道のない、ろくな裁判も行われない中国へ身柄を送還するわけには行かない」と中国からの要求を突っぱねてきた。
しかし中国の資源外交はカナダのMEG社や「ペトロカザフ」などの巨大エネルギー会社を買収し、さかんに鉱区も買収、カナダから中国への貿易は飛躍し、北京の要求をいつまでも袖にするわけにもいかなくなった。
さきごろ「カナダの法廷は頼の身柄を北京へ送還する方針を決めた」(多維新聞網、6月26日付け)という。
アモイ密輸は「遠華事件」と呼ばれるようになり、最近は当時の政治状況から、江沢民が、この事件を暴露することにより、軍を掌握する梃子として政治的に利用した、とする分析が有力になった。
当時の軍の実力者は劉華清と遅浩田である。
この最高軍幹部も遠華事件との関連がさかんに言われた。そこで、軍権を掌握できていなかった江沢民が巧妙に政治利用。二人を引退に追い込んだのだ。
また背景には李鵬派の羅干(現在政治局員、序列九位)を通じて、盛んに暴露を奨励したのも李鵬派が、ライバルの賈慶林(江沢民の家来)の追い落としを画策していたからだ。
賈慶林と夫人の林幼芳は、いまも「知らぬ。存ぜぬ」とシラを切りとおし、関与を完全に否定している。
胡錦濤は、この事件をいかなる政治力学的に応用し利用するか。
◎宮崎正弘のホームページ http://www.nippon-nn.net/miyazaki/
◎小誌の購読は下記サイトから。(過去4年分のバックナンバー閲覧も可能)。
http://www.melma.com/backnumber_45206/
平成18年(2006年)6月27日(火曜日)
通巻第1496号
“遠華事件”の主犯・頼昌星。カナダは近く北京へ送還か?
最高軍幹部、政治局常務委員会幹部を巻き込んだスキャンダルが新展開の様相
通称「アモイ密輸」という事件があった。
福建省党幹部、軍、警察、税関を巻き込んでの一大密輸スキャンダルで、福建省書記だった賈慶林とその妻・林幼芳(当時、福建省外国貿易局党書記)が黒幕と言われた。
高官がグルとなって大がかりな密輸を黙認し(一説に軍艦が密輸船を擁護した)、その中心にいた頼昌星の企業「遠華集団」が大儲け、一説に当時の輸入石油の25%は、このルートを通じていたとまで噂された。
なにしろアモイを巣窟にした頼昌星は、言ってみればチンピラ。よほどの権力者の後ろ盾がなければ、これほど大胆な犯罪を展開できないだろう。頼は多くの高官、軍人に「賄賂」を贈り、愛人宅を斡旋し、最後には妾らも斡旋したと逃亡先のカナダで語った。
多くの暴露本が直後から香港などで出版された。
また香港から多くのジャーナリストがカナダへ押しかけ、逃亡先やら監獄にまで頼を追いかけての独占インタビューを掲載した。頼はカナダで起訴され、七年間に亘って、その身柄を拘束されていた。
当時から「黒幕」といわれた賈慶林は、しかしながらその後も大出世を遂げて、いまの胡錦濤政権のナンバー4(政治局常務委員序列四位。政治協商会議主席)である。
このアモイ密輸事件は、主犯とされた頼昌星がカナダへ逃亡し、カナダ政府はながらく、「人道のない、ろくな裁判も行われない中国へ身柄を送還するわけには行かない」と中国からの要求を突っぱねてきた。
しかし中国の資源外交はカナダのMEG社や「ペトロカザフ」などの巨大エネルギー会社を買収し、さかんに鉱区も買収、カナダから中国への貿易は飛躍し、北京の要求をいつまでも袖にするわけにもいかなくなった。
さきごろ「カナダの法廷は頼の身柄を北京へ送還する方針を決めた」(多維新聞網、6月26日付け)という。
アモイ密輸は「遠華事件」と呼ばれるようになり、最近は当時の政治状況から、江沢民が、この事件を暴露することにより、軍を掌握する梃子として政治的に利用した、とする分析が有力になった。
当時の軍の実力者は劉華清と遅浩田である。
この最高軍幹部も遠華事件との関連がさかんに言われた。そこで、軍権を掌握できていなかった江沢民が巧妙に政治利用。二人を引退に追い込んだのだ。
また背景には李鵬派の羅干(現在政治局員、序列九位)を通じて、盛んに暴露を奨励したのも李鵬派が、ライバルの賈慶林(江沢民の家来)の追い落としを画策していたからだ。
賈慶林と夫人の林幼芳は、いまも「知らぬ。存ぜぬ」とシラを切りとおし、関与を完全に否定している。
胡錦濤は、この事件をいかなる政治力学的に応用し利用するか。
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