中国とロシアと中央アジア=上海6=SCO
上海協力機構(SCO)のサミットが6月15日、上海で開催される。加盟国の中国とロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンの首脳が参加する見込みだ。これに先立って、胡錦涛・国家主席は30日、SCO加盟国記者による共同記者会見に応じた。
胡主席は会見で、「今回のサミットの特殊性」あるいは特殊な意義を強調する姿勢に始終した。「加盟各国が共同でSCO発展のための大計を図り、加盟国間の政治、安全保障、経済、人文などの領域における相互協力で活発に意見交換し、重要文書に調印する予定だ」と語っている。
2006年はSCOの前身である「上海ファイブ」設立10周年、SCO設立からでも5周年にあたる節目の年になる。今回の記者会見でも胡主席は過去の成果を強調する。それについて胡主席は会見で主に下記5点に集約させた。
1.数十件もの協力文書を通して、法的な基盤を整え、安定した強力メカニズムを構築した。
2.安全保障上において多くの有効な協力を展開、地域の安定に貢献した。
3.互恵という柱の下で、密接な経済貿易協力を展開、特に一連の大プロジェクトを始動して、加盟国の経済発展を促進した。
4.人文領域における交流を進展させた。
5.国際協力を積極的に推し進め、対外交流を加速させ、影響力を高めた。
中国にとって、SCOは客観的にみても「特殊な意義」を有す。今後もその重要性は変わらない。中国の北の大国であるロシア、西の中央アジア諸国との定期的な対話メカニズムがあることだけでも、中国にとっては外交上、安全保障上大きなメリットがある。さらにこれを通じて、インドやパキスタン、イランなどとも交流を促進できる。対米国を意識するまでもなく、このSCOが中国の地域協力の重要な柱になっている。
さらに現実的な意義としては、中国で急務となっているエネルギー確保及びそれから生じる世界各国との摩擦に対して、緩衝材の役割を果たしていることだ。05年サミットのコミュニケでは、原油・天然ガス開発およびパイプライン建設における協力の重要性が盛り込まれ、エネルギー協力に関する作業チームの結成にまでこぎつけた。
世界的にみて、加盟国がいずれも重要なエネルギー・資源国であることも無関係ではない。むしろ中国はそれをフル活用したいと考えているだろう。中国としてはSCOを今後よりエネルギー分野という色を鮮明にしたものにしたいはずだ。06年初頭にわざわざ「SCOは軍事同盟にはならない」と発表したことも、その伏線とも思える。
しかし、新華社などを通じて発表された今回の胡主席会見のもようを伝えた公式報道では、一言もエネルギーについて触れていない。そこにこそ中国のSCOにかけるしたたかさが見え隠れしているように思える。(文責:サーチナ常務取締役・有田直矢)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060531-00000001-scn-cn
何だか中国が良く動いている。この辺は日本も見習わないと
いけない。中国のしたたかな所が、見え隠れしているどころか、
丸分かりじゃないか。このSCOにもしもイランが入ったら
まるっきり軍事機構っぽくなる。エネルギーで繋がったと、
思わせたいのでにわざわざ「SCOは軍事同盟にはならない」と発表した
のだろう。
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成18年(2006年)5月19日(金曜日)
通巻第1467号 イランが「上海協力機構」の正式メンバー入りを要請
中央アジアの国際政治は地殻変動を起こそうとしている
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日本のような“平和惚け”国家が国際情勢の裏読みを怠るのは当然に
しても、西側世界も最近まで、この動きを軽視した。
濃縮ウランによる核開発をあきらめないイランは、中国とロシアに
国連での庇護を求め、とくに中国はイランと1000億ドルもの長期契約を
結んでガス、石油鉱区開発の正式契約をしている。
イランを梃子にロシアと中国は国連決議に反対したり、棄権したりして
西側への挑戦をしているのだが、単細胞のアメリカは中国とロシアを
手玉にとってイランを動かすことが出来ず、ついには「イラン制裁」を
獅子吼して、日本にアザデガン油田開発の中断という政治圧力を
かけてきた。
ルカシェンコ独裁のベラルーシへの失策、ミャンマー政策の完全な
失敗(制裁ゲームで遊んでいる内にミャンマーは完全に中国の
経済植民地になった)。
しかも、この時期を選んでイラン外相は「夏までにイランは
『上海協力機構』(SCO)の正式メンバーとなりたい」と表明した。
これにはむしろ中国が慌て、ほかにもSC0のオブザーバーで
あるインド、パキスタン、モンゴル諸国にも少なからぬ動揺をあたえた。
大げさに言えば近未来に中央アジア版NATOを中国軍人を最高
司令官として結成しようという動きだからである。
ジャン・フィリッペ・ビジャ(パリ国際研究センター<CERI>
主任研究員)は「あきらかな西側秩序への挑戦だ」と唱えた。
またグレン・バークレー豪国立大学教授(キャンベラ)は、「西欧と
中央アジアのあらゆる意味での地殻構造上のシフト(Tectonic Shift)
であり、西側はもっと関心を持つべきだろう」
(INSニュース、5月126日付け)と注意を喚起している。
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