日本は普通の国になるのか。中国の朝貢政策(中国の前に何度も土下座して貢ぐ)に従うのか。
安倍晋三官房長官は二十四日、都内で講演し、七月中旬にロシアで開催される主要国首脳会議(サンクトペテルブルク・サミット)後に、自民党総裁選への出馬を正式に表明する考えを明らかにした。関係者によると、安倍氏は十七日に森喜朗元首相と会談した際も出馬の意向を伝えた。安倍氏が事実上の出馬表明をしたことで、総裁選レースは一気に加速しそうだ。
講演で安倍氏は、「官房長官の職責をしっかりと務めることで、おのずと道が決まってくる」と強調。総裁選出馬について「いずれかの時点で私の考えを表明しないといけない。サミットが終わってどのタイミングになるのか考えないといけない」と述べた。
安倍氏が国会開会中に事実上の「出馬表明」に踏み切ったのは、福田康夫元官房長官の動向を牽制(けんせい)する狙いがあるとの見方が強い。
福田氏は最近、中東や米国などを相次いで訪問。要人との会談内容を明らかにしないことで逆に存在感を高めている。ベテラン議員を中心に福田氏擁立の動きも顕在化、支持率も上昇する中、安倍氏は「ジワジワと小泉-安倍包囲網が広がりつつあると感じていた」(自民中堅)。
特に靖国問題をはじめとする対中政策で、安倍、福田両氏の溝は深い。
「次の総裁選で今後百年間の日中関係が決まると思う。一つの問題が気に入らないと言って、会うか会わないかを条件にするなんて、朝貢外交そのものじゃないか。中国は冊封体制に入るかどうかを迫っているんだ」
四月初め、親しい議員らの会合で、小泉純一郎首相の靖国参拝への対応を問われ、こう答えた。その厳しい表情に出席者は「出馬への決意は揺るがない」と受け取った。
安倍氏が目指す「日米同盟を基軸にした国益を見据えた外交」は、「中国は共産主義国家であるという前提を忘れるべきではない」との立場。アジア外交重視を主張する福田氏と一線を画す。
安倍氏はサミット後に正式な立候補表明をする際、すでに提示している「再チャレンジ社会の構築」を軸に総合的な政権構想を発表する方針だ。これに加えて、外交や国民の関心が高い税制・社会保障分野でインパクトのある政策を盛り込むよう準備を進めている。
一方、「ポスト小泉」候補の麻生太郎外相は、滞在先のカタールで、記者団に「前から『出る出る』といわれていたので特に感想はない」と述べ、福田氏は「ノーコメント」と語った。焦点は、福田氏がいつ出馬表明に踏み切るかに移った。
こうした状況に森喜朗元首相は二十四日夜、民放CS番組の録画撮りで、来年夏の参院選で自民党が苦戦するとの見方を示したうえで、「勝ち目のない選挙で労をとってもらうのはもったいない。大きく負ければ必ず責任論が出る」と述べ、安倍氏温存を主張した。