北朝鮮がまたテポドン発射準備を始めた。
【ワシントン=坂元隆】北朝鮮が咸鏡北道の弾道ミサイル「テポドン」発射
基地周辺で発射準備の兆候を見せていることについて、米国務省の
マコーマック報道官は19日の会見で、「北朝鮮が長距離ミサイルを
発射すると、国際社会の深刻な悩みの種になる」と述べた。
そのうえで、北朝鮮が1998年のテポドン発射後に、米国と合意した
弾道ミサイル発射停止措置を引き続き順守するよう要求した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060520-00000305-yom-int
北朝鮮が長距離弾道ミサイル「テポドン」を発射する準備の兆候がある
ことが十九日、分かった。約一週間前から北朝鮮北東部の咸鏡北道
花台郡のミサイル実験場周辺で地上交信が急増していることも判明
したが、燃料注入などの発射直前の兆候は確認されていない。
北朝鮮は米国の金融制裁に反発し、核開発問題を討議する六カ国協議
の再開を拒否しており、日本政府内には米国を牽制(けんせい)する狙い
があるとの見方も出ている。
発射準備の兆候があるのは、射程三千五百-六千キロとされ、米国の
アラスカも射程内に入る新型の「テポドン2号」とみられる。
北東部の花台郡のミサイル実験場周辺では、頻繁な交信に加え、トレーラー
など車両の動きも活発化している。
麻生太郎外相は十九日午前の衆院外務委員会で「(発射準備を)かなり
前から知っていた」と答弁し、日本政府が情報を把握していたことを明らか
にした。実際に発射する危険性については「液体燃料の注入が開始されて
いない段階で、何とも言えない」と述べるにとどめた。
米国も衛星などでミサイル実験場の監視活動を強化。
ミサイル発射を探知して軌跡を追う米空軍の電子偵察機「RC135S」
(通称コブラボール)も周辺で監視飛行をしているとみられる。
ただ、米海軍のイージス艦は展開させておらず、日本政府筋は「危険水域に
は入っていない」との認識を示している。
安倍晋三官房長官も同日午前の記者会見で「現時点でミサイル発射が差し
迫っているという認識は持っていない」と述べた。
小泉純一郎首相は同日昼、首相官邸で記者団に対し、発射準備に関して
「言わないことにしている」と繰り返した。
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今回の北朝鮮のテポドン発射の兆候は、米国による対北朝鮮の金融制裁
が予想以上に効き、追いつめられた窮余の策との見方が強い。
ブッシュ政権は北朝鮮に対し昨年九月、北朝鮮が偽米ドルのマネーロンダ
リング(資金洗浄)にかかわったとして、マカオの「バンコ・デルタ・アジア」と
米系銀行の取引を停止し、北朝鮮系の口座を凍結。金融制裁となり、北
朝鮮の国際決済がまひ状態に陥っているといわれる。
過去にも、北朝鮮は一九九九年にテポドン2号の発射準備を行ったこと
がある。このときは、米クリントン政権との間で発射を凍結する代わりに
米国が経済制裁を緩和するという取引が成立した。
これに味をしめた北朝鮮が再び「恫喝(どうかつ)外交」の手段に訴え、金融
制裁を続けるブッシュ政権に妥協を求めているとみられる。
北朝鮮の金正日総書記は、二〇〇一年に「〇三年までのミサイル発射凍結
」を表明し、〇二年九月に小泉純一郎首相が初めて訪朝した際の日朝平壌
宣言に「発射凍結の延長」を明記した。それ以降、ミサイル発射は行っていない
ものの、エンジン燃焼実験を行うなど、ミサイル開発自体は続けてきた。
北朝鮮は日本に対しては、一九九三年五月の弾道ミサイル「ノドン」を
能登半島沖の日本海に向けて発射実験を行ったのに続き、九八年八月、
二段式の弾道ミサイル「テポドン1号」一発を発射。弾道部分は日本を越え、
三陸東方沖の太平洋上に着弾した。このように過去二回、弾道ミサイルの
発射があったことから、今回の北朝鮮の動きは日本にも人ごとではない。(
今井大介)
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【用語解説】北朝鮮の弾道ミサイル
北朝鮮は1980年代から旧ソ連が開発した短距離弾道ミサイル
「スカッド」を生産、配備。日本のほぼ全域が射程に入る「ノドン」も
開発した。98年にはテポドン1号(射程約2500キロ)の発射実験を
行った。その後、射程が3500-6000キロあるテポドン2号を開発中
とされてきた。さらに米国本土を射程に収めるテポドン3号の開発も
指摘されている。北朝鮮は発射凍結を表明し、2002年の日朝平壌宣言で
凍結継続が明記された。