ケガしたワンちゃんの思い出。 | 日本のお姉さん

ケガしたワンちゃんの思い出。

10年ぐらい前の話しだ。友達の家に行った帰りのことだった。


車で川の側の道をゆっくり通っていると、前方からワンちゃんが


一匹歩いてくる。ダルメシアン系の白い毛の雑種で、耳はとがって


いた。座れば首がすっと長くて、頭のてっぺんまで80㎝はある犬


だった。顔は細長くてかしこそうなワンちゃんに見えた。


窓を開けて「ワンちゃん!どうしたの?」と呼ぶと、ワンちゃんは


立ち止まって何か欲しそうにした。お腹が減っている様子なので


手持ちの食べ物をやると喜んで食べた。食べている様子を見ると


ガツガツしているのでノラ犬らしい。古くて汚れた首輪をしている。


よく見ると前足の上腕部にケガをしていて骨が見えている。


しょっちゅう自分で舐めているらしく、血は出ておらず肉がピンク色に


盛り上がってきている。


傷は膿んではいないが、何か手当をしてやろうと思ったが薬など車の


中には無い。おまけに用事で友達の家に行くところだ。


「先に友達の家に行って、それから自分の家に行けばいいや。」と、


考えてワンちゃんを抱えて車に乗せた。ワンちゃんは、ひょいと、


助手席に座って前を向いた。車に乗るのは慣れている様子で


しっぽを振って喜んでいた。この調子なら友達の家まで行っても


大丈夫だと思い、高速道路に乗った。犬は助手席でおとなしくして


いた。友達の家で用事を手早く済ませて車に戻った。犬はおとなしく


待っていた。来た道で帰ろうと高速道路に乗ると、ワンちゃんが


急に運転中のわたしの膝の上に乗ってきた。


運転のジャマなのでワンちゃんを降ろそうとすると、今までご機嫌で


うきうきしていたワンちゃんが「ウ・ウ、、、。」と、ドスの効いた声で


うなるのだ!ワンちゃんは膝の上に座って長い首をすっくと姿勢良く


伸ばして、車の窓から外を見ている。ワンちゃんは体が大きいので


ちょうどわたしの頭の前に犬の頭が来て、前が見えない。


高速道路を運転中だったので、車を止めたくても止める場所がない。


仕方が無いので、ワンちゃんの頭の影から首を出しながら運転する


しかなかった。対向車からは、犬が運転しているように見えたかも


しれない。


ワンちゃんが暴れたり、顔を噛まれたりしたら自分がパニックに


陥って運転ができないと思ったので、ここはワンちゃんの希望を


かなえてそっとしてやる方が安全だと考えたのだが、後から考えると


性格の分からないノラ犬を、つなぎもせずに助手席に座らせたのは


無謀なことだったと思う。まさかあれだけ車に乗るのが好きな犬だった


とは、、、。捨てられる前はよく車に乗せてもらっていたのだろう。


家に着いたので、ワンちゃんをそのまま運転席に座らせ、薬を取りに


行った。ワンちゃんに抗生物質を塗ってガーゼを付けて包帯を巻いて


やった。どうせ直ぐとれてしまうだろうが、何かの役には立つだろう。


ワンちゃんが助手席に移ってくれたので、白い包帯を巻いたワンちゃんを


元の川の側まで連れて行き車から降ろした。ワンちゃんは、何事も


無かったかのように、小走りで去っていった。


ノラ犬を保護してインターネットで里親を捜してあげることができるなんて


考えも付かなかった時の出来事だった。


大体ノラ犬は、先を急いでいる。飼い主に捨てられたからノラ犬に


なったのか、それとも出かけた先で迷子になったのか、知らないが、


ワンちゃんたちは飼い主に会うために自分が以前住んでいた家を


目指しているのだ。交通事故でケガをしているノラ犬を助けると、


ノラ犬たちは先を急いでいるので、ケガが治って元気になったら


去っていく。そのまま家にいてもいいのに、挨拶をして去っていく。


飼っていた犬を遠くに捨てると、犬たちは必死になって元の家に


戻ろうとする。中には戻れないで死ぬ犬もいる。


最近日本にも、ペットを守る法律ができたそうだ。友達が教えてくれた。


「動物の愛護及び管理に関する法律」で、ペットをみだりに殺したり、


傷つけた者は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられる


ことになっている。また、ペットに対しみだりに給餌又は給水をやめる


ことにより衰弱させる等の虐待を行った者は、30万円以下の罰金に


処せられる。そしてペットを遺棄した者は、30万円以下の罰金に


処せられることになっている。飼い主が捨てるからノラ犬やノラ猫が


増えるのだ。「ノラ猫にエサをやるな!」と、汚い言葉でPCでプリント


された張り紙があちこちに貼ってあるのをよく見かけるが、


「ノラ猫を捨てるな!」に変えてほしいものだ。捨てる人間がいるから


ノラ猫が増えるのだ。猫だって犬だって、好きでノラになったわけでは


無いのだ。PCで作られたお手製のポスターには、猫のイラストの上に


バツ印が付けてある。猫の命が否定されているようで悲しい。


スーパーマーケットの横に、「ここで猫にエサをやるな!見つけたら


警察に突き出します!」などと汚い言葉で手書きのポスターが貼って


あるのを見ると悲しくなる。なんでノラ猫にエサをやるだけでこんな風に


書かれなければならないのだ。もちろんエサをやるなら他人の敷地内


では良くないし、エサの残りは直ぐに処分しないと汚いし、カラスの


エサになってカラスを増やすことになるので気を付けないといけない。


それでも、汚い言葉で書かれたポスターを見ると、ノラ猫がスーパー


の店長や店員にどんな目に会っているのかと思うと心が痛む。


ペットを飼うなら最後まで責任を持って、死ぬまで可愛がってやって


ほしいのだ。それが当たり前の事になる日本であってほしい。


愛護動物への虐待、遺棄が法律で禁じられ、法を犯した者は厳しく


罰せられるのだという事を、たぶん多くの人はまだ知らない。


知らないからペットにしていた猫や犬を簡単に捨てるのだ。


元の家を目指して先を急ぐノラ犬がいるということを、たくさんの人に


知ってほしいと思う。