沖縄にとっては橋本氏は、ちょっぴり気になる人のようだ。
2005年8月の記事。自民党の橋本龍太郎元首相が政界引退を表明した。
一億円献金隠し事件で派閥会長を辞任した後も、比例区での出馬に含みを残していたが、党執行部が比例単独候補を原則として認めないことから、引退を余儀なくされた。
首相まで上りつめた政治家の寂しい幕引きである。
橋本氏の引退は、派閥政治の終焉を象徴する。
旧橋本派は、かつての田中派、竹下派の流れをくむ自民党最大派閥で、「鉄の結束」が自慢だった。「数の力」をバックに内閣改造や党役員人事などで強い発言力を持ち、政権運営でも主導的立場にあった。
衰退は、一昨年の党総裁選で分裂投票に陥ったことに始まる。小泉政権下では「抵抗勢力」のイメージをはね返すことができず、昨年七月の参院選では議席を大幅に減らした。
そして、参院選直後に発覚した日本歯科医師連盟からの一億円献金隠し事件が、終焉を決定づけた。
業界との癒着、政治とカネをめぐる問題は、この派閥特有のものでもある。
田中角栄元首相はロッキード事件で逮捕され、竹下登元首相はリクルート事件で首相退陣に追い込まれた。金丸信元副総理も、巨額脱税事件で逮捕されている。
腐敗の構造が、どれだけ政治不信を招いてきたことか、その責任は重い。派閥政治の終焉とともに、古い自民党体質にも終わりを告げるべきだ。
一方橋本氏は、現在の一府十二省庁再編に道筋を付けるなど行政改革や沖縄問題で存在感を示した。
一九九六年四月十二日、当時の橋本首相とモンデール駐日米大使が、普天間飛行場の全面返還で合意し記者会見する姿に、県民はくぎ付けとなったものだ。
普天間返還をトップダウンで決定したほか、厚生族として対馬丸遺族補償問題などにかかわった。昨年八月の米軍ヘリ墜落事故で政府の対応を「ぬくもりがない」と批判したことも印象に残る。
普天間は膠着状態が続くが、沖縄問題を解決したいという「熱意」を感じさせる政治家だった。
橋本氏は政治家として幕を下ろすが、幕引きさせてはならない問題もある。
献金隠し事件で、東京地裁は近く橋本氏らの証人尋問を行う。元首相には国民に対し献金の趣旨や使途をきちんと説明する仕事が残されている。
突然の衆院解散で政治資金規正法改正案は廃案となった。国会もまた迂回献金の禁止など規正法の不備に再度取り組まなければならない。
社説(2005年8月24日朝刊)
[安保理改革]
信頼得る外交努力を
日本の国連安全保障理事会の常任理事国入りが絶望的になった。
日本がドイツ、インド、ブラジルと組んで七月に共同提出した安保理拡大の「枠組み決議案」(G4案)に反対が多く、採決を見送らざるを得なくなったためだ。
大票田のアフリカ連合(AU、五十三カ国)の支持取り付け失敗、中国の執拗な切り崩し工作、頼みの米国の反対…。理由はいろいろあるだろう。
G4案は常任理事国六カ国、非常任理事国四カ国を新設、拒否権行使は十五年間凍結するという内容だった。
安保理改革のためには、国連総会で、全加盟国の三分の二、百二十八カ国以上の賛成が必要になる。
加盟国の多いアフリカは最大のターゲットだった。日本も政府開発援助(ODA)の実績などから自信があったようだ。
AUは七月、常任理事国六カ国、非常任理事国五カ国を新設する独自案を公表、拒否権の即時付与を求めた。AUとの協議でG4案との一体化は結局、失敗に終わった。
中国の反対は織り込み済みだっただろうが、小泉純一郎首相の靖国神社参拝など「政冷経熱」が悪影響を与えていることは間違いない。 (関係ないと思う。)←これは私のつっこみ。
最大の誤算は米国の対応だ。ブッシュ大統領ら米政府高官は以前から日本の常任理事国入りを支持していたが、G4案には真っ向から反対を唱えた。
外務省は、日本が常任理事国入りすることは世界にとって「核兵器を持たない国として、軍縮・不拡散分野などで積極的な外交努力を展開できる」「世界第二位の経済規模を有し、国際貢献を一層強化できる」「中国に加え、安保理でのアジアの代表性が高まる」と意義を強調している。
この機会に日本外交の足元を見詰め直すしかない。衆院解散・総選挙後の外交政策は中国、韓国などアジア諸国をはじめとする加盟国と対話を深め、外務省がいう世界にとっての意義を加盟国に確信させることだ。日々の地道な外交努力でしか信頼は勝ち得ない。