中国市場を狙うIT企業
IT(情報技術)関連を中心に、多国籍企業が中国の政府調達でのシェア拡大を狙い布陣を強化している。財政部によると、今年の政府調達目標は中央・地方を合わせて3,000億元(約4兆4,000億円)。各社は政府採購法(政府調達法)の国産品使用規定が世界貿易機関(WTO)加盟時の公約に基づいて今後撤廃されることをビジネスチャンスと見ているようだ。ただ、自主技術・自主ブランド振興を掲げる中国政府は、形を変えて国産品優先調達を強化する構えも見せており、巨大なパイを巡り外資と国内企業の動きは今後、激しさを増しそうだ。
中国の2005年の政府調達額は中央・地方を合わせて約2,500億元で、前年比15%増えた。このうち、中央分は同35%増の400億元だ。今年の中央・地方を合わせた目標額3,000億元は、昨年をさらに20%上回る規模。伸びでみても昨年より5ポイント高く、成長の加速は明らかだ。
5日付経済参考報によると、特にIT関連の多国籍企業は巨額の政府調達の獲得とシェア拡大に向けて着々と態勢を整えている。マイクロソフト、デル、ヒューレット・パッカード(HP)、インテルといった世界大手のIT企業は、中国の政府調達を専門に担当する部署を設置済みという。
韓国のサムスン電子も昨年、同様の部署を設けた。同社で大口取引先営業部門幹部は「今のところ中国の政府調達市場に参入できているサムスン製品は、ノートブック型パソコンやプリンターなどごく一部。だが今年は全製品を政府調達のラインアップに乗せ、業績の倍増を目指す」と鼻息が荒い。
■ハイエンド既に独占
実は、外資はハイエンド部門で既に中国の政府調達を相当押さえている。政府調達法(03年1月施行)は国産品の保護・育成を目的に、第10条で原則、国産品を調達するように規定している。これにより、中国の政府調達の市場開放度は15%にとどまっている。しかし、実際は中国地場企業が参入できているのは主にローエンド市場だけだ。
同法第10条には、調達する製品やサービスが中国本土内で合理的な条件で確保できない場合は非国産品を調達できるという例外規定がある。外資はこれを活用し、エレベーターや照明器具、カラーフィルム、乗用車などかなりの品目で既に市場を独占しているという。例えばコンピューターソフトの外資シェアは90%に達している。
地場の製品やサービスが外資製に劣ることに加え、「安過ぎて採算に合わない」との理由で、一部企業が政府調達参入に消極的なことも地場の弱さの背景にあるようだ。サムスンも「中国の政府調達では競争相手の90%は外資。地場企業との競争は重要でない」と語る。
しかもWTO加盟時の公約により、中国は今後、政府調達での内外無差別を原則的に義務づけるWTO政府調達協定への加入申請を予定している。同協定に加入すれば政府調達法10条の国産品使用規定は廃止になり、外資にとってはさらに追い風が吹く形だ。
■国産保護は強化?
しかし、中国政府は第11次5カ年計画(06~10年)で国産自主技術・自主ブランドの振興を目指す「自主創造革新」を掲げている。国務院(中央政府)がこの方針に沿って定めた政策大綱「国家中長期科学技術発展規画綱要」の関連政策は、国産自主技術・自主ブランド製品を政府調達で優遇することをうたっている。「国産品優先はむしろ強化」という思惑がうかがえる。
国内の専門家にも、「WTO政府調達協定に加入している米国でさえ政府調達の外国製シェアは10%。ソフトで明らかなように中国の方が開放されており、むしろ国産保護が弱過ぎる」という意見がある。
政府調達で政策的な国産品優先が強まればWTOとの関連で問題化することが予想されており、参入強化を図る多国籍企業も反発するのは必至。今後の政策動向と企業側の反応には注視する必要がありそうだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060406-00000028-nna-int
なんとなくこのニュースは重要なような気がした。