叱るオジ様って、ステキ。 | 日本のお姉さん

叱るオジ様って、ステキ。

5年ぐらい前のことだ。会社の昼休みに郵便局にいったら、ひどい

行列ができていた。一応みんな、番号札を持っていてイスに座って

待っている人もいる。みんな不機嫌だ。

窓口には女の子が1人で、お客さんの応対をしている。

いくら、彼女が頑張っても20人以上お客さんがいるのだ。なかなか

順番が回ってこない様子だった。

待っているみんなは、一様にぶすっとした顔で、おもいきり不満そう

だった。


郵便局には、たくさんの郵便局員がいて、窓口の女の子以外は

のんびりと仕事をしている。動作ものろい。

郵便局員の女性が1人で窓口で汗をかきながら頑張っているのに

奥のほうにいる郵便局のオジサンたちは知らん顔だ。

オジサンたちは、客の顔を見もせず、ゆっくりと自分の用事をしている。

窓口は4つあるのに、ひとつしか稼動していない状態だ。


12時から1時は、客が一番多い時間帯だ。

仕事をしている者は、この時間しか郵便局に来れないのだ。

わたしもしばらく立っていたが、一向に奥の郵便局員たちは

動こうとしない。別に弁当を食べているわけでもない。

ただ、ゆっくり書類を移動させたり、机に向かってなにやら

しているだけだ。どうでもいい仕事をしているようだ。

わたしが、窓口で仁王立ちになって、睨んでいても知らん顔だ。

窓口の女性はほとんどパニックに陥っている。

わたしもだんだん頭にきて、怒鳴りたい気分になっていた。


そこに二人の会社員らしきオジ様たちがやってきた。

彼らは直ぐに、郵便局が、窓口をひとつしか開けていないため

大勢の人が不満そうに待っているのを見て取った。


オジ様のひとりが大声で怒鳴った。


「何で窓口がひとつしか開いていないんだよ!!

 みんな待ってるだろう!?

 こんなに忙しいのに、なにボヤボヤしてるんだよ!!

 これだからお役所仕事だって言われるんだよ、まったく!!」


郵便局の奥でのんびり動いていたオジサンたちが急にあわてて

バタバタと、動き出した。

窓口が急にふたつ開いてみっつになった。郵便局の仕事が

急にスムーズに動き出した。むっつりした顔で待っていた

みんなの顔が緩んだ。ざまあみろだ。せいせいしたよ。

叱るオジ様って、ステキ。心の中で拍手した。

本当は、拍手したかった。「そうだ、そうだ!!」って、言いたかった。

こんなオジ様がいるかぎり、日本はまだまだ安泰だ。


なんで5年も昔のことを思い出したかっていうと、

そんなオジ様に、昨日叱られたからだ。


昨日、わたしは会社の帰りに本屋である本を探していたのだった。

おととい見つけたジャワに関する古本を、買うためだった。

その本があった場所に無かったので、弁当箱に詰まった海苔巻きのように

並べてある本の横に、サンドイッチを並べるように平たく積まれてある本の

山を手でパラリと崩して、下に積まれてある本の名前を調べた。

昨日の本がないので、その横のケースにフト目を移し、移動しようとした瞬間、

どこかのオジ様が

「キミ。片付けないの?」と言ったのだ。ほんとだ!片付けていないわ!

久しぶりに恥ずかしくて顔が瞬時にカアッと熱くなったんだけど、

恥ずかしがっているのは知られたくなくて、平常を装ってしまった。

「あ。忘れてた、、、。」と、普通の声で言って、いそいで崩した本を

重ねた。オジ様の顔は見ていないので、どなたなのかは不明だが、

何で、叱るオジ様って、東京弁なんだろう。


郵便局で、一番忙しいはずの昼の時間に、窓口をひとつしか

開けずに平気な顔をしていた怠慢なオジサンたちを叱ってくれた人も

東京弁だった。


東京のオジ様って、関西にくると我慢できない事が多いので、思わず

怒鳴るのかな。でも、叱ってくれて、ちょっと嬉しかった。気が付かないで

ひどいことをしていた。本を崩したまま、次のケースに移るところだった。


あっちこち探して、お目当ての本がまだ売れずに隅っこにあるのを

見つけたときは嬉しかった。レジの人は、わたしが見知らぬオジ様に

叱られたのを見ていたはずだが、わたしは知らん振りで、古本を

購入した。恥ずかしかったけれど、叱るオジ様に久しぶりで出会えて

嬉しかった。

郵便局で、客を無視して窓口ひとつで女性に応対させていた怠慢な

郵便局員たちを叱ってくれたオジ様と、昨日古本を崩したままにして

叱られたオジ様は別人だと思うけれど、同じ日本のオジ様だ。


人として良くない行為を見つけたら叱ってくれるオジ様は、まだまだ日本に

生息しているってことだ。叱るオジ様って、やっぱりステキ。

まさか、自分が怒られるとは思っていなかったが、ありがたい事だと思う。

今後、わたしはいくら夢中になっていても古本は崩したままにしないだろう。