台湾の願い
【ワシントン=山本秀也】米国を訪れている台湾の馬英九・
中国国民党主席(台北市長)は二十二日、ワシントンに入り、
有力シンクタンクでの講演や米側要人との意見交換を行った。
一連の発言で、馬氏は中台の「現状維持」を訴えて米側の
信頼獲得を狙うと同時に、在米華僑や中国当局を意識して
五項目の対中関係の改善策を打ち出した。
十九日からニューヨーク、ボストンを訪れた馬氏は、
蒋経国元総統の英文秘書を務めた流暢(りゅうちょう)な
英語で講演や座談会に連日臨んでいる。
二〇〇八年の次期総統選に出馬が確実視される馬氏にとり、
今回の訪米は米中両国の注目が集まる試金石となった。
馬氏は、二十二日にワシントンのアメリカン・エンタープライズ
研究所(AEI)、ヘリテージ財団という保守系シンクタンク共催の
会合で講演。「中華民国」(台湾の正式国号)が中国全土の
正統政権だという“虚構”のもとで、中台の現状維持を図る考えを
訴えた。
中台関係では、陳水扁政権の対応を批判する一方、
〇八年の総統選で国民党が政権復帰を果たした場合、
対話再開に取り組むとしたうえで、五項目の政策を示した。
これは、
(1)「一つの中国」の大枠に関する一九九二年の中台合意を確認
(2)中台間での「平和協定」締結
(3)中台の共通市場
(4)国際社会への台湾の関与
(5)中台の文教交流-との内容。
馬氏は、ハーバード大学での講演でもこれらに触れていた。
国民党などの反対で審議が進まない米国製兵器の調達問題では、
「防衛的な兵器は引き続き米国から調達すべきだ」として、
減額調達の考えを説明。
日米中との関係安定を求めるとして、「台湾はトラブルメーカーではなく、
ピースメーカーになるべきだ」と語った。
また馬氏自身の訪中計画については「当面訪中の考えはない」と述べた。
ワシントンでの米側要人との会見について、馬氏は記者団に
「政府、民間の双方」と述べるにとどまった。
米側の対台湾窓口である米国在台協会との意見交換のほか、
ゼーリック国務副長官、クラウチ大統領次席補佐官
(国家安全保障問題担当)との会見が伝えられているが、
内容を含め米台双方とも確認に応じていない。
一連の発言に対する米側の公式反応は出ていない。
馬氏の訪問先では国民党系のほか、相当数の親中派を含む
在米華僑らが歓迎を繰り返す半面、台湾独立派からは講演などで
批判的な意見が馬氏に寄せられている。
馬氏はロサンゼルスなどを経て今月末に帰台する。