独裁の無法国家を中国が援助する
セミナーで専門家、資源獲得へ軍事援助も
【ワシントン=古森義久】中国の中南米とアフリカへの資源獲得のための進出が独裁政権を支援し、軍事援助をからめるという形が多いという点で、米国の安全保障への侵害にもなるという懸念が七日、ワシントンの大手研究機関でのセミナーでブッシュ政権に近い専門家たちから表明された。
ブッシュ政権に近い大手シンクタンクのヘリテージ財団は七日、「アフリカと中南米で拡大する中国の影響力」と題するセミナーを開いた。同財団の中南米専門研究員のスティーブ・ジョンソン氏は中国が石油や希少金属などの資源獲得のため中南米のベネズエラ、ブラジル、アルゼンチン、ペルー、チリ、ウルグアイ、ボリビアなどに貿易、投資、経済援助という形で進出し、とくにベネズエラからの石油輸入を急増させている現状を報告した。
同氏はこの中国の動向が一般の国々とは異なる特徴として、(1)単なる企業ではなく国家機構自体が当事者となっている(2)経済交流に軍事援助をからませる場合が多い(3)交流の相手に非民主主義の独裁国家が多い(4)交流の方式では人権尊重などの国際規約を守らない-などという諸点をあげた。
とくに中国はベネズエラ、ボリビア、ニカラグアなどに戦闘機や空対地ミサイルを供与し始めたという。
有力民間コンサルタント企業のブーズアレン社の中南米専門家エバン・エリス氏も、中国の中南米進出の主要動機は自然資源の獲得だとして、中国の中南米からの輸入が昨年は千三百七十億ドルと前年比26%の増加となった点を強調した。
エリス氏はさらに、(1)反米チャベス政権のベネズエラからの石油は中国の石油輸入全体の20%にまで急増した(2)中国は最近、チリに二十億ドルを投入して、銅の独占的な調達の権利を得た(3)中国は同じ反米のモラレス大統領が政権を握るボリビアにも急接近して天然ガス開発などのために三十五億ドルの投資をした(4)キューバには新たにニッケル獲得のために四億ドルを投資した-ことをあげて、中国の中南米での動きには反米政権への協力が目立つと指摘した。
ヘリテージ財団のアフリカ専門研究員のブレット・シェーファー氏は、アフリカでも中国は中南米と似た進出が目立つとして、スーダンでの地元石油機構の40%の株保有による大規模な石油調達、アンゴラでの二十億ドルの融資提供による石油開発権利の獲得、ナイジェリアでの原油獲得、ザンビアでの銅獲得、リベリアなどでの木材調達などの具体例をあげた。
同氏はそのうえで中国のアフリカでの接近の相手はほとんどがスーダンやジンバブエのような独裁の無法国家だと述べ、スーダンに対してはとくに兵器供与や軍事教育などの軍事援助が顕著だと報告した。