10年後は世界3位・中国の新5カ年計画 | 日本のお姉さん

10年後は世界3位・中国の新5カ年計画

北京・西岡省二】中国の国会にあたる第10期全国人民代表大会(全人代)第4回会議が5日、北京の人民大会堂で開幕した。温家宝首相が冒頭、政府活動報告を行い、今年からの「第11次5カ年計画」草案を提出した。草案は計画最終年の2010年に国内総生産(GDP)総額が26兆1000億元(3兆2463億ドル)に達するとの目標を掲げており、実現すれば、日米に次ぐ世界3位の経済大国になる。


 5カ年計画の策定は03年の現指導部発足後初めて。温首相は今年の経済成長目標を昨年同様「8%前後」とし、新5カ年計画では年平均成長率目標を7.5%に設定すると表明した。


 05年の中国のGDPは18兆2000億元(2兆2637億ドル)で、フランス、英国を抜き、世界4位になったとみられる。中国が新5カ年計画の数値目標に達すれば、10年にはドイツを抜く可能性が高い。ジェトロや内閣府によると、04年のドイツのGDPは2兆7500億ドル、日本は4兆5900億ドル、米国は11兆6800億ドル。


 温首相は報告で、7.5%成長について「努力すれば達成は可能だ」と自信を示すとともに「一方的に経済成長率を追求したり、むやみに競ってはならない」と述べ、高度成長神話からの脱却や格差是正に取り組む姿勢を明確にした。


 また、温首相は「資源や環境に対する圧力が日増しに増大している」と懸念を表明。成長継続のため「節約型社会」への転換を目指し、エネルギー消費を20%削減するほか、車の排ガスや石炭火力発電で生じる窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)など主要な汚染物質の排出総量を10%削減するなどの目標を示した。


 外交分野では個別の国名を挙げず、「先進諸国との共通の利益を拡大し、相互の食い違いを適切に処理する」と述べた。小泉純一郎首相の靖国神社参拝問題などで冷え切った対日関係には言及していないが、これ以上の関係悪化を望まない姿勢を示したともいえそうだ。


 また、台湾の陳水扁総統が2月末、中台統一を前提とした「国家統一綱領」を事実上廃止すると表明したことを念頭に「『台湾独立』をたくらむ分裂活動に反対し、決して妥協しない」とけん制しながらも、全体として柔軟路線を維持した。


 中国財政省が5日、全人代に提出した06年度予算案によると、国防費は前年当初比14.7%増の2807億2900万元(約4兆700億円)。4日に公表された数字よりも約30億元少なかった。


 ◇解説 「共富」実現へ、内外に課題


 中国政府が5日に公表した「第11次5カ年計画(06~10年)」草案に盛り込まれた平均7.5%の成長率目標は過熱を避け、持続可能な発展を目指すことに狙いがある。農村対策や社会保障の拡充など社会のセーフティーネットに関する数値目標も盛り込まれた。成長の持続には社会の安定を保つことが至上命令だからだ。


 草案は特に都市と農村の格差是正を重視している。農民の医療保険に相当する「新型農村協同医療制度」の普及率を10年までに8割以上に高めるほか、義務教育での教科書無償配布など貧困家庭の就学支援策を打ち出した。


 昨年来、中国各地で不公平な待遇や共産党幹部の腐敗に不満を抱く農民らの騒乱が相次ぐ。弱者対策は共産党体制を維持する上でも不可避なのだ。都市部でも、年金に当たる養老保険の対象者数を大幅に増やし、登録失業率を5%に抑える方針が示された。


 10年に世界3位の経済大国になったとしても、1人当たりGDPは04年の日本(3万5922ドル)の約15分の1で、農民の平均収入目標は年6万円にすぎない。胡錦濤指導部が目指す「共富」(豊かさを共有する)社会への道は遠い。


 過去5年間に年平均9.5%の経済成長を続けてきた中国に対して、軍事だけではなく、貿易やエネルギー政策をめぐっても「中国脅威論」が台頭しつつある。政治報告で示した21世紀初頭の新たな国家戦略を推進するためには、海外からの対中圧力にどう対応するかも課題になる。【北京・成沢健一】




2006年03月06日

http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1754137/detail