米国、中国、日本が外国の森林を荒らしている。
バンコク=岩田智雄】フィリピンで起きた大規模地滑り災害は、森林の違法伐採が原因の一つであることが指摘されている。フィリピンに限らず東南アジア各国ではこれまで、無計画な森林破壊が繰り返されてきた。過去、木材の主な輸出先は日本だったが、現在は中国向けが増え、その流通ルートには政治家や密輸業者が暗躍しているとされる。
フィリピンでは、一九六〇年代から七〇年代にかけて主に日本への輸出を目的とした大規模な森林伐採が行われた。最近でも、貧困による違法伐採や焼き畑が後を絶たず、過去三十年で53%の森林が消滅した。過去にも大雨による土砂災害がたびたび発生しており、環境保護団体は、地元有力者や政治家が業者と癒着して違法伐採をはびこらせてきたと指摘してきた。
カンボジアでは内戦時代、違法伐採された木材はタイへ売られ、ポル・ポト派などの戦闘資金になっていたが、現在は違法木材の多くが中国へ流れているとみられている。ロンドンに事務局を置く環境監視団体、グローバル・ウイットネスは違法伐採に政府高官が関与しているとする報告書を作成。地元紙カンボジア・デーリーも違法伐採をめぐるわいろが役人のポケットを潤していると指摘している。
カンボジアでは六〇年に国土の73%だった森林が二〇〇〇年には35-50%に減少したといわれる。魚の産卵場所を提供している水辺の樹木の伐採で、東南アジア最大の湖、トンレサップ湖の漁獲高が減少しているほか、メコン川流域では土砂災害を誘発し、二〇〇〇年には過去七十年で最悪の三百五十人が死亡した。
一方、インドネシアからも違法木材が大量に中国や日本へ渡っていることが、昨年十一月に日本で行われた国際会議「アジア森林パートナーシップ」(AFP)で報告された。インドネシアと英国の合同調査によると、インドネシアで生産される木材は、半分から四分の三近くが違法伐採されたもので、背景には密輸業者の横行や官吏の汚職があるという。
中国との関係を深めるミャンマーからも大量の違法木材が中国南部へ陸送されている。グローバル・ウイットネスの調査によると、木材の95%は違法に輸出されたもので、その量は年間百万立方メートルに及ぶと推測されている。
中国は自国での森林破壊が進み、洪水の発生被害が多発している。このため、国内での伐採を抑制する代わりに、東南アジアやロシアからの輸入を増やしている。中国の木材輸入量は、九七年には五千四百万立方メートルだったが、〇二年には一億二千二百万立方メートルと二倍以上になり、木材輸入国としては日本を抜いて米国に次ぐ二位となっている。