バリの旅行
友達(女の子)は飛行機が苦手だ。
だから、飛行機に乗ると、直ぐワインを飲もうとする。
そして、バリに行くなら絶対JALでないと嫌だと、わがままを言う。
理由はJALの赤ワインはいつもおいしいからだそうだ。
そして、すぐさま寝る。
わたしも、飛行機ではすぐ寝てしまう方なので、助かる。
どんどんしゃべりかけてくる女の子は苦手だ。
バリに着く前に、飛行機の中がじんわり暑くなってくるので、
たまねぎのように着ている物を脱いでいく。
バリの空港に着いたら、もうTシャツ一枚になっている。
日本で着ていたダウンジャケットやらセーターやら、
長袖Tシャツやらは、全部手荷物になる。
バリに着いたらもう夜だった。
安いツアーに参加したのだが、ちゃんと現地のガイドさんが
迎えに来てくれていた。バスの中で、オプションツアーの
申し込みがあれば、デンワしてくださいと言うが、
値段を聞くと一日一万円だ。すごい高いし、友達がジャワから
来てくれるので結構ですと言って断る。断ったとたん無口に
なってしまって失望している様子がありありとわかる。
安いツアーなのに、ゴージャスなホテルに着いた。
入り口で、ガムランの音楽を奏でる人たちがいる。
ちょっと立ち止まって聞いていると、急にさくら~さくら~
やら、春の小川はさらさらいくよ~などの、日本の曲になり、
ガムランで、日本の曲はあまり聴きたくなかったなあと友達と
言いながらチェックインする。
晩ごはんはもう遅いのでホテルで食べる。
二人で食べて3千円。チト高いが、夜なのでレストランは
ここしか空いていないし、外にくりだすにはお腹が減りすぎ。
真ん中に人口の池ができた豪華なホテルだったが、本当は
もっと自然がいっぱいのひなびたバリ風のホテルが好きだ。
安いツアーは、ゴージャスなホテルに
入れてくれたりするものだ。こんなに高いホテルは始めてだった。
高いホテルなのに、なじめないわたしって、、、貧乏が板についた
人なのだった。友達は無邪気に喜んでいる。
明日は何を着ようとか、水着はどれを着ようとかファッションショーを
部屋でやっていたが、友達は背中に傷を作っていて
その状態では海もプールもまずいだろうということになる。
寝る前にホテルのプールを見にいこうと友達を誘って、
下まで降りると、プールは消毒中で、入れなかった。
宮殿のように大きなホテルなのに、誰もいない。
空を見るとやけに明るい。「雲が出ているね。」というと、
「あれは雲じゃなくて天の川やで!」と、言われる。
近眼の目には、雲に見えたが、全部星でできていたらしい。
他にも星はたくさん出ていたので、二人でプールサイドに
寝っころがって星を見て感動していたら、
友達がいきなり「ロマンチック~!これで相手が男ならな!」と、
言ってはいけない「禁句」を吐いた。わたしも同じことを
考えていたっちゅうねん。
インドネシアの友達に電話して、「明日の朝、よろしく!」と、
頼んでおく。
友達は、「今、サッカーの試合をバリの友達の家で観ているんだ。」
と、言う。
「バリの友達が案内してくれるから、お姉さんはラッキーだよ。」と、
言う。インドネシアの友達とは、若い頃から知っている
おさなじみみたいなものだ。
夜中に、いきなり地震が起きたので、目が覚める。
ひとりで「地震や!地震や!イエスさま、助けて!」と、一人で
騒いでいたが、友達は起きない。(クリスチャンなので、つい
イエスさま!と叫んでしまう。)
バリに来てまで地震に会うとはついていない。阪神大震災で
恐い目にあってから、地震は大嫌いだ。
仕方なくひとりで起きてベランダの窓を開けて
ホテルの客の様子を見てみたが誰も起きている様子が無い。
どうも客が少ないようだ。ホテルの部屋の電気が点いたのは
一部屋だけだった。
友達が起きて来て、不機嫌そうに「うるさいな~。」と言った後、
また直ぐ寝てしまった。
わたしも直ぐに寝たが、友達はそれから一睡もできなかったらしく
次の日、何やら怒っていた。
次の日の朝、インドネシアの友達が電話をかけてきて遅れるという。
インドネシアは「ゴム時間」だから、平気だよ。想定内だよ。
ティダアダマサラ。問題無いよん。
朝ごはんをゆっくり食べられるからかえっていいかも。
わたしたちは、オーストラリア人らしき外国人たちに囲まれて、
バイキング形式の朝食をとる。ホテルの朝のバイキングは大好きだ。
外国人に負けないぐらいの量を食べ、ホテルの待合室で
インドネシアの友達に会った。バリの友達も連れてきていた。
彼らは、エアコン付きの車を借りて来てくれていたので感激した。
途中のコンビニで、ミネラルウォーターやお菓子も買ってくれた。
ガソリンスタンドでは、地元のおばあさんからパパイヤの切ったのや
ジャジャンパサール(お菓子)を買って、ウブッドゥ方面に向かう。
大統領の別荘が見える、美人になるという泉を見学し、そのまま
見晴らしのいい高い場所に行く。パパイヤはもう腐っていたが
ためしにひとつ食べる。
景色が良くて風も吹いて気分が良かったが、物売りがしつこくて閉口した。
マンゴスチンを売っていたおばあちゃんが
100円硬貨4枚と韓国の硬貨一枚を出して、500円分のルピアに
換えてくれという。
なぜ400円と韓国の硬貨を持っているのかわからないが、
500円分のルピアと、100円分のマンゴスチンと交換した。
どちらも大満足だった。
段々畑が見えるしぶい隠れ家風レストランでお食事をするが、
物売りに囲まれて車も発車できない。
事前に「ここでは、物売りから物を買うと全員に囲まれるから
絶対に買わないでね。」と、バリの友達に言われていたのに、
買い物をしてしまい、やっぱり物売り全員に囲まれてしまったのだ。
物売りの押しの強さにたじたじだった。
友達に「もう~!あんなに買うなって言われてたのに!」と怒られた。
山の中の道を車で通り過ぎる時、畑の側に流れている小川の中に
見目麗しい裸の青年二人を発見。すっぽんぽんで、ゆったり小川に
浸っている。ああっ!見ちゃダメ~!と思いながらしっかり、お顔は
見てしまった。バリの山の中には、すっげえ男前がいる!
大発見だ。バリ人に惚れる日本女性がいるそうだが、こんな眉毛が
りりしくきれいに弓なりになった、お目目ぱっちり、まつげ黒々の
男前なら、ショックで一目ぼれしそうだ。
わたしの好みではなかったが、バリ人はヒンドゥー教だし、ジャワ人は
イスラム教なので、一目ぼれしても結婚はどうせ無理。
街に戻る道の途中、アタという草で編んだカバン専門店に連れて
行ってもらい、
「この人たちは、ぼくの友人だから、ごちゃごちゃ値段の交渉を
しないで、一律ひとつ○○ルピアで売ってあげてね。」と、言って
話しをつけてくれた。友達といくつかカバンを買った。
後で考えたら、破格の値段にしてくれていた。
もっと、買っておけばよかった。今から思えば王様の子供なので、
みんな彼の言うことを聞いたのだった。
その後、街に出て、スーパーで買い物。友達はインドネシアの食品を
いたく気に入っており、いろんな「ミーゴレンの素」や、会社のお土産
用のお菓子などを買い込んでいる。わたしもマネして、同じお菓子を
会社用に購入した。帰りの飛行場の店では、同じお菓子が高い値段
で置いてあるのに驚いた。スーパーで買えば、めちゃ安なのになんで
みんな空港で買うのだろう!?
その後、クタの海岸で夕日を見る。
友達は前回と同じく、また「みちゅあみ軍団」に捕まって、日本語を
しゃべる彼女たちと勝手に交渉を始めている。
わたしも、なんとなく会社の女の子用のブレスレットを
購入していた。あとでぼったくられていたとわかったが後の祭り。
クタの物売りがあまりにもうるさくて、ボ~ッとしていたのだ。
作戦にはまったらしい。
友達は三つあみにしてもらって、ネイルもきれいに塗ってもらい、
ちょっとご機嫌。
インドネシアの友達二人は遠くで夕日を見ながら雑談中。
わたしたち二人は初めて現地の人たちと、直にしゃべることになったが
友達は手首にむりやりブレスレットをくくりつけられ、外そうにも外れず、
仕方なく100円ぐらいで購入していた。二人とも、いいカモである。
後で、インドネシアの友達に「いくらで買った?」と聞かれ、
正直に答えたら「バカじゃないの?」と言われた。
現地のおばちゃんたちに囲まれてるんだから助けに来てくれても
よかったのではないか?
現地のおばちゃんと値段の交渉バトルをするのは、なかなか
スリリングであった。
残念ながら完全にノックアウトされてしまった二人だった。
彼女たちは生活かかってるもんね、、、。
晩ごはんは、浜辺にテーブルを並べたレストランで、
いろんなイカンバカール(焼き魚)を食べた。
レストランの魚は、バリ近海のものではなく、ジャワの漁師から
買ったものなのだと、バリの友達が言う。
その方が安く仕入れができるのだそうだ。
「だから、ここの魚はフレッシュでもないんですよ。」と、彼は言った。
最後の日は、朝からデューティーフリーショップに行く。
友達は、何やらいろいろ見てまわっていたが、受け取りは
飛行場でと言われ、それが気に入らず持っていた物をすべて元の
位置に戻す。インドネシアは儲けるのがヘタである。
その後、マタハリというデパートに行ったら、お土産にぴったりの
かわいい物がたくさんあったので、多数購入。
上に行くとワコールの店があった。
うれしくなって、多数購入。バリエステに行く時間が無くなったが、
エステよりも、買い物が楽しくて、時間の立つのを忘れた。
もうこの辺で、わがインドネシアの友達たちはぐったりしていた。
昼ごはんも食べずに買い物ばかりしていたのだ。
街のレストランで、めちゃウマの鳥のから揚げやらバリのご飯を
食べて、増えた荷物を入れるジャワ更紗風カバンを購入。
ホテルで前方から歩いてくるインドネシア人に、写真を
撮ってくれと頼む。
「お姉さん。あの人誰だとおもったの?あの人、今度大統領になる
人の一番偉い秘書ですよ。」と、インドネシアの友達に言われる。
やさしい大統領の秘書は、怪しい4人組の集合写真を撮ってくれた
のだった。すみません!ホテルの従業員だと勘違いしました!
ホテルに帰って、パッキングにかかったら、いきなりさっき買った
ばかりのカバンのファスナーが壊れる。
「アッドゥ~!」と、思わず日本人なのにインドネシア式に叫んでいた。
パッキングを終えて、迎えに来たツアーガイドの車に荷物を積んで
飛行場に向かう。
インドネシアの友達とバリの友達は、ホテルの門の前で、
とびっきりの笑顔で手を振ってくれた。
「何だかホッとして、心底喜んでる笑顔じゃなかった?」
ひねくれもののわたしは、そっと友達に聞いてみる。
友達は答えず大笑い。
それからしばらくして、バリで大きなテロがあった。
テロに会わずに無事に帰ることができたのは幸せだった。
恐がりのわたしたちは、次の旅行ではバリに行けずにグアムに
行ってしまった。グアムのアメリカナイズされたホテルの部屋で
「やっぱりバリの方が癒されるね。」と、しみじみと語り合い、
ちょっぴり後悔した二人であった。
やっぱりバリが好き!