チーティング
学生の頃、事情があってアメリカ人の家に下宿していたことが ある。
年下の女の子と毎晩しゃべって(日本語)楽しく過ごして いたが、
10時には寝るように女の子の親に言われていて、 あんまり遅くまで
起きていると、早く寝なさいと言って怒られた。
ある日、学校の音楽の授業で作曲するという宿題が出た。
どんどん宿題の提出日がせまるのに作曲ができない。
「うあ~!!だめだ!明日まで作曲しないといけないのに、できない!」
と、騒いでいると、女の子が、 「じゃあ、アメリカの曲をマネして、少し
変えて出せば?」と、 言ってくれた。
アメリカでは、テストでカンニングがバレると、 落第だと聞いていたし、
レポートをどこかの本の丸写しにすると 落第どころか学校を退学
させられることもあると聞いていたので
「それは、まずいんじゃない?」と言うと、
「だいじょうぶ!アメリカの子供しか知らない曲だから!」と 明るく
答えて、さっそくピアノでその曲を弾いてくれたのだった。
なんでも、日本の子供が「ネコふんじゃった」を弾くような 感じで、
子供が弾く曲なので、日本人は誰も知らないと 言うのだ。
それを編曲するんだから絶対バレないと言うので、
ありがたく使わせてもらった。
曲自体もかわいくて気に入ったし、 とにかくその時は明日まで仕上げ
ないといけない状態だったので、 わたしも必死だった。
女の子と二人で編曲して、結構納得できる曲ができあがったので
音楽の先生に提出したら、なんとその先生がいたくその曲を気に
入って しまい、次の授業で、先生はピアノがうまい男の子に、
わざわざ わたしの曲を演奏させてしまった。
おまけにクラス全員の前で作曲の才能があるとえらく褒められ
てしまい、 ちょっとこころが痛かった。
だって、その曲は、アメリカの「ネコふんじゃった」だよ。
月日は流れて、わたしは、すでに会社勤めも慣れた立派な
社会人に なっていた。会社の帰りに英語のクラスに通ったり、
勉強のために ビデオを借りて(DVDはまだなかったような、、、。)
夜に観たりして、 優雅に過ごしていたのだが、あのチーティングを
した学生時代の 記憶がよみがえる事になろうとは、
全く考えていなかった。
ある日、ビデオを観ていると、映画の中に出てくる子供が
ピアノであの曲を弾いたのだ。ショックだった。
「しまった!!あの先生が、このビデオを観ていたらバレる!!」と、
いきなり学生の頃の記憶がよみがえり、心底自分が恥ずかしくなった。
まさか、ビデオで「あの曲」に出会うとは!アメリカも近くなったものだ。
悪い事はできないものだ。神さま、ごめんなさい状態になって、
お赦しを請うことになった。あの日と同じようにこころが痛んだので、
神さまに、「ごめんなさい。」と言って祈った。
クラスでみんなの前で褒められた時に、黙っていたので、 クラスの
みんなに申し訳ないなと思うのだが、同窓会は 行ったこともないし
同窓会をするようなクラスでは無かったので そんなお誘いの
ハガキもメールも来ない。謝ろうにも謝れない。
最近、韓国でウソク教授が、結構大きなウソをついたのだが、
似たような事をわたしもやったことがあるのだ。
大きなウソも小さなウソも、ウソには違いない。
映画の題名は忘れたが、男の子が、ある日お祭りの日にみつけた
変な機械に、大人になりたいと願ったら、次の日起きたら 大人に
なっていたという話しだ。
うまくおもちゃの会社に勤めることができて、親友にも事情を
わかってもらえて調子よく過ごしていたが、仕事に夢中になって
しまい、子供ごころを失って、親友も離れていく。
その内、大人の女性に好かれてしまうが、中身は子供なので、
子供のようにしか付き合えない。 そんな中、男の子は、悲しみに沈む
自分の母親を見て、子供に戻り たいと願うようになった。
ちょうど公園には一年前のようにお祭りがやってきた。
あの変な機械が置いてあるのをみつけた男の子は子供に戻りたいと
強く 願う。大人の女性は、好きだった男が子供の姿に戻って
家に帰って いくのを優しく見届ける。 そんな内容だった。
トム・ハンクスが大人の姿で子供の役を演じていた。
そのトム・ハンクスが、アメリカの「ネコふんじゃった」を弾いたのだ。
ウソはいつかバレるし、バレなくても神さまは全部知っておられる。
クリスチャンなので、神さまにちょっと昔の罪を諭されたような
気持ちになった。
思い出したくない過去の罪って、積極的に 忘れているし、誰でも
自分が悪かったなんて考えたくもないものだ。
それでも、罪は罪。神さまに赦してもらえる人は幸せだ。