アフリカをとりこむ中国 | 日本のお姉さん

アフリカをとりこむ中国

中国がアフリカ外交をこれまで以上に積極化させている。アフリカ諸国を国連などで味方に引き込む「数の外交」や、通常兵器を含む中国製品の市場確保といった目的に加え、石油、天然ガスなどの資源需要が中国側で急速に高まったためだ。しかし、ジンバブエなど人権抑圧国家に対する援助への懸念や、安価な中国製品の大量流入による地場産業の衰退が貧困問題に拍車をかけるおそれも浮上している。(矢板明夫) 
 「昨年は胡錦濤国家主席ら四人の中国指導者が相次いでアフリカを訪問した。また、昨年一月から今年八月まで、アフリカから大統領十三人、副大統領二人、首相五人、議長九人、外相十四人が訪中した」
 八月下旬に北京で開かれた中国アフリカ協力フォーラム(CACF)で、中国外務省の許鏡湖アフリカ局長は首脳相互訪問の数字を挙げて、昨年来の親密な交流ぶりを強調した。中国政府はフォーラムに出席したアフリカ四十六カ国に対し、関税減免や技術移転など新たな援助を約束した。
 昨年から今年五月まで、中国はアフリカに対して政府開発援助(ODA)を含む百六十七項目の支援を提供した。中国の対外援助の四割以上に相当する。昨年の経済交流をみると、中国からの直接投資は約一億四千万ドルと過去最高を記録。貿易額は前年から六割増の約二百九十五億ドルに達した。
 新中国成立後の中国外交で伝統的ともいえるアフリカ重視路線だが、ここに来ての貿易・投資の急増は、資源取引の拡大によるようだ。
 もともと、資源取引などアフリカでの大型案件は、旧宗主国を含む欧米資本が先行していた。出遅れ感のあった中国の国有企業は、強力な五星紅旗マークのODAに後押しされて、ナイジェリアやアンゴラなどで次々と石油採掘権を獲得した。昨年、アフリカからの石油輸入量は、中国の輸入量全体の四分の一を占めるようになった。
 人権抑圧で国際的に非難の高まるスーダン、ジンバブエなども、中国の積極的な外交攻勢の対象だ。政府系の中国石油天然ガス公司(CNPC)などは、スーダンの油田開発にこれまで約四十億ドルを投資し、石油輸入量の約一割をスーダン産でまかなっている。また、プラチナ埋蔵量世界二位のジンバブエでは、経済援助と引き換えに、同国産プラチナをほぼ独占できる契約を結んでいる。
 中国のこうしたなりふりかまわないアフリカ浸透姿勢に対して、欧米諸国からは懸念の声が上がっている。米国の元駐ナイジェリア大使、プリンストン・ライマン氏は七月、米連邦議会の米中経済安保調査委員会で「アフリカの独裁国家を支えている」と中国を厳しく批判した。
 ナイジェリア政府は九月、中国から総額二億五千万ドルで、中国製F7戦闘機十二機などの調達を決めた。銃器を含む中国製兵器に限らず、アフリカは安価な中国製衣料品、生活用品を受け入れる大きな市場になりつつある。中国紙・第一財経日報は八月、浙江省温州の靴メーカー「哈杉」が〇一年にナイジェリアに進出し、今年夏までに約二百万足の革靴を同国で販売するなど、現地の有名メーカーに成長したと伝えた。
 フランスのアフリカ専門誌「ジューン・アフリク・ランテリジョン」も最近、「アフリカを席巻する中国」と題して特集を組み、ここ数年でアフリカにわたった中国移民が約五十万人にのぼり、現地社会、経済に与える影響などを紹介した。
 安価な中国製品の大量流入により、地場産業が打撃を受け、地元から中国の進出に反対する声もあがっている。レソトなど南部アフリカの八カ国の労働組合は九月末、現地政府に対し「地元経済を守るため、中国製の繊維製品などを制限するよう求める」との声明を共同発表した。
 アフリカ情勢に詳しい在京専門家によると、現地では経済秩序だけでなく、伝統文化も急速に膨らむ中国移民に破壊されたとの不満の声が多いという。この専門家は「この勢いのまま、中国のアフリカ浸透が進めば、地元との対立はいずれ表面化するだろう」と話している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051006-00000011-san-int&kz=int

(産経新聞) - 10月6日3時14分更新