くらげスパイラル | 日本のお姉さん

くらげスパイラル

越前くらげは、中国の河口で生まれ黄海で育つ。


くらげのポリープはライラックの花の形をしている。


ライラックの花の根本から足が伸びる。そして、


足がちじんだら、岩に足跡が付く。そしてまた新しい


足が伸び、その足がちじんだら、岩にくらげの足跡が付く。


そんな風にくらげのポリープが歩いたら、


後ろに足跡がたくさん付く。足跡は全て新しい


くらげのポリープになり、今度は全てのポリープが


違う方向に歩き出す。ひとつのポリープが10に


分かれ、10のポリープが10に分かれ限りなく


くらげの花が増えていく。海の温度が上昇したら、


くらげの花にははたくさんのくびれができて、


その先端から、ちいさな花びらのようなくらげが


ひらりと海に放たれる。そんな風にひとつのポリープの


先端から次々にたくさんのくらげが海に旅立つ。


中国の黄海のチッソは2倍の濃さになっている。


プランクトンがチッソを食べて増えると、


くらげがプランクトンを食べる。魚が中国の船に


乱獲されると、魚が減った分、プランクトンが


余ってくる。くらげが有り余るプランクトンと一緒に、


魚のたまごや稚魚を食べる。ますます魚が


減っていき、くらげは増える。


それがくらげスパイラルだ。


今年は長江は氾濫した。泥淡水がどっと海に流れ出し


小さなくらげは広範囲に分かれてそれぞれが海流に乗った。


今年、越前くらげが、瀬戸内海や大阪湾や三重県に


現れたのはそのせいだ。


今年、中国の黄海の温度は1.7度上がった。


海の温度の上昇がくらげの繁殖に好条件なのだ。


今年、全世界でくらげは大発生した。ブラジルの海で


ベーリング海で、黒海で、そして日本海で、


それぞれ違う種類のくらげが、大量に現れた。日本に


現れたのはもちろん越前くらげだ。


日本の漁師はくらげに網を破かれて漁にならず、


失業する者も現れた。日本政府は何をするべきか。


中国が汚染物質を河に流すのを止めさせること。


プランクトンが発生しないようチッソの濃度を調節すること。


魚を根こそぎ捕らないように中国の漁師を規制すること。


地球温暖化を防ぐよう世界中の国に呼びかけること。


それが出来ないなら、来年も同じ事が起きるだろう。


越前くらげは2メートルにもなるカサをひらひらさせて


水の中のプランクトンを集めて触手に貼り付ける。


触手から赤い小さなトゲが出て、毒を出してプランクトンや


魚のたまごや稚魚を殺す。死んだプランクトンは上へ浮き上がり、


くらげの触手の付け根に無数に開いた穴から吸い込まれ


カサの真ん中に集まる。越前くらげの下には死骸しかない。


すばらしい効率で越前くらげは、海のあらゆる小さな生き物を


カサの中に吸い込んでいく。さあ、どうする?