蔵(くら)を持たない日本人が増えたから
蔵(くら)を持たない家が増えたから、たぶん、これからの
日本には、「お宝」という名前の美術品が残らない国になると
思う。だから、日本政府が、お宝だと思った全国の芸術品を
安く買い上げて、美術館に保管するようにしないと、日本から
「お宝」が消えてしまうような気がする。
おじいさんやおばあさんが亡くなったら、彼らが大事にしていた、
日本人形とか、こけしとか、壺とかお茶わんを惜しげもなく
大ゴミの日に出している家が多いように思う。
彼らの収集物の中には、若い人にはゴミに見えるかもしれ
ないが、京都や大津の古術品の店に行くと、ちゃんと立派な
商品となって売られているようなものもある。雛人形や、
フランス人形など、持ち主が亡くなると「気持ちが悪い。」と
言って、残された家族が捨てたり、神社などに持っていって
処分してもらったりしているが、それは日本の悪い迷信に
惑わされている行為だと思う。
日本政府が、優秀な日本人形を買い上げて展示する美術館を
持たないと、昔の芸術家の作品が全て捨てられてしまうことに
なる。フランス人形など、アンテイークものには、すごい価値が
出ているのに、日本人形の扱いは、古ければ古いほど化け物
扱いをされて嫌われる。いったい人形を嫌う悪い風習はどこから
出てきたのだろうか。テレビは、日本人形の毛が伸びたとか、
口が開いたとか、おもしろおかしくオカルト番組を作らないように
してもらいたい。日本人形は、乾いたらちじむので、ちゃんと
初めから歯も作ってあるそうだ。毛が伸びると言うのも、人毛が
植えつけてある場合少しは伸びるとか、もともと植え付け部分が
長く、その部分が外れて出てきたとかちゃんとした理由が
あるのだと思う。こけしだと、東北のこけし館に寄付するなどして、
美術品は大ゴミの日に捨てずに、ちゃんと保存してほしい。
お年寄りが亡くなったら、いらないものは古美術品店や、美術館に
寄付するなど、価値のあるものを気軽に捨てない仕組みを作ら
ないと、昭和のものは何も残らずに終わるのではないか?
最近、昭和初期をマネた町をデパートや、展示場の内部に再現
している場所も出てきたが、昭和の「お宝」は、一部のおもちゃ
以外はほとんど捨てられているのではないか?
新しいものには、価値があって、古いものはどんどん捨てる
という習慣が日本に定着してしまうと、本当にいつか日本は
「お宝」がない国になる。大ゴミの日に捨てられた美しい日本
人形やこけしを拾って、外国に行く時にお土産にすると、
ものすごく喜ばれる。日本人形は日本では扱いが悪い。
もうすこし美術品としての価値を認めてやってほしい。