N猫ちゃんが車の中で熱射病に!
N猫ちゃんは自分でミルクを飲めないほどの赤ちゃん猫
だったので、車に積んで会社に連れて行っていた。
丸い耳が顔の両側に付いていた。だんだん大きくなってきて、
耳がとがってきて頭の上に移動しているようだったが、まだまだ
赤ちゃん猫の顔をしていた。目も薄い水色の膜が張っているようで、
見えているのか見えていないのか、どうもよくわからない。
ミルクを飲むとき意外は寝ていた。育てやすい猫だった。
声を出すのを忘れたのかと心配になるほど、鳴かない猫だった。
おかげで会社の横のガレージに車を停めておいても、車の中で
赤ちゃん猫を養っているなどとは、誰も分からないようだった。
2時間置きにミルクを会社の台所で作って哺乳瓶に入れ、それを持って
ガレージに行っていた。10月だったが、日差しが熱い日だった。
いつものようにミルクを飲ませようと、自分の車に行ってみると、
N猫ちゃんがぐったりしているではないか!大変だ!熱射病だ!!
N猫ちゃんを掴んで事務所に帰った。冷やさなきゃ!
事務所はひんやりしている。机もひんやり冷たかった。
机の引き出しを開けて、冷たいスチールの上に直(じか)にぐったりした
N猫ちゃんを寝かせた。もう死んでしまったかのように、体が頼りなく
ぬいぐるみのようにくたくたと動く。しばらく普通に仕事をして、
引き出しを開けたら、N猫ちゃんが正気を取り戻していて、むっくり
起き上がってきた。隣の席のA子は、余りの事にびっくりしていた。
事務所の引き出しに入れたら、熱射病が治ったので驚いたのか、
瀕死の赤ちゃん猫を引き出しに入れたからびっくりしたのか、どちらに
驚いたのかは分からない。N猫ちゃんに、冷たい水で作った薄いミルクを
たっぷり飲ませた。N猫ちゃんもどんどん薄いミルクを飲んでくれた。
危ないところだった。それからは、車の中でお留守番をさせられている、
犬を見たりすると心配になる。車の中は以外に暑くなるんだよ。
車の中で、赤ちゃんが置き去りにされて熱射病で死んだというニュースを
聞くと辛くなる。10月でも暑い日があるんだよ。窓は開けてあったが、
N猫ちゃんには暑すぎたのだ。そんな風に、ぞんざいに扱われて育った
N猫ちゃんだが、どんどんミルクを飲んでくれたおかげで、赤ちゃん猫から
子猫ちゃんになっていった。
車の中で、A子や会社の他の女の子が、猫のおもちゃを買ってくれて、
しょっちゅう遊んでくれた。昼休みはN猫ちゃんと遊ぶのがみんなの日課に
なった。トイレは車に積んだ浅いトレーに砂を入れたものに、ちゃんとしてくれた。
一回も粗相はしなかった。ただ、運転中に足元に入り込みそうになるので、
足で蹴って、どかしながら運転していたのがちょっと、問題だった。車の中は
N猫の移動ハウスだった。N猫は車で移動するのが大好きな猫に育ったので、
友達の家に遊びに行く時、N猫ちゃんも車に積んで行った。
猫の砂を袋に入れて、トイレ用の浅い容器を持って行けば、何時間でも友達の
家でN猫ちゃんと遊ぶことができた。友達もN猫ちゃんが大好きで、よく遊んで
くれた。N猫ちゃんは、いろんな人と出会っていろんな場所に行って、みんなに
可愛がられたので、すごく社交的な誰とでも仲良くできる猫に育った。