7月の蒸れた夜は、女子は歩くな。
ずっと前は、スタイルが良かった。
それで、チカンによく狙われた。
今は、オバハンになったので、チカンに相手に
されず快適に過ごしている。オバハンになって良かった事の
ひとつは、チカンにやられなくなったこと。
ジロジロ見られなくなったこと。負けん気が強くなったこと。
失敗してもへこたれなくなったこと。
誤解されたとき、臆せず違うと説明できるようになったこと。
クソガキ達がたむろしてても、堂々と横を通れる。
この間、夜に公民館っぽい場所に、クソガキ達がたむろしていて、
そこを通過しないと、家に帰れなかったとき、
全員がこっちを見ているのを感じた。
「げっ。あいつら、わたしのことを若いお姉さんと勘違いして見てる!」と
思って、大股でのしのし歩いたら、
「なんだ。おじさんやんけ。」と言って、ゲラゲラ笑いだしたのでホッととした。
あわてて大股で通り抜けた。
暗かったから、おじさんと間違ってくれたのは、嬉しいけど、ビミョー。
スタイルが良かったときは、いろんなチカンに
迷惑を受けたので、終いには避ける
コツがわかるようになった。
7月のむしむしする夜は、チカンが出る。
ヤツラは、気温に敏感だ。「こんな夜は出るな。」と、わかるようになった。
現に、そう思った夜に、その時わたしの家に居候にきていた若い女の子が
駅からつけてきたチカンにやられた。女の子は、その足で警察に行ったが、
警察に「あんたが、やられそうな雰囲気だしてたんちゃうの。」と言われたといって、
憤慨していた。それで、二人で車に乗って、別の交番に行って
チカンの被害届を出したことがある。
道を歩く時は、反対車線からこちらに向かってくる自転車には、気をつけなければ
ならない。いきなり急ハンドルでカーブしてくる。
だいたいチカンは、モヤモヤ光線を出している。
モヤモヤ光線とは、わたしが名付けたチカン野郎独特の、
キモイ雰囲気の事だ。
「あっ!あいつ、怪しい!!」と感じたら、持っている傘やカバンを相手に向けよう。
チカンは、バレたことを敏感に感じ取る。
こっちをキモイ目で見つつも、手を出してこない。
だいたい、「今日はいい天気だな!ラ、ラ、、、、。」と、ご機嫌で歩いてると、
いきなりやられる。いつも心臓が無い方の胸をやられる。自転車は左通行だから。
ひどいのは、こっちが自転車に乗ってスピードを出しているのに、
真正面から、自転車を近づけ、腕を突き出して胸に当ててくるチカンだ。
こちらはスピードを出しているから、そんなことをされると衝撃で
バンザイポーズで後ろに吹っ飛ぶ。自転車は前に自走し、柵にぶつかって
タオヤはぐちゃぐちゃ、自転車の芯までゆがむ。
わたしは道路にたたきつけられ胸も痛いし、手足も痛い。あちこち傷だらけだ。
「バカヤロー!!死ねええ!!」と、叫んでも、敵は自転車でスイーッと走り去る。
慣れたもんだ。
スペイン人の女の子と街を歩いていたら、目の前でチカンが、女の子のおしりを
掴んで行った。
「なにすんじゃああ~!!」と、無我夢中で叫んで、追いかけていって、
そいつのケツにパンプスの先をくいこましてやったが、そいつは無言で
人混みの中を見事にすり抜けて逃げて行く。
いつもやってるから、逃げ足も速い。
電車の中では、出口の側にいてはいけない。
50代の重役風の普通のジジイが、降り際に指でしりをかすめていく。
チカンなのか、偶然なのかわからないように触っていく。そんなジジイやオッサンが多いので、
手口がわかった。混んでもないのに、押されたフリで、指や手のひらを当ててくる。
すぐ逃げれるように、必ず降り際にそれをやる。
誰だかわからない。ジジイやオッサンの後ろ姿しか見えない。
電車のドアが閉まれば、ヤツラは安全地帯にいる。
むかつくのは「どけ。」と言いながら、さも自分が迷惑を受けているかのように
つぶやきながら触っていくやつだ。必ず指はしりか胸のあたりに添えてくるので、
チカンだとわかる。わかっても、するりとドアを通過して逃げて行く。
触るために降りるのだ。自分の家がある駅だから
降りたんじゃない。
駅で出会ったチカンで最悪だったのは、すれちがいざま
手に持った雑誌で局部を叩いていったヤツだ。
不敵にも、人の目を見てにやっとしながらだ。
「ばかやろー!!」と後ろ姿に向かって叫んだら、なんとチカンのくせに
追いかけてきた。必死で階段を駆け上がって逃げた。しばらく追いかけてきたので、恐かった。
心臓がバクバク破裂しそうなぐらい体の中で飛びはねてた。
駅ですれちがいざまグーで局部を殴られたこともある。
痛くてうずくまっていた。触るつもりが間違って殴ってしまったのかもしれないが、
恥骨でも殴られると痛い。
スタイルが良くて、おとなしそうな顔だと、狙われるのだろうか。
性格はおとなしくはないのに、いったい何人のチカンにやられたことか。
チカンの皆様には死んでもらいたい。いや、生きて何らかの罰を受けて欲しい。
思い出したら怒りがよみがえってきた。
別にイケイケの格好や悩ましい格好なんかしていない。
清楚な服装をしていても、ジーンズでも、何を着ていてもやられた。
仕事で出会ったモデルの女の子も、二人乗りのバイクのクソガキに胸を掴まれ、
その衝動で壁に叩きつけられた後、みぞに落ちて、足に深い擦り傷を作っていた。
そのケガを隠すため、傷口が開いているのに雑誌のスタイリストに
ファンデーションをすり込まれ、入れ墨のようにアザになってしまっていた。
チカンにあった女の子がどれほど嫌な思いをしているのか、ヤツラは考えてはいない。
チカンは犯罪です。暴力です。傷害だって、女の子は受けています。
心にもキズが付きます。
よくチカンにやられる女の子は、電車に女性専用車両ができて、
すごく喜んでいるはずです。