これが7月初め
その約1ヶ月後
9月いっぱいは普通に過ごせると言われていて
その普通でいられる期間
少しでも痛みを感じずに済むように
少しでも普通でいられる時間を長く出来るように
神経ブロックと放射線を2週間あてる
という緩和治療のため
2週間入院することになった
8月16日 入院
家ではあまり食欲がなく
あんまり食べれなかった母親は
病院の食事が美味しい美味しい、と喜んでて
看護師さんもみんな優しいんよ、と
ご機嫌だった
それが19日昼過ぎ
先生から電話があり
突然意思の疎通が出来なくなった、と
検査をしたら
1週間前に脳梗塞(膵臓癌からの)を起こした跡がある、と
こうなったらもってあと2週間と言われた
2週間経ったら幾分元気になって
退院して一緒に余生を過ごせるはずだった
一緒に旅行に行ったり
2人でおとうさんの墓じまいをして永代供養したり
2人で実家を片付けたりしよう、と計画していた
貧乏性の母親は
粒の大きいピオーネが好きで
でも1人じゃもったいないから買えない
と言っていた粒のデカいピオーネ
今年は2人でいっぱい食べようねって言ってた
母親の得意な白和えも
教えてもらっとかんといけんって言ってた
そして2人でゆっくり
今まで仲が悪かった分
仲良く暮らそうねって言っていた
長い年月かけて
やっと仲良しの親子になれたばかりだったのに
それが意思の疎通もできないまま
言葉も二度と交わすことも急にできなくなって
あと2週間だという
それも胆汁が逆流するか
肺炎になるか
どちらにしろ苦しい最期になる、と言われた
その2週間
毎日銀行から少しずつお金をおろし
葬儀屋さんやお坊さんと連絡をとったり
気がおかしくなりそうだった
坐骨神経痛がでて座ることさえ出来なくなり
鎮痛剤でなんとか動いてたら
今度は食べ物も受付けなくなり嘔吐
何もわからない母親だが
それでも一緒の写真を残したかった
病室には
母親が好きな色の濃いピンクの花を
欠かさず飾った
あと2週間と言われて1ヶ月半
容態が急変し
モルヒネを打った
あと2〜5日くらいだと言われた
それから私は病院に寝泊まりした
家のことは次男がしてくれた
そして毎日次男が
昼くらいから夜まで
一緒に過ごしてくれた
生きてる人間は食べなきゃダメ
と言って
病院のレストランで毎日ランチを2人で食べて
時々15時のおやつでパフェも食べて
病室では
何も言わない宙を見つめている母親の傍で
2人でNetflixで映画を観た
いつ母親が逝っても
葬儀に備える体力と覚悟をつけなければ
そして5日後
もう今夜かな、という夜
ちゃんと寝なきゃいけない
寝てないとちゃんと見送れない
私は母親とずっと手を繋いで寝た
ずっとずっと繋いでいた
そして明け方
母親は静かに息を引き取っていた
私が目が覚めて
母親が亡くなっていることに気づいたのは
息を引き取っておそらく30分後くらいだったと思われる
手を繋いでいてよかった
母親と次男と3人で過ごした
準危篤になってからの5日間
その5日間は夢のような
穏やかで静かな時間が優しく流れていた
私にとって宝物のような5日間だった
その5日間は私に心と体の準備をさせてくれた
母親は最後まで
私のために頑張ってくれた
意識がなくなって それでもまだ
私のために頑張ってくれた
すごい人だった
父親に尽くし
母親(ばあちゃん)を助け
目の見えない耳の聞こえない弟を探し出して助け、見送り、
最後に離婚してお金がない私を助け、
そして余命宣告されてからもなお
しんどくてソファーに横になってると
ふと思い立ったように起きて
ここに寝てたら
おかあさんがいなくなった時に
あんたが
「ここにおかあさんが寝てたなあ」って思い出して泣いたらいけん!
そう言って
なるべく座ってるようにしていた
こんなになってからも
もう孫がいてもいいような年齢になった娘の心配をする
素晴らしい母親だった
2022年10月10日 逝去
人は亡くなった日に来世生まれるという
10月10日
人に合わせられない
また強い人で生まれるんだな笑
それでもまたおかあさんの子供で生まれてくるから
今度は最初から仲良しの親子で
ずっとずっと一緒に暮らそうね
2023年 秋
それから36年
ずっと一人暮らしだった母
私なんて離婚して次男が大学に出て
一人暮らしになってもうすぐ5年
寂しくてとても一人暮らしは向いてないと思うのに
母親は一人で家を守ってきた
おとうさんと建てたこの家を
ちゃんと守らんといけん
ずっと言ってたなあ
母親のアルバムから
葬儀屋さんが作ってくれた
これを見ると
私は愛されて大切にされて
貧乏でも一生懸命育ててくれたんだなあって
いつも涙が出る
ありがたくて涙が出る
私はとても幸せだ
尊敬する人は、と聞かれたら
迷わず
母親です
と答える
お客さまへ
しんどい時は急でも構いません。
その時がしんどくてたまらないんだもんね。
夜でも空いてればお話聞きますよ〜。
ストレス、即はずそう!